「たった1つの天職」探しをやめて気づいた大切なこと/肩書きの数だけ、未来が拓ける/スラッシュに生きる

次話: 肩書きを自分でつけることの効用 …趣味に肩書きをつける/肩書きの数だけ、未来が拓ける vol.2

『自分にとって天職といえる何かの専門家になりたい』


 物心ついた小さなころからずっと、そう思ってきました。大学に入学してサークルに没頭し、3年生からゼミで勉強の面白さにようやく気づき、卒業論文を書いたところで就職。医療機器メーカーに入社しました。そこでは商品企画部に配属され、ゼロから仕事を覚えました。しかし若気の至りもあり2年半で会社を飛び出し、転職。次の会社では広告制作をゼロから覚え、約7年仕事に邁進しました。その後、動画ディレクターとして独立し、フリーランスとしてゼロからまた経験を積んでいきました。

 その間ずっと、冒頭のことばを自分に投げかけていました。

 『何かの専門家になりたい。でも今の仕事に今後の人生をかけられるかというと、違う。でも、きっとあると信じたい』

 そう思いつづけて、気づけば30歳を過ぎていました。



 スポーツにしろ、仕事にしろ、何かひとつのことを突きつめているひとは憧れの対象です。テレビのドキュメンタリー番組でも、登場するのはひとつの分野で突出した成果をあげている人ばかり。「社会に爪痕を残すには、何かの分野に特化しなければいけない」という思いにとらわれ、現在の自分とは途方もない差を感じてしまう。


 しかし、果たして本当に、そうでしょうか。


 いま、時代の流れとともに、働き方や仕事に対する価値観も変わってきています。インターネット、人材紹介、スカウトなどのサービスが勃興し、仕事選びの選択肢が格段に増えた結果、より可能性を求めて転職することが昔よりもずっと簡単になりました。またブログやソーシャルメディア、動画配信サイトなどの出現により、多くの人が手軽に自分の興味や考えを発信し、ファンを得ることができるようにもなりました。様々な価値観に触れることで、移住をしたり、独立をしたりと新たな人生の一歩を踏み出そうとする人が増えています。

ひとつの分野を極めるのではなく、いくつもの「顔」を持つ生き方へ 

 結果として、ひとつの会社、あるいはひとつの専門職で働き続けるのではなく、その時の自分にフィットする仕事やライフスタイルを選択することで活躍の場を広げている人もたくさん生まれています。むしろ、あらゆる選択肢を同時進行で手がけながら、いくつもの肩書きを使い分けて活躍することで、自分らしい生き方、その人しかできない価値を発揮している人も現れています。著名人で言えば、星野源さん西野亮廣さんもその代表的な例といえます。

 星野源さんはシンガーソングライターとして紅白歌合戦に出場するなど大きな成果を挙げているだけでなく、俳優、文筆家としても評価が高く、多方面に活躍をしています。同様に西野亮廣さんも、キングコングという漫才コンビで人気を博していましたが絵本作家としても才能を見出し、活躍の幅を広げています。


 もちろん著名人だけではありません。フリーランスでブロガー・ミュージシャン・アプリ開発者・コミュニティ運営者という複数の肩書きを使い分け、そのいずれからも収益を得ている人もいれば、会計士の仕事と同時に仲間とファーマーズマーケットを立ち上げ運営している人もいます。そして私も、少しばかりながら動画ディレクター・スクール講師・ライター・コミュニティ運営者・広告ディレクターという複数の肩書を持って活動しています。


 このように複数の肩書きを使い分けて活動している人のことを、最近では「スラッシュ・キャリア」と表現するようになっています。


”「スラッシュ・キャリア」という言葉は2000年代に作家のMarci Alboherによって造られた言葉だ。彼女はスラッシュ・キャリアの人々は副業についての考え方をまったく新しくしたと指摘する。「副業することは今までは恥ずかしいとされることでしたが、弁護士 / シェフ、母親 / 映画のシナリオライターなどスラッシングには威信があるのです」”

(ELLE ONLINE より抜粋★巻末にリンクあり)


一貫性のない自分のキャリアへの漠然とした不安

 このストーリーを読んでくださっている方の中にも、ひょっとすると「色んなことに手を出してはいるけれど専門はと聞かれると自信がない」、「自分のキャリアを振り返ると、一貫性がなくこの先どうなっていくのか不安になる」と思う方は少なくないのではないでしょうか。

 私自身も、会社員時代、そして独立後も自分のキャリアに対して「このままで良いのだろうか?」と不安な気持ちを抱えていました。何かひとつに絞りきれないと思う一方、むしろ同時進行で肩書を増やすたびに新しい可能性が開かれていくワクワクも感じていました。そして同じように、複数の肩書を持って自分自身を開発し続ける友人たちとの出会いを通じ、むしろこの生き方こそが今の時代にフィットした新しい道なのではないかと確信を持つようになりました。


 このストーリーでは、私の経験やスラッシュなライフスタイルを実践する人たちの事例を紐ときながら、スラッシュなライフスタイルをどのように実現していくかをご紹介していきます。


(参考)

「アラサー&アラフォー女子必読! スラッシャー" / "として生きていく術」

(【ELLE online】2016/1/16)

http://www.elle.co.jp/culture/feature/the-slash-factor16_0116/1


「キャリア形成の新トレンド「スラッシュキャリア」を築きたい人が気を付けたい4つのこと」(spotlight 2016.09.12)

http://spotlight-media.jp/article/323636705427845063


続きのストーリーはこちら!

肩書きを自分でつけることの効用 …趣味に肩書きをつける/肩書きの数だけ、未来が拓ける vol.2

著者の家子 史穂さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。