人生に必要なことは全て旅先で学んだ:あなたの心にヒーローを

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3Fまで吹き抜けの円柱形の建物の真ん中に四角いリングがある。


そこで大男が4名肉弾戦を繰り広げている。



大人も子供も皆、熱狂的な声援と掛け声を送っている。




「俺のヒーローは誰だっただろう?」




そんなことをメキシコシティーでルチャリブレを観ながら俺はつぶやいた。






ルチャリブレは空中殺法が多いメキシコスタイルのプロレスだ。


日本でもプロレスを観たことがない自分にとって、旅の間にぜひ行ってみたかったものの一つがこのルチャリブレだった。




アメリカとの国境ティワナから48時間も長距離バスに乗り、メキシコの首都メキシコシティーに着いた時、すっかりへとへとだった。


降りて偶然すれ違った旅行者に聞いて泊まった日本人宿で出会ったのは、日本から武者修行で来ていた本物のプロレスラー「オクムラ」だった。

彼はがっしりした体格には似合わないくらいとても穏やかな話し方で、落ち着いた人柄だった。


すでに半年以上滞在しているそうで宿のおばちゃんとも流暢にスペイン語でコミュニケーションをとっていた。


これまでの人生でプロレスラーなんて人に出会ったことはなく、もっといかつくておっかない人を想像していたので、俺の中ですっかりイメージが変わった。




「今夜試合があるから良かったら観に来てよ。でも夜道は危ないから貴重品は置いてきてな~」


とオクムラのお誘いに、早速宿で知り合った連中と一緒にルチャ観戦に行くことにした。




プロレス会場周辺に近づくにつれ、様々な観戦グッズを売る露店が増える。


うちわ、タオル、ポスター、プロマイド、そしてマスクも売っている。


露天商の親父やおばちゃんの声もにぎやかだ。



プロレス観戦なんて男ばっかりなのかと思いきや、結構な割合で家族連れも見かけ、子供は各々大事 そうにお気に入り選手の顔が入ったうちわを握りしめている。



歩きながら8歳くらいの少年に声を掛けてみた。


「やあ、それだれ?お気に入りの選手?」


「これはミスティコさ!超かっこいいんだ。今日出るんだよ!」


ルカと名乗る少年はキラキラした笑顔で答えてくれた。




そうこうしている内に会場に着く。


建物は古く、大きい劇場風の外観だが、真ん中が円柱状に伸びている。




会場周辺はものすごい人だかりだ。


普通に窓口でチケット販売しているのに周辺にはダフ屋も多く、旅行者に声を掛けまくっている。


チケットは観覧席の場所で値段が違う。


一番リングに近いリングサイド席で10ドル位。


円柱状の建物の1F席、2F席、3F席とリングをぐるっと取り囲むように観覧席があるようだ。




「どこが一般的なの?みんなどこから観るの?」


と窓口で尋ねると、


「2F席だね。そこからが見やすいよ。けど、盛り上がってきたら危険もあるから、あんた方旅行者ならリングサイドはどうだい?」


2F席は2ドルと安く、何より庶民の熱気を肌で感じたいと思い2F席で観ることにする。




チケットを購入して、中に入る案内のお姉ちゃんは旅行者だと判断したのか、笑顔で


「リングサイドよね?」


と案内し始めるが、2F席だと知るとあからさまにがっかりしている。




2F席に行こうとするといきなりボディーチェックがある。


危険物の持ち込みをチェックしているのかと思い、


「爆弾もナイフも持ってないよ(笑)」とスペイン語で伝えると、


「No Photos. No camera.」と英語で返ってきた。




2Fの観覧席に着くと落下防止のために金網がぐるっと周囲に貼られている。


確かに各階で観客層が違う。


リングサイドや1Fは身なりがきれいな人や明らかに旅行者風の人が多い。


2F席は家族連れや庶民風の男性が多く、1番人が多いエリアだ。


3Fはリングから遠くなるせいか人が少ない。


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