かつての海運大国日本も

隣の国、韓国では海運会社第一位の現代商船が銀行管理になったのに続き第二位の韓進海運が8月末、日本の会社更生法に当たる法定管理を申請。世界中の港で韓進の船が積荷を積んだまま漂う異常事態。奇しくも、やや時間をおいてわが国でも日本郵船が長引く深刻な海運不況により1,950億円の特別損失を計上する事を発表。

その金額にも驚くが、それ以上にショックだったのが日本の船会社のコンテナ輸送に占めるシェアの低下。

1995年には日本郵船が第5位、商船三井が第7位。川崎汽船もトップ10には入れなかったが第11位を占めていた。

それが現在ではベスト10では商船三井が第10位に唯一ランクインしているのみで、日本郵船が15位、川崎汽船が17位と寂しい結果になっている。


この凋落の大きな原因の一つには急激な円高による日本の産業の空洞化が挙げられる。

円高になると、日本で生産した製品の外貨表示での価格が大きくなる、つまり買う方からすると値段が上がってしまう。値段を上げないようにすると収益が落ち込む。

故に多くの製造業が海外に生産拠点を動かさざるを得なくなった。その事により日本から輸出される製品の数量が減ってしまった。

一つの証拠がコンテナ取扱数量の港のランキング。

1980年には神戸港が世界第4位にランクされていた他、横浜港が第12位、東京港が第18位とベスト20に3港がランクインしていた。ところが現在ではベスト20にランクされている日本の港は皆無。日本で一番の東京港が第30位という惨状。

こちらには別の要因もあって、それは日本の港湾政策の遅れ。

世界の船会社がコンテナ船の大型化に邁進する中で、日本の港の水深は深くて20m。大型船が入港出来ない。

また海外ののコンテナターミナルが24時間操業をする中で、我が国のコンテナターミナルは操業時間拡大の動きは有るものの24時間体制から遅れを取っている。

その為、大手のコンテナ船社の中には日本の港の寄港を取り止めるところも出てきている。

韓国や中国の港で日本向けの荷物は積み替えられて、日本との間にはフィダー船という小型の船で輸送を行う事が増えている。


自国の経済の成熟化だけを理由にするのであれば、世界最大のコンテナ船社であるデンマークのマークスラインも凋落していてもおかしくは無いはず。

ところがマークスラインは反対にそのシェアを大幅に増やしている。

これは一体どうしたことだろうか?

実はマークスラインは積極的な企業買収で競争力を強化してきた。

1999年のアメリカのシーランド社(1995年のシェア第2位)の買収、2005年のP&O Nedlloyd社(2001年のシェア第2位)の買収と、競争相手を飲み込んでシェアの拡大を図っている。

それに対して日本の船会社は企業系列に頼った内向きの競争に明け暮れて、気づいた時には日本国内の産業空洞化。そこで手をつけたのが日本船員の大規模な解雇を中心とする合理化と船舶の外国籍化によるコストのドル化。

ところが一息ついた時にはコンテナではマークスラインの競争力に太刀打ちが出来なくなっていた事もあり、オリンピック景気に沸き立つ中国向けの鉄鋼原料である石炭、鉄鉱石を運搬する大型不定期船の大量建造に走った。中国経済が停滞して、記録的な好市況の後に待っていたのはおびただしい数の船。

特に派手に手を染めていた商船三井が一足早く昨年度の決算で1,800億円の特別損失を出したのも多くはこの大型不定期船に関する損失だ。


因みに、コンテナ船社として第3位のフランスのCMA CGMが同12位、シンガポールのネプテューン・オリエント・ラインを買収するのに使うのが3,000億円。マークスのP&O Nedlloydの買収額もほぼ同額。

こうして見ていると日本の船会社の数字での地位の低下以上に戦略での遅れが目につく。



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