フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第19話

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去る者、阻む者

《これまでのあらすじ》初めて読む方へ

大学生の桃子はあることがきっかけでショーパブでアルバイトをしている。そこに居場所を見つけ野望に燃える桃子。ところがある日突然大学のゼミの担当教授、苗代が店に顔を出し桃子にたかるようになる。苗代に好き放題され限界の桃子に、佐々木が帰り際さりげなく渡してきたもの、それは小さなテープレコーダーだった。




ミサキが店を辞めたのはパテオの誰にとっても青天の霹靂だった。


めまぐるしく人気順位が変動するホステス界で

彼女の人気はダントツだったし安定していた。

夜の社交場と言われるパブやクラブが多くひしめき合う

この街で、当時パテオは1・2を争う人気店だった。


その長い手足と白い肌に人形のような美しい顔見たさに

評判を聞きつけて遠方から会いにくる客も多くいた。


そして一度席に着けばもうすっかり彼女に魅了され

完全に心を奪われるとういう噂もあった。


同性である私の目から見ても

ミサキがただ可愛いだけでナンバーワンになったのではない

ことくらいわかる。


ショーメンバーとしても

欠かせない存在だった。

身のこなしから表情まで、セクシーで華麗で儚げで

まさに異性を魅了するために生まれてきたような人だ。


私がどんなに背伸びしたって何したって

彼女の持つ独特の魅力にはかないはしないだろう。


それでも私はいつかくるその時まで待とうと思っていた。


ミサキだって人間なのだから

ずっとトップを走り続けられるわけじゃない。


息切れだってするし

他のものに気をとられる時だってあるだろう。


私が彼女を超えるためには

決してその機会を見逃してはならない。


私は、その時を思い浮かべるだけで

鳥肌が立った。

そう

その時、私はこのパテオのホステスたちの頂点に立つのだ。


ミサキが辞めたのは

私がやっと、人気ホステスのベスト5入りするかしないかまで

登りつめたところだった。




当然、パテオは騒然とした。


ある日突然、超売れっ子が消えたのだから。

どうやら客は、その多くが知らされていて

根こそぎと言わなくても、かなりの割合が

ミサキに持っていかれたという。


ミサキの移転先は、まだ分からないようで


珍しく玲子さんがヒステリックに喚いていた。

「自分の店をオープンさせたらしいじゃない。

   悔しい!何もかも計画的だったのよ!」


私は拍子抜けした気分になった。

そりゃ、不動のナンバーワンの不在は

自分がのし上がるために都合は良かったけれど…


やっとあとひといきで手の届く所まで来られたのだ。

ちゃんと勝負したかった。


ミサキは私の憧れだったから。



ミサキのいなくなったパテオでベスト5入りした

私への期待は一気に高まった。


ナンバーワンに代わって繰り上がったのは

ルイというホステスだった。

それほど美形というわけではないが

話が上手いことで有名だった。


そして彼女のもう1つの売りは体だった。


バスト95センチを超え、ヒップも大きい。

普段はそれが魅力なのだが

あまりのお色気系過ぎて

ステージのセンターに立つと、それまでより

ショーの品格が下がったと噂されるようになる。


私はルイのポジションを何とかして狙いたいと

密かに思っていた。


ショーのフィナーレは上位5人による

サンバのような踊りだった。

私も端で全身の羽を震わせて客たちの媚を売っていた。

満面の笑顔で視線を移した時、苗代が茜といちゃつきながら

ふと、私に侮蔑の笑みを向けたのが目についた。


私はすぐさま目を逸らし

さらに口角を引き上げた。


私は心の中でつぶやいていた。

あんただけには、軽蔑される筋合いはない…



苗代の行動は

エスカレートする一方だった。


私が大学の単位がギリギリだったり、ゼミの担当教授

であることは、この上ない自分の強みだと信じている様子だった。


週の半分はパテオに顔を出し


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