フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第20話

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逆襲

《これまでのあらすじ》初めて読む方へ

大学生の桃子はあることがきっかけでショーパブでアルバイトをしていた。次第にそこに居場所を見つけ野心に燃える桃子。ナンバーワンのミサキが店をやめたことで、ついに桃子が店の看板売れっ子へと上りつめる。そんな矢先、突然大学のゼミの担当教授、苗代が店に顔を出し桃子にたかるようになる。そしてある夜アフターを付き合わされた桃子は、苗代から脅迫まがいにホテルへ行こうと誘われる。



苗代は何食わぬ顔で店員を呼んで会計を頼んでいた。

たった今、教え子に対して吐いた言葉など、まるでなかったかのように。


私は、そのまま目をそらすことなく彼を見続けていた。

正真正銘、最低教師を糾弾する眼差しだった。


しかし、苗代は物ともせず店員に代金を渡すとタバコに火をつけた。


「君は仕事以外は吸わないのか?ほら、一本どうだ?」


目に前に差し出された一本のタバコを

振り払いたい衝動を抑えながら

私は受け取った。


苗代が火を近づけてきたので

そのまま口をすぼめて煙を吸い込んだ。


タバコの先端がパチパチとオレンジに光る。


苗代は、そんな私を面白そうに見ている。


「先生」


「ん?」


「もし私の答えがノーだったらどうする気ですか?」


苗代は、フンと鼻で笑った。


「俺はどうもしない。篠田、お前が困るだけだよ」


「なぜですか?」


「おいおい、今更なんだよ。わざわざ言わせたいのかい?

   俺が君のゼミの担当教師だからだよ。そして君の秘密を知っている。

   1年生の時だっけ。言ってたな。いいところに就職したいって。

   そのために経済的に無理して大学へ通っているって」


驚いた。

そんな前に言った言葉まで覚えているんだ。


いや、その事情を覚えていて

こんなことができることにはもっと驚かされた。


「つまり、先生の言いなりにならなきゃ

   私に未来はないって言ってるんですね…?

   私…  脅迫されてるんですよね、先生に」


「人聞きが悪いな」


苗代は、はははっと笑ってから 


「でも、ま、そう解釈してもいいさ。俺は構わないよ。」


苗代はタバコをもみ消すと立ち上がった。

そして私を見下ろして言った。


「どうするかは君次第だよ。これから一緒にホテルへ行くか

   それとも僕に逆らうのか。ただ、これだけは言っておく。

   僕の言うことを聞けないなら

   残念だが君は大学進学の目的を見失うことになるだろうね」


そう言うと苗代は席を離れ背を向けたまま言った。


「さ、行こうか」


私は、座ったまま硬直したように俯いていた。


「そんなに緊張することない。今更、処女ってわけでもあるまいに」


私は顔を上げ、店の出口へと向かおうとしている苗代の背中に言った。


「行きません」



苗代が、私を振り返った。

冷静さと余裕を取り繕っているが

眉間にはシワが濃く刻まれていた。


「どうしたの?」


「私…行きません」


苗代は呆れたような笑いを浮かべた。


「まだ分かってないみたいだね。自分の立場」


「分かってないのは先生の方です」


「なんだい?僕が何を分かってないって言うんだ」


苗代はちょっとうんざり気味に笑った。

私はその顔を見つめて言った。


「ご自分の立場です」


「僕の立場?」


「そうです。助教授の身でありながら教え子にたかったり

   お金を無心したり、挙げ句の果てにはホテルに誘う。

   そんな非人道的な行いが許されるとお思いですか?」


苗代は一瞬、顔を強張らせたが

なぜかゼミで見せる穏やかな顔に戻って


「なんだい、どうしたんだよ急に」

と笑って私のそばまで歩み寄った。


でも次の瞬間、その顔が一瞬で青ざめた。


苗代はの視線は私の手に釘付けになっていた。


「これが何か分かりますか?」


私の手には佐々木に渡された小さなテープレコーダーがあった。

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