フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第21話

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予期せぬ想い

《これまでのあらすじ》初めて読む方へ

大学生の桃子はあることがきっかけでショーパブでアルバイトをしていた。次第にそこに居場所を見つけ野心に燃える桃子。ナンバーワンのミサキが店をやめたことで、ついに桃子が店の看板売れっ子へと上りつめる。そんな矢先、店に顔を出しては桃子にたかる悪質な大学のゼミ担当教授、苗代からアフターを付き合わされる。桃子は前に佐々木からもらったテープレコーダーで苗代の脅迫まがいの発言を録音していた。そのことを知った苗代は捨て身で桃子に襲いかかってくる。



もはや獣と化した男


私の力ではどうにもならなかった。


これは、あの夢の正夢かな

あのラストはどうなったんだっけ


そうだ


その辺に転がされて置き去りにされたんだ。



でもその鉛のような重さとがんじがらめの鎖が解かれた時


それが正夢ではないと分かった。




私の意識は朦朧としていたけど


あの声が、確かに聞こえた。


「おい、大丈夫か⁉︎」


頬っぺたを何度か

優しく触れられた


ああ、私は助けられたんだって心底安堵した。



彼は私を背負って歩いているみたいだった。


感覚だけだが地面からずっと離れている気がした。


まるで雲の上みたいに


彼の背中は意外なほど、夜の匂いがしなかった。

暖かい太陽の匂いがした。


車のドアを開ける音がして

彼は私をそっと助手席に下ろした。


温もりが急に失われ私は再び不安になった。

もっとおんぶされていたかったのに。

車のエンジンがかかった。


私の意識は戻り始めていた。


私は不安でいっぱいになり両腕で自分自身を抱きしめていた。


「安心しろ。もう大丈夫だ」



私は目を開けて隣の運転席を見た。



佐々木が無言でハンドルを握っていた。


私は別に驚かなかった。

最初から分かっていたからだ。


佐々木は私の住所を玲子にでも聞いたのだろう。

ナビを使っていた。


途中、横入りの車に舌打ちしたり

乱暴な荒っぽい運転もいつもの彼らしかった。


私はもう一度彼を見上げた。


普段気がつかなかったが

鼻が高く日本人離れした綺麗な形をしている。




「何、見てんだよ!」


佐々木が視線は前を見たままニヤっと笑った。


「見惚れんなよ」


私は、すぐに顔を背けた。


「別に…」


「さっきの、もう忘れろよ。もうあいつは店に来ないし

   お前も、今後あいつから脅されることはない。」


信号が赤に変わった。

佐々木はブレーキを踏んだ。

「テープレコーダーとったんだろ。

   もうあいつは終わりだ」


私は佐々木の方へ顔を向けた。


佐々木が私を見つめていた。


「ゴメンな。助けんの遅くて」


私は首を振った。


その時、涙が溢れでてきた。

瞬きもしていないのに


ポトポトと次から次へと

こぼれ落ちては、私の胸を濡らした。


自分の意思とはまた別のところで湧き出ているような気がした。


佐々木は腕を伸ばしてきて私の頭を撫でた。


私は、小さい頃に戻ったかのようにしゃくり上げるばかりだった。


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