世界47カ国女子バックパッカーができるまで(17)

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友達の、本当の意味を知った~回想3~


シリルにはすぐにまた、会うことができた。

彼はセントオルバンスを中心にバスを運転している運転手だったからだ。

私は学校の帰りにセントオルバンスの町中心でいつやってくるかもしれない彼のバスを待ち、彼がやってくるとそのバスに乗り込んだ。

夕日の差しこむがらんとした車内で私が運転席の彼の隣で柱につかまり彼に日本語を教え、彼は英語の表現を教えてくれた。
時にはお客がたくさん乗車してくることもあり、そうなると私は後部座席に座ってシリルの手が空くのを待った、彼は時々、自分のランチだけど君にと言って素晴らしく美味しいサンドウィッチを与えてくれることもあった。


まるで親切のかたまりのような彼に、私の心は溶かされ、ひとに対する信頼感を取り戻していった。

ある日、彼と彼の運転手友人であるピーターとバス休憩所で一緒に、私の作った寿司をご馳走した帰り道。

シリルが小さな車で私をホストファミリーの家まで送ってくれることになった。

シリル
ねえ、ケイシー。この世の中で一番大切なものって何だと思う?
ケイシー
うーん、何だろう??
シリル
それは、『友人』だよ。

車の中でいきなりしんみりとした様子でそんな話を始めた彼は、自分の身の上話をとうとうと話してくれた。


エジプトで生まれながらにして、いろいろな事情があり母国を出たシリル。フランスにわたり、そこで奥さんを見つけ、フランス国籍をとり2人で一緒にレストランを経営していたこと。大金持ちになり宮殿のような家に住んで、はじめは素晴らしくうまくいった経営もそのうちあることが事情ですべてを失い多額の借金のみになってしまったこと。

『友情』には、お金も何もかからない、ただ心があればいいだけだということ。

だから友情は、私達が大切にするべき唯一のものなのだということ。


シリルが真剣な横顔でそう話す隣で、私は心を打たれる思いでそれを聞いていた。だって、彼の心、というものをそれまでの彼の行動の中で感じていたから。

それまでの人生の中で、私はどれだけ自分勝手に行動をして考えてきたことだろう。

この世界のだれもが、自分を幸せにするために生きている。でもシリルの考え方は、友人を幸せにするために行動するという考えに基づいていた。


シンプルな英語が、私の心を打った。自然と、目から涙があふれてきた。


その時、生まれてきてはじめて私は感動、というものに触れたのだと思う。

20歳になったばかりの、夏の夜だった。

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