貧乏こそ神 我が母まいくばあの話(第12回)

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『葬式』

まいくばあはたいへん義理堅い。受けたご恩は決して忘れない。人に何かをしたり、あげたりするのは大好きなのだが自分がお世話になるのはどうも心地が悪いらしい。義理人間にとっては、それを果たすために見えない道を突っ走ることも多い。

ある葬式へ行った。地方新聞に訃報が出ていたらしく僕に電話してきた。
「あのね、○○さんが亡くなったらしい。名前調べてみたらうちの父ちゃんの葬式に来てくれていたようじゃ。すまんがあんたも一緒に行ってくれんか」
「わかった。その人あんた知ってるんか?」
「知らん。聞いたこともない」
人違いじゃないのかと思ったが、父の時の列席名簿にその人の名前があったらしい。

寒い日の通夜の晩、長いご詠歌の休憩時間にトイレに行った。用を足しているととなりに白髪の紳士がきて目が合った。
僕「寒いのォ」
紳士「寒いですねぇ」
僕「いやあ、今日亡くなった方ね、オレ全然知らん人でね」
ほんのひとときの静寂あり。
紳士「僕の父なんです」
僕「えっ?」
・・・失礼なことを言ってしまった。オシッコが止まらん。

結局どういう関係の人かは判らずじまいだった。
まいくばあ「まあいいじゃろ。それにしてもご詠歌長かったな」
あんたの関心はそこかい!

●まいくばあの「義理人情」
いつお世話になったか分からんから、知らん人の葬式でも行くよ。

                                       


『マイクばあ&ガキ使』

年末紅白裏の人気番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」
まいくばあはこれが好き。(八十二才なら紅白でしょ、フツーは)
その年も十二月三十一日には虎視眈々と、「きょうはガキ使みるで~」と気合を入れていた。夕方5時ごろからスタンバイして(早ッ!)テレビをつけといた。 
「まだかな」「あー、まだかな」「まだかなぁ、ぁ、ぁ」 
あろうことか、いや、いつものことだが、そのまま、こっくり、ぐーぐー、ぐぁー
・・・あくる朝まで寝てしまった。
気がついたらテレビは「おめでとうございます~」正月番組だった。
その時のヤツのおどろきと落胆は想像するに余りある。たぶん自分のほっぺたを自分で殴りつけたでありましょう。
「このあほがー!あんなに楽しみにして寝てしまうとはこのあほめッ!」とか言いながら。   
でもそれ、いつものこと。
ある夜、七時ごろ用事でまいくばあの家に行った。
「ピンポーン」と押す。中でばたばたしている。しばしあって、玄関を開けて言った。
「えらいこっちゃ、七時までも寝てしもた!」
「おいおい、いま夜七時やで」
「えっ?朝とちがうんか」
「あんた何時から寝てるん?」
「えぇっとね・・・忘れた」
いくらなんでも朝と夜の区別くらいつけろ。

●まいくばあ「ガキツカ」
紅白なんかより、げらげら笑うガキツカのほうがいいわ。

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前沢 しんじ

人生を渡っていく最強最高の友が言葉です。人生に起きる色々なことを「どう考えるか」、「何を選んで生きていくか」が自分の人生を決めます。メルマガではそんな考え方のヒントをお届けしています。エッセイスト前沢しんじが、よりよく生きるヒントをあなたに・・・

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