友達が自殺未遂しました、たかが婚活で 〜前編〜

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アンタ婚活してる?


たいして面識もない人からそう言われた。



当時、「婚活」と言う言葉が

出回ったばかりの頃


巷で流行りだしたこのキーワードがあまり好きではなかった。




就活、妊活、保活に、婚活


名前つけて一括りにすれば、みんなと一体感になれて


安心して流行りに乗っかれる




婚活?私もやってま〜す!

みたいな?



流行語大賞候補にしようとしてる

マスコミに踊らされてるだけじゃん。


実際、この就活をもじった造語が

流行って以来

婚活市場は勢いを増している。



ただし、今こうしてすっかり社会に定着した

「婚活」については


疑問に思うことだらけだ。



どこのサイトにも本にも、結婚相談所でも


結婚の本質を何も教えていない。



どんな相手と結婚したいか?


高収入で高学歴?

若くて美人?


そのためにどうするか!?



どこもかしこもそればっかり



3組に1組が離婚

5人に1人は結婚難民


晩婚化、低所得男性の増加

理想が高くなる一方の行き遅れの女性たち


これじゃどんなに少子化対策やっても意味がない



この国の結婚観を根こそぎ変えなきゃ



私がこのようなことを

考えるようになったのは


職業柄というのもあるけれど


ある知人に起きた出来事によって

衝撃を受けたことが大きい。




彼女は婚活のせいで命を落としかけた。


当時は、あまりに私にはありえないお話だった。


でも、今の私には、分かる。


彼女のやり切れなさ、行き場のない辛さ




前置きが長くなりましたが

彼女について書こうと思います。



彼女は私の友達の友達

仮名として奈々子とします。

私は一度しか面識のない人でした。


奈々子は小柄で可愛らしく

初対面の私に、気を使って遠慮がちに

話す姿が印象的でした。



後で知ったけれど

彼女は、三人兄弟の長女

幼い頃、親が離婚したため、まだ小さかった弟や妹の

面倒を見ていたそう。


自由奔放な次女気質の私から見ると

芯のある女性だけど、ちょっとお固そうで

付き合いにくいかなって思ってました。


当時、奈々子は私より二つ年上 の31歳でした。


忙しい母親に代わって

5つと8つ年下の弟と妹の母親がわりとなって

面倒を見てきた

弟も妹も自立した。


やっと自分にためだけに生きることができる。


奈々子は子供が好きで

かつては保育士になりたかったこともありました。


私も早く結婚して温かい家庭を作ろう。

優しい旦那さんと可愛い子供達に囲まれて

毎日過ごせたら、どんなに幸せだろう…


私は三人兄弟で楽しかったから

3人くらい子供が欲しいな。

お母さんみたいに苦労はしたくない。

私たちだって父親がいないのは、どこかいつも寂しかった。

私は絶対離婚しない。

そしてお父さんみたいな人とは結婚しない!

心から信頼して支え合える夫婦になるんだ!


奈々子はそう心に決めていた。


奈々子の父は、大企業に勤めてはいたが

仕事人間で、家庭を一切顧みなかった。

母親は外に仕事を持っていたので

夫と別れてもなんとか子供と暮らせると

奈々子が9歳の時に離婚した。妹はまだ1歳にもなっていなかった。


母は別れてせいせいしたと言うが

離婚の代償は大きかった。


母は朝から晩まで仕事漬けで

行事や参観日に来てくれないこともあった。


奈々子はそんな母に代わって兄弟の面倒を見た。

妹のおしめを変え、弟の遊び相手にもなってやった。


経済的にも余裕がなかったので欲しい物を買ってなどと口にできなかった。

奈々子は子供心に母親を困らせないように

気を遣い我慢することを覚えた。


でも奈々子なりに母に感謝している。

母は身を粉にして働き奈々子を短大まで出してくれた。

弟にいたっては大学まで出ることができた。

そこにおいては母親を尊敬している。


母親も内心、奈々子に申し訳ない気持ちがあったため

奈々子が早く結婚して安定した暮らしをしてくれることを望んでいた。


ただ、奈々子はあまりに異性と話すことが得意ではなかった。

慣れていないと言ったほうがいいかもしれない。


短大を出て就職した先にも中年から初老の男性社員しかいなかった。


昔の友達の中に結婚相手となるような

親しい男友達は1人もいない。


同僚に誘われて合コンやお見合いパーティに参加するが

来るのはいつも、ただ騒ぎたいだけの男や

可愛い子しか目に入らないような男ばかりだった。


奈々子のように控えめで地味なタイプの女性は

メイクばっちりのモデル体型の垢抜けた女子と

同席しても霞んでしまうのであった。


32歳の誕生日を目前に控えた奈々子は意を決して

とある結婚相談所に入会する。


テレビも取材するようなカリスマ女性社長の相談所で

ホームページでも画面いっぱいに、ベルサイユ宮殿にいる貴族のご婦人のような

格好をした女性社長の笑顔のアップ画像が映し出され、その隣に大きな文字で

確実に結果を出せるわ!

という相談所の謳い文句がある。


ここなら私だって見つかる。

いや、私のように結婚に真剣な人間は

同じように真剣な男性と出会うにはこういう所を利用すべきなのだ。



相談所に初めて電話をかける時は声が震えた。


奈々子はどうにか週末に入会面談を予約したのだった。





豪華に装飾されたサロンに通されると


そこへ、ド派手なピンクのスーツに花柄のスカーフをつけた社長が現れた。

近くで見るとサイトの写真にはなかった細かい皺が顔中に刻まれていた。

でも、笑った顔は人を惹きつけ、安心させる華やかな魔力があった。


「あ〜ら〜〜、可愛いお嬢さんですこと!」



女社長はとびきり愛想のいい顔で笑った。


「おいくつ?」


「さ、32になります、来月。あ、年齢大丈夫ですか?」



奈々子がビクビクしながら言うと、女性社長は手に口を当てて

オーッホホホホ!!!と笑った。

奈々子はキョトンとして見ていた。



「大丈夫よ!ちょうどいいくらい!ま、若いとは言えないけど

   今が初めどきね!今を逃すと次はないわ!」


彼女は、始終口元に微笑をたたえながら

婚活をする大切さを語った。


女性も自分の未来を自分の手で切り開ける時代です。

指をくわえて欲しいものはを待ってても永久にこない。

自分の想い描く未来を自分の目で見つけ掴み取るのよ!


息継ぎはいつしてるんだ?酸欠にならないか?


と突っ込みたくなる程

彼女の熱弁は果てしなく続いた。

彼女の言葉は魔法のように奈々子の心をガッチリ強く掴んで話さなかった。



最後の締めの言葉はこうだ。


「今ならまだ間に合う!うちで一緒に頑張りましょう!」



決して安い金額ではなかった。

入会金、月会費(1年分)、雑費(お写真代やらプロフィール作成代やら何やら)

含めると30万近い出費だ。

現在、安月給の派遣社員の奈々子には痛い出費だ。

実家暮らしだが、ちゃんと家にはお金を入れている。


奈々子はなけなしのお金をカードで払い

契約書にサインをした。



これで幸せが約束されたかのように思えた。



帰り道、彼女はスーパーに寄った。


(これからは、節約しなくちゃ)


お見合い料など、別途にかかるので、まだまだお金が必要になる。


半額の魚や肉をカゴに入れた。

それでも心は不思議とワクワクしていた。


数日後、会員番号がメールで送られ

サイトで自分のプロフィールを確認したり

相手を検索したりできるようになった。


プロフィールは自分ではないみたいに

可愛らしく取れている写真と

自己紹介文などにしても完璧だった。


かなり加工された写真だが、自分らしい控えめな雰囲気は残されている。

プロフィールも料理や家事が得意な大和撫子など

男性ウケする文言が盛り沢山だ。

これならきっと男性の目に止まるはず。



奈々子は色々妄想を楽しみながら

サイトをじっくりと閲覧した。


そして早速、素敵だなと思う数名の男性会員へ

お見合いを申し込んだ。


奈々子はその日の日記にこう書いた。


ドキドキする。

こんな気持ち久しぶりだ。

もしかしたら、今年中に結婚できるかもしれない。

高かったけどやっぱりプロに頼んでよかった!




彼女の相談所への信頼が不信へと

彼女のささやかで純粋な結婚観が、ねじ曲がり破壊へと

向かうことになるとは


この時は本人が一番想定していなかったことだろう。


それは、相談所で活動を始めて2年目に入った頃だった。






読んでよかった
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私も婚活で辛いので、参考になりそうです。

コメントありがとうございます。
婚活って未来のパートナー探しだから、本来ワクワクするものじゃないとダメだと思うんです。この主人公のような人が他にも沢山いることを知ってもらいたくて書きました。

Yoshida Maiko

恋愛や婚活をテーマにコラムを書いています。またライターとしても活躍中。6年間の海外生活や教育学や心理学も学んだ経験から人生に携わる結婚観連の仕事をしています。 http://ameblo.jp/maichelle←よかったらアメブロものぞいてみて下さい、

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