素顔10代な平凡OLが銀座ホステスとして売れっ子になるまで(12)

前話: 素顔10代な平凡OLが銀座ホステスとして売れっ子になるまで(11)

虚飾の世界で

サキ姉は席につくと、得意の話術でまわりを巻き込む。

彼女の話は、「へえ~」となるような物知り裏話、そして自分の自虐ネタもあったりした。


マヤ
お待たせしました


私服からスパンコールをあしらったドレスに身を包むと、私はサキ姉が盛り上げる大島と小林の席についた。

彼らは何かの話題で相当盛り上がっているらしく、わけもわからずに座った私はとりあえず席の端で軽い笑顔になっていた。


正直なところ、私はサキ姉が得意ではなかった。

彼女は話を盛る癖があり、面白ければ話を大きく、なかったことまでしゃべる癖があったからだ。


初めてお会いするお客様の席で一緒になり、「この子は人気があるからね~、この中でいったい何人がその手中に落ちるでしょうね~」こんな軽い感じで私をお客様に紹介するので、やりきれない気持ちになったことが何度かあった。


そんなときでも、私ははりついた笑顔を浮かべていた。


自分には嘘をつけない性質だった子供のころ。思っていることが正直に顔に現れるので、すぐに嘘などもひとに見抜かれていた。

そういう意味では、少しはこの銀座の虚飾の世界で処世術のようなものが磨かれたのかもしれない。

私は、だんだんと表の顔を使い分けられるようになっていったからだ。


接客の仕事を通じて、芯まで感じたのは自分は人づきあいが苦手だということ。そして、なかなかひとに対して心を開くことができないということだった。


仕事の中で場を盛り上げるためにテンションをあげれば上げるほど、本来のどこか冷めた怖がりな自分の存在に気付いていった。


それはまるで、瞑想のようなものだった。


大島はきっと、どこかのタイミングでこの私の繊細な性質に気づきそのドアの前に立ってしまったのだろう。

重いさびついたドアをゆっくりと開けるように、彼は私を虚飾の世界から救い出してくれたのだった。



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