フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第28話

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知られざる顔

《ここまでのあらすじ》初めて読む方へ

あることがきっかけでショーパブ「パテオ」でアルバイトをしている大学生の桃子は、少しずつ頭角を表し店の売れっ子へと上りつめていく。そんな矢先、恋心を抱きつつあった店のチーフマネージャー佐々木が店を辞めショックを受ける。やけ酒を飲んだ帰り元恋人の拓也に、振られた腹いせに桃子が売春していると噂を流したと告白されたり、実家の母の急な訪問で、桃子の心は揺れ動き、ついにパテオを辞める決心をする。ところがその時が、佐々木から電話があり予期せぬこと明かされるのだった。




無数の手は様々な色形をしていた。


筋肉質だったり、細く白かったり

ゴツゴツして毛むくじゃらだったり



私は必死で逃れようと、もがき、喘いだ。




でも力尽きた時

私の体は


無重力状態にいるみたいに宙を浮いた。


そして、私は再び暗闇の中に深く堕ちていくのだった。



私はハッと我に帰った。


暗闇の中でも私の部屋だと分かった。


あの夢を見るのは久しぶりだった。



私は起き上がりベッド脇のスタンドの電気をつけた。



時計をみると、佐々木との電話を終えてから

まだ20分しか経っていなかった。



薄明かりの中で無意識に、私はベッドを降り床を這い回った。


きっとどこかに転がっているはずだ。

あのネックレスを床に投げつけたのは

つい昨夜のことなのだ。


 ない。フローリングの床の隅々にも、溝にも


私はベッドの下を覗き込んで


ホッとした。


手を伸ばして、それを掴んだ。


青い石はやはり綺麗だった。




「玲子には気をつけろ」


受話器越しに佐々木はそう、はっきりと言った。


最初、私は何のことだかわからなかった。


「え…それどういうことですか」




「初めてお前にあった日」



佐々木は勝手に喋り続けた。


「ほら、駅前の喫茶店で待ち合わせただろ、玲子と。

俺は少し遅れて行ったけどよ。お前にあいつ言ったよな。

携帯電話拾ったのは俺だって」


私はあの暑い夏の日のことを思い出していた。


財布と携帯電話を拾ってくれたという女性に会うため

私は緊張と不安でいっぱいだったっけ。

拾ったのが柄の悪い佐々木だと知り

私は、不信いっぱいで彼らの前に座っていた。



「玲子さんはそう言ったけど…

アキさんが拾った…んじゃないんですか?」




「拾ったのは、玲子だ…

ついでにお前の財布を拾ったのもあいつ」



「え…」



少し間を置いて私は、ハッとした。



「財布って……だって、携帯電話しかなかったって…」



「確かにお前にはそう言ったな。拾った時

   携帯電話だけで財布はなかったって。

でも、だいたいよお、財布だけ別の人間が持っていくなんて

おかしい話だろ?それとも、携帯拾った俺がそのまま財布だけ

パクったとか思ってたか?」



半分図星だったので私は、はいと答えた。



「バカやろう!俺がするかよ!」



「アキさん」



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