世界47カ国女子バックパッカーができるまで(18)

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次の赴任地、バースに決まる。

時は経ち、あっという間に夏は過ぎ去っていた。セントオルバンスも秋の風が吹く9月の終わり。もともと涼しかった吹く風も、さらに刺すような冷たさを感じるようになっていた。

そんな週末に、私は日本人たった一人でボランティア赴任地、イギリス南部のバースという町に派遣されることになった。


約100日間、お世話になったホストファミリーともお別れの日。

でも、恥ずかしがり屋のホストパパ、ロドはその日にわざわざ外出の予定を作っていた。年金暮らしの彼は普段は外出などなく家にいるのに、その日はわざわざ町の反対側の床屋に予約を入れたのだという。

ママのウルスラと一緒に白いセダンで出かける後ろ姿を見ながら、最終日を彼らの為にあけておいた私はどこか寂しい気持ちになっていた。のろのろと部屋で荷物を片づけながら、考えていたのはセントオルバンスでできた親友、シリルとピーターの顔だった。

これから南部の町に行ってしまったら、次に彼らに会える日はいつなのだろう。そんなことを考えると、新天地への期待とともに悲しいという感情が湧いてきた。


荷物の支度が終わると、近くの図書館に借りていた本を返しに行った。

家のまわりには木漏れ日の溢れる並木通りが続いていて、秋の陽ざしはそんな私の心を少し癒してくれた。

家に帰ると、ロドとウルスラが帰ってきていた。

私が彼らに別れの挨拶をしようとすると、ロドは短くなった頭をふいと背けてリビングにテレビを見に行ってしまった。

ウルスラは私を抱きしめ、ひとしずくの涙を流した。

私はまだ若かったので、ロドのそんな自分に対する仕打ちに腹が立ってしまって、どうしても感傷的な気持ちになれずに複雑な表情をしていたと思う。


ウルスラが白のセダンに私をのせて、バースの町へ向かう電車駅へ送ってくれたときにも、ロドは一緒には来なかった。


苦いチョコレートをたくさん頬ばったような、そんなほろ苦いホストファミリーとの別れ方だった。





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