インド アーユルヴェーダ 1ヶ月体験記 (5)

(このストーリーは2010年にブログにアップしたものから抜粋したものです。

アーユルヴェーダとは、インドの伝承医学。南インドのケララ州が有名です。)


トリートメント12日目

先生が今日の午後、息子さんの家を訪ねる用事があるため、いつもより早く出勤され、8時半にトリートメントがスタートしました。「早く来ていただいてありがとうございます。先生、お忙しいなら、今日は休まれたらよかったのに」と言うと、「仕事は、仕事です。(Work is work)あなたが前、言っていたでしょう。インドでは『1分』という意味は1時間とか、1日とかだけど、日本では、『1分という意味は、1分』だって。(インドでは、1分待って、と言われても、1時間や1日かかるという意味。)私は、その考え方が好きです」「とても誠実ですね~。でも、オーナムの日(ケララのお祭りで祝日になる)は休まれるでしょう?」「はい、その日は休ませてもらいます」「もちろん、ぜひそうしてくださいよ!」


「先生は午後、診察が終わって家に帰られたら、何をされているんですか?」「休憩したり、本を読んだり、テレビのシリーズ番組を見たり、瞑想を1時間ほどやります」「先生は、座って瞑想もされるんですね」「いや~、ほんのちょっとですよ。昔は、よく本を読んで夜更かししたこともあります。最近は遅くとも11時には寝ますが。ビクトル・ユーゴは知っていますか?フランスの劇作家です。ドストエフスキーなどもよく読みましたよ」「いいえ。お好きなんですか?今度、日本に帰ったら読んでみますね」


「先生、クンダリーニの話がよく出てきますが・・・(ほぼ、毎日くらい、この単語が会話に出てくるので)」「クンダリーニについて、たくさん言えることはありますよ。でも、言語の問題で、あなたに説明できないのです。」「でも、先生の言葉ではない部分からたくさん学んでいますよ。沈黙の中から教えていただいています」


トリートメント13日目

朝起きたら、いつもの頭頂に薬草のクリームを乗せたり、別の液体の薬草を飲み、鼻からクシーラバラオイルを垂らすことは日課です。その後、しばらく瞑想をしたり、読書をしていると、助手の女性がやってきて包帯を外し、体を洗います。沸かしたお湯をバケツに入れてきてくれるので、水で薄めて使います。タオルで体を拭くのと、お湯で洗うのを1日おきに行います。12時30分過ぎ、先生のところへ行き、マッサージと包帯です。今日はほとんど話しかけませんでした。自分も会話をしたい気分ではなかったし、先生も集中力に欠けるだろうと思って。


「あなたも気づいていなかった問題がいろいろ体にあったでしょう。」「はい、そうですね。でも深刻ではないでしょう?初期のうちに対処できてよかったですよね」「深刻じゃないですが、ほっておいたら、痛みが増していたでしょうね」「こうして、予防的なケアとして1年に1回、車の点検をするように、来るのはいいことかもしれませんね」「3年に1度はせめて来た方がいいでしょうね」 先生はおっしゃいました「ここにいる間は、治療に専念してくださいね。他では、この治療はできないですよ。だから、今ここにいる間はせめて、集中してくださいね」

ついつい、スタッフとはしゃぎすぎてしまったり、夜ビデオを見たり、パソコンで体験記を書いたりしていると、治療以外のことに神経を使ってしまう。先生は具体的に注意をされたわけではないけれど、自分ひとりで反省しました。

ここは、クリニックというより、アシュラムにいるような気分です。体のケアをしてもらいながら、瞑想を進めている感じ。それを先生に伝えると「環境がいいでしょう?」とおっしゃいました。最初に来た時の、物理的な環境に対する印象は、もう今ではすっかり気にならなくなっています。物質的な面以上のところで、満たされているからでしょうね。


トリートメント14日目

「先生、今朝瞑想をしていたら、今、治療している部分は、エネルギーのブロックになっていることを感じましたよ」と先生に伝えると、「ブロックとは、どういう意味ですか?」と言われました。ブロックと言う英語が通じないのかな?と思い、ジェスチャーで、“通せんぼ”を先生に対してすると、先生と助手の女性がクスクス笑いながらマラヤラム語で話しています。

「ん?何ですか?」と聞くと、「あなたのジェスチャーはとても素早いですね。カラリパヤットをしたらいいかもしれない」とおっしゃいました。カラリパヤットのマスターはグルッカルと呼ばれますが、このグルッカルから、何度もカラリパヤットを薦められているので、いつか習ってみようかな・・・?武術は見るのは好きですが、自分がやろうとは思ったことがなかったので、戸惑いますが・・・。


通常の治療では、マッサージは、ハーブをつけた包帯による治療をしばらく行ってからするらしいのですが、私の場合は、先生から毎日マッサージをしてもらうことが必要だと直感的に感じて、無理を言って、特別にお願いしました。私としては5分でも毎日先生に、手を静かに置いてもらうだけでも実は十分なのですが、先生は毎日マッサージと包帯に1時間をかけてくださいます。毎日、大量のオイルを体に染み込ませています。まるで、錆びた部分に油をさして、修理するみたいに。

ある日、「昨夜、寝る前に(セルフヒーリングとして)レイキをしました」と先生に言うと、「私のこのマッサージもレイキをしているのと同じですよ」とおっしゃいました。「このマッサージ、包帯に塗ってあるハーブ、包帯を巻くこと、毎日飲んでいる薬草ドリンク・・・全てが一体となって効果を出しています」とのこと。

付け加えると、先生の存在、クリニックのエネルギー、明るくて素敵なスタッフさんたちとの交流、ここに滞在すること自体、全てが、ヒーリングのプロセスとなっている気がします。

アーユルヴェーダの治療は、オイル、オイル、オイル、ですね。「蚊に刺された」と言っても、「オイルを塗りなさい」、「足の小指をテーブルにぶつけた」と言っても、「オイルを塗りなさい」、「白髪がある」「オイルを塗りなさい」・・・と言う感じです。


白髪と言えば、V君に、「頭の後ろの方に、たくさん白髪があるよ」と言われたときのこと。「そりゃ~ありますよ~。私はV君よりずっと年を取っていますからね」と答えると、S君が、「染めればいいですよ。白髪、僕もありますよ。ここにも、ほら、ここにも」と21歳ながら、さりげないフォローが入ります。

別の日にも、V君の「あなたは、僕たちと同じ年齢の感覚です。ただ、白髪だけが例外だけど」との言葉に、苦笑。確かに、私は、顔は年々、若返っていく気はしますが、白髪が多いのは変わらない気がしますね。


大先生に、V君に白髪がたくさんあると言われた話しをすると、「シャワーの前に頭に塗っているオイルがあるでしょう?あれは、白髪にも効きますよ」とのこと。ココナッツオイルをベースにしたこのオイルの香りは大好きなので、ここを出た後も使いたいと思っていました。続けていったら白髪もなくなるかな?

毎晩、スタッフが帰った後、隣の部屋のおじさんと、廊下にあるテーブルのところで、ほとんど通じない片言の英語とマラヤラム語(ケララ州の言語)と、ジェスチャーで楽しくコミュニケーションを取っているのですが、今日、おじさんも、「頭の後ろの方、白髪たくさんあるか見てくれる?」と私に聞いてきました。

「写真を撮りましょうか?」「うん」・・・というわけで、お互いに白髪の写真の撮り合い・・・笑。お互い写真を見ながら、「問題ない、問題ない」と励まし合い・・・なんだか、そんなことをしている自分たちが微笑ましくて、クスクス笑ってしまいます。

おじさんとは、ほとんど言葉が通じないので、マラヤラム語を教えてもらったり、マラヤラム語の歌を教えてもらったり、こちらも日本語の歌を教えて、一緒に歌ったり、新聞を見ながら、ほとんど通じない言葉でジョークを言い合って笑っています。(結婚相手募集の記事などが面白いんです)

スタッフともこんな感じなのですが、それがとても楽しくてしょうがない。ここに来た最初の数日は、普通に英語がしゃべれる先生の息子さんの手があくのを心待ちにしていましたが、今では、逆です。

滞在から4,5日たったあたりから、あまり複雑な会話をしたくないのです。ここを紹介してくれたアルゼンチンの友人Hさんは、「昼間は部屋で何もせずに過ごして、夕方になったら、下に降りて、息子さんやそのお友達と深い哲学的な会話を楽しんだ」と言っていましたが、私は、哲学的な深い会話をしたい気分には、とてもなれません。

言葉の通じないスタッフや、隣のおじさんと、表情のやりとりや、ジェスチャーによる意思疎通で、他愛のない会話をしたり、音楽や写真を一緒に楽しんでいる時間がとても楽しいのです。昼間はスタッフたちと、そして夕方になったら、上の部屋に戻って、また言葉の通じないコミュニケーションをおじさんと楽しむ。友人Hさんと真逆ですね。 マインドが静かになっている証拠だろうと思います。言葉が片言しか通じないと、自然にマインドも使わなくてすむことを発見しました。


例えば、「もし・・・だったら」とか、過去や未来の話など、表現が通じないので、「今ここ」にあることを指さして、一言、シンプルなコメントをする、くらいしかできないのですが、そのおかげで、マインドを使わずにすんでいるんですね。また、自分が質問したことが通じなくて理解されないと、どうしてもマインドは、相手に理解させようと、躍起になったりする傾向があるのですが、そんなとき、理解されないなら、OK、この話はいいやと、ぱっと切り替えられるかどうか、マインドのいいプラクティスになっています。




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