インド アーユルヴェーダ 1ヶ月体験記 (6)

(このストーリーは2010年にブログにアップしたものから抜粋したものです。

アーユルヴェーダとは、インドの伝承医学のことです。)


トリートメント15日目

今日は、トリートメントはお休みです。ケララ州で最大の文化的祭り、オーナムの日のため、スタッフも先生も全員お休みなのです。オーナムは、花を玄関にキレイに飾って、ごちそうを家族みんなで食べるケララ最大の文化的祭典です。

今日は、先生のお宅に招待いただきました。

大先生と息子先生ご夫婦が一緒に住んでおられます。お兄さんも奥さまとお子さんを連れて里帰り。大先生の2人のご兄弟も、息子さんお二人も、全員アーユルヴェーダ医とのこと。

ご自宅の隣にある、カラリパヤットの道場も見せていただきました。床は柔らかい土で、たくさんの神さまが祀ってありました。カラリパヤットは、武術の道場としてだけではなく、寺院の役割も果たす、ということを読んだことがあります。道場への入り方と出方も決まりがあるらしく、右足を床につけて、額と胸に手を置いて、敬意を払うのだそうです。お寺の入り方と同じですね。

70歳を超える大先生による、カラリパヤットのパフォーマンスを少しだけ見せていただきました。鉄の刀をぶんぶん振り回されるお姿に、圧倒されました!

インドの方のお宅にお邪魔すると、どこにいっても、同じことが起こります。それは・・・ご家族の結婚式のアルバムを次々と見せられること。その間に、チャイとスナックが出てくること。そして日本の社会や文化について、同じような質問をされること。私の回答に同じようなリアクションが返ってくること。

このようにインドの人は、大体同じようなパターンの考え方をしたり、行動をするから、インド式結婚、お見合い結婚が成り立つのだろうなと、ふと思いました。

インドの結婚システムは、親同士が、同じカーストから、自分の子供に合う相手を決めて、当人同士がいいと思えば結婚する、となるのですが、同じカーストで、どんな経歴の持ち主でどんな教育を受けてきたかなどの情報があれば、大方、相手がどんな人かを見極められるそうです。日本は、個人個人があまりにも自由なため、どんな人間かは予測するのが難しいですよね。

また、問題が起きても、当人同士ではなく、周りの家族が解決してくれるのだそうです。ストレスが少なくていいですね。

食事に、洋服に、職業に、結婚に、日々のルーティンに、人生に、同じようなパターンで何百年も繰り返してきたわけですから、問題も大体決まっているでしょうし、解決法も年配の人たちは熟知しているでしょう。社会の構造が安定し、そのおかげで、人の心も安定するということがあるかな、と思いました。日本は、選択肢がありすぎて、あまりにも自由で、逆に何を選んでいいかわからなくなったりして、それが悩みになったり、不安の種になったりします。その話をしてみると、息子先生は、「メリット、デメリットがありますね。毎日同じことの繰り返しで飽きてしまうというのはあります。でも、みんなリスクを負うのが怖くて新しいことをしようとはしないのです。私の場合は、この生活を快適に感じています。あまり考えなくてよいから」とのこと。


トリートメント16日目

昨日は私も包帯から自由になっていましたが、また今日から包帯の日がスタートします。

「今日は朝8時から今の時間(13時)まで、ひっきりなしに働いています」と、先生。昨日は1日だけのお休みを取られて、74歳のご高齢ながら、働き者でいらっしゃいます。

「今度ここに戻ってきたら、カラリパヤットをプラクティスしてみなさい。」とおっしゃいました。毎日のようにお誘いいただいています。見学する日がとても楽しみです。

「私は、仕事をしている時も、ずっと神のことを考えています」先生はおっしゃいました。昨日、先生のお宅で見せていただいた、プージャのための部屋(祈祷のための部屋。インドのほとんどの家庭にあります。日本のお仏壇や神棚のようなものでしょうか)で感じた、とても強くて濃いエネルギーを思い出しました。また、お昼御飯の前に、ガネーシャ神(像の神さま)にご飯をささげる儀式も見せていただきました。家族全員が集まり、無言で厳かな雰囲気の中、先生は、葉っぱの上に乗せたご飯やおかず、スープ、バナナを全部混ぜて、手でグニャグニャつぶし、大きな団子状にされました。もしかして、これをみんなで分けて食べるという展開になったらどうしようと、チラリと脳裏によぎります。その心配をよそに、団子は、先生の手の中でお祈りをささげられ、小さな葉っぱに移されて、外へ持ち出されました。子供たちと一緒に私もその後をつけていくと、庭の塀にそれは置かれました。「今、ガネーシャにささげられたんですか?」と聞くと、「これは、動物や鳥たちに食べてもらうために、外に置いたんですよ。ガネーシャには、部屋ですでに、お祈りして、ささげられたんです」「毎日、この儀式をやっているんですか?」信仰深い先生なら、大いにありうると思って聞いてみると、「いいえ、年に1,2回大きなお祭りのときだけですよ」とのこと。

先生に、ヨガ、瞑想以外に何かやっていることはあるかと聞かれ「書くことが好きです。私も先生のように、書いている時は、神を感じています。神が私を通じて書いているようです。後から文章を読むと、自分で書いたとは信じられないような、誰かほかの人が書いたんじゃないかと思うような文章になっていたりします。」「ほう。いつから書いているんですか?」「幼少のころからです。詩を書いたりするのが好きでした。以前、インド占星術でも言われたんですよ。書くことは私に向いているって。また、インドの人たちにお世話になっているからどのようにお返ししたらよいか、と聞くと、インドの人たちについて『書く』ようにって」

息子先生に、書くことを制限されているにもかかわらず、いまだに毎日たくさん書いてしまいます。息子先生には、トリートメント中は、1時間座って、おしゃべりしたり、何か書いたりしたら、1時間は横になるようにと言われています。さて、そろそろ横にならなければ・・・。


トリートメント17日目

なんと、2週間続けて頭に塗っていたオイルは実は頭用ではなく、体用だったことが今日、判明いたしました。助手の女性が、シャワーを浴びる前に私のお世話をしてくださるのですが、頭につけていたオイルは、彼女が自分の判断で持ってきていたようです。頭にオイルを塗ってくれたり、シャワー後、髪の毛を拭いてくれたり、至れり尽くせりなのですが、自分が小さな女の子になったような気分で、彼女のことを「アンマ」(お母さん)と呼んでいます。

ちなみに、2週間違うオイルを塗っていたけど問題はなさそうです。最初、びっくりして、「え~2週間も違うのをつけてたの~!?」と言っていたら、周りのスタッフたちは、私が不満を言って怒っているのだと思って、無言になり固まっていました。「でも、間違っていたオイルの方がいい香りがしますね。私、こっちの方が好きだな。イシタマーノ、イシタマーノ!(マラヤラム語で、『好き』と言う意味)」と言うと、笑顔が戻りました。

先生のところで撮った写真を先生に見せた時、ヨガのアーサナの写真も見せたのですが、「あなた、カラリパヤットもできますよ。きっと簡単ですよ」と大先生は言われました。

先生は、私にカラリパヤットを毎日のように勧められています。息子先生が、写真を見ながら「あなたは純粋な日本人ですね」と言われました。「え?」「インドではこういう言い回しをするんですよ。何か専門的なことをする人を見たら、『あなたは純粋な日本人ですね』(pure Japanese)って。いい意味ですよ。褒め言葉なんです」「へ~、ありがとうございます」インドでは、日本人をとても高く評価してくださってるんですね。日本人はインドでは、専門的な仕事をこなす、ちゃんとした仕事をするっていうイメージなんでしょうかね。どこへ行ってもインドの人から「日本人、大好き」と言われます。対日感情がよい国では滞在もしやすいです。これまでよい印象を与えてくださった日本の方々に感謝です。

トリートメント18日目

ついに念願のカラリパヤットの見学の日がやってきました。4時にセンターを出て、4時半から6時の間、見学させてもらいました。先生が、「たくさん写真撮ってくださいね、ほら、遠慮せず。こちらのアングルからもどうですか?」と言ってくださいました。神聖で、真剣な雰囲気で、写真を撮るのはご迷惑ではないかと、控えていたのですが、そう言ってくださったので、遠慮なくたくさん撮らせていただきました。ビデオも撮りました。スピードのある連続的な技が次々と飛び出すので、私が今回持ってきた、CASIOのEXILIMという1秒間に30枚連写ができるカメラはまさに、この日のためのものという感じで、天井からつりさげられた球をハイキックする瞬間など、バッチリ映せましたよ!これまでブログでも出てきた、21歳のスタッフの男の子S君は、クラスで最年長で、みんなのお手本になっていました。先生がよく、ヨガと似ているし、私にも簡単にできると言われていましたが、いやいや・・・すごいスピードと連続技。私はトロいですからね・・・ゆっくりしたヨガはできますが、こんな早いものは、私にはとてもとても・・・

雨が連日のように降り続いているので、この日はとても寒くて、行きのオートリキシャの中で、「寒い、寒い」と言っていたのですが、みんなの熱気のせいか、見ていただけでも、暑くなってきました。


小さい子供の何人かは、「どう?見て!私すごいでしょ?」と言う目で私をチラチラ見ていますが、S君はこちらのカメラの視線にも全く動じず、気にせず、真剣そのものでした。


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