【第19話】離れて暮らしていた父の介護のこと、死んだときのこと、そしてお金のこと。

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車椅子deお散歩

父が入所していた老健では、事前に申請をしたうえで、当日の体調や天候に問題がなければ外出や外泊ができた。入院してから父が外に出たのは、入所するときの介護タクシーの乗り降りくらいだ。

季節は春。外出するにはいい季節だ(重度の花粉症の姉には地獄らしいが)。


施設は隅田川沿いにあるため、近くに神社や公園もある。まさに散歩にうってつけだ。私達は入所後、すぐに外出の申請をした。

そこで私達は思い知らされた。

室外で車椅子押すの、めっちゃ大変。


横断歩道とか、出入り口(?)あたりって、スムーズに移動できるように、ゆるーく坂になってるじゃないですか。あれ凄い助かるけど、ちょっと傾斜があるとこだと、上り坂は普通に押せないの。足置く所がぶつかっちゃうんですよ、傾斜に。だから、車椅子をぐるっと反対方向に向けて、後ろ(背中側)から入るんですよね(うーん、言葉で伝えにくい…)。

まあ、こんなことひとつでアタフタしてしまうのに、さらに自分と父の荷物持って散歩とかもう無理も無理。という結果、「2人一緒に面会に行ける時限定の外出」というルールが、姉と私の間で自然と制定された。


時折、車椅子でお散歩している方を見かけるけれど、私より年上で小柄な方がスイスイと押しているのを見ると、つい心の中で(あなた凄いよ…がんばれ!!)と応援してしまう。


少し脱線したが、当の父はというと、やはり私達の緊張が伝わっているのか、いつもとは違う振動のせいか、少し強張っているような気がした。それでも、スカイツリーを眺め、公園でジュースを飲み、外の空気に触れている父は、心なしか嬉しそうだった。


これ以降、父は外出をしたがり、私達もできるだけそれに応えた。色々と不満や不安を抱えているであろう父に楽しみができたことが、嬉しかった。


梅雨に入り、夏が訪れ、父の80歳の誕生日をお祝いし、そして私は、この生活から逃げた。


つづく

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