お父さんの手を離した女の子の物語☆

昔々、小さな田舎町に

女の子が暮らしていました

 

女の子はいつもお父さんの手を握っていました

 

生まれたばかりの頃はいつも

お父さんの胸に抱かれてスヤスヤ眠り

少し大きくなるとお父さんと手をつないで

それはそれは可愛がられていたのです

 

川があったら危ないよと抱き上げ

車が通る道はぎゅっと手を握って

片時もお父さんの手を離したことはありません

 

小学校に通うようになりました

お父さんとばかり遊んでいた女の子にも

友だちが出来ました



ねぇ、今日あそぼ!

うん いいよ

 

女の子はスキップで家に帰って

ランドセルを置いて遊びにいこうとしました

 

お父さんが言いました

 

危ないからダメだよ

 

お父さんと手をつないで公園に行こう

 

女の子はお父さんの言うことを聞きました

 

次の日曜日の友達との約束も

お父さんはダメだと言いました

 

子どもだけで遊んではいけないよ

危ないからね

 

やっぱり女の子は言うことを聞きました

 

友だちはだぁれも女の子を誘わなくなりました

いつも楽しそうに遊ぶみんなが羨ましくて

本当は悲しくて悲しくてたまりません

 

私もみんなと遊びたい・・

 

でも、女の子はやっぱり

お父さんの手を離してはいけないのでした

 

やがて大きくなった女の子は言いました

 

お父さん、私、もうお父さんと手繋がない

旅に出たいの

一人、うんと自由に旅に出たいの

 

お父さんはとても悲しそうな顔をしました

 

女の子はもう大きくなったのです

お父さんはわかっていました

だから、何も言いませんでした

 

女の子は旅立ちました

 

心の中で言いました

 

お父さん・・・ 私ね、

本当は私、手なんか繋ぎたくなかった

私だって、私だって みんなみたいに

いっぱい遊びたかったんだから・・

 

旅先で色んなものを見ました

新鮮で、自由で、広くて、素晴らしい

驚きがそこらじゅうにいっぱい

 

なんて自由なの

なんて素敵なのって

 

楽しくてたまらない女の子は

どんどん遠くへと旅を進めました

 

行く先々で出会うものに感動しました

 

躓くこともあったけど

その度に強くなって成長するのでした

 

そうして何年も何年も過ぎていきました

 

女の子は完全に自由でした

 

そして、ある遠くの国で

車椅子のおじいさんに出会いました

おじいさんが話してくれたのは

昔々の家族の物語

 

今は一人病気を治しているおじいさん

寂しそうでした

 

女の子は急に思い出しました

今日はお父さんの誕生日

 

指を折って数えてみなければ

お父さんの歳がわかりませんでした

 

そろそろ帰ろう

お父さんに会いに行こう

誕生日おめでとうって言いに行こう


☆ ☆ ☆


 という物語を書きたくなったのは・・

 

今日、久々の完全オフを過ごして

一人温泉行って

 

そのまま映画、海賊と呼ばれた男を観に・・

 

映画の最後のシーンで、

車椅子の主人公、

かっこいい岡田君のおじいさん姿を見て

 

急に、

わ!父の誕生日だ!

 

って思い出したから

笑 

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