秒速25センチメートルvol.2

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3

メールを通じて、ライン交換をし、久々の会話に花を咲かせる。

康寛「今何してるの?」

彼女「私、公認会計士になったの。」

康寛「すごいね。俺、会社立ち上げることになったからさ、手伝ってよ。」

彼女「いいよ」

そんなたわいのない会話を交わす二人。ふと、メールアドレスの署名に目がいく。名前は確かに彼女の本名だったが、名字が見覚えのない名字だった。

康寛「……結婚、してるんだな」

彼女「うん、3回目だよ。」

彼女への熱い想いを、完全に伝えられることもなく、付き合うこともなく別れた二人。別れてから12年間のうちに、どうやらお互いかなりの変化を遂げたようだった。

康寛「仕事の打ち合わせも兼ねて、今度飲みにでも行こうか。そうだ、みき(彼女との共通の友人であり、彼女のかつての親友)と連絡取れるからさ、3人でのみ行こうぜ」

彼女「ほんと?連絡取れるんだね。すごい。私のアドレス教えておいて。」

その時、康寛はジャズライブへ友達に誘われていたため、現地に向かっている最中であった。仕事の話や、プライベートの話をしているうち、飲みながら打ち合わせでもしようという話になった。

彼女「……今どこにいるの?今日でも良いよ。」

康寛「ごめん、今日はジャズライブみにいくんだ。よかったら一緒に来る?」

彼女「うん、邪魔じゃなければ。」

康寛「もちろん、大丈夫だよ。おいで。」

康寛「みきも誘ってみるよ。」

最寄駅で待ち合わせすることにした二人は、12年ぶりの再会へと、少しずつ歩みを進めた。ざわめく心に気づかないフリをしながら。

康寛「よお、みき。彼女と連絡が取れたぜ。会いたいって言ってるぞ。」

みき「マジかよ!行く行く!!どこ!?」

こいつ、俺がイベント誘った時は来ないくせに。現金なやつだ。

最寄駅で友人と待ち合わせて、ライブ会場へ向かう。ライブ会場はパンパンで座れそうもない。

康寛「友人、すまん。今日は大切な人と再開する、大事な日なんだ。別の店で飲みたいからパスしても良いか?」

友人「おう!良いよ良いよ。どうせパンパンで、演奏中は話せないだろうからな!」

良い奴である。

そして最寄駅へ彼女を迎えに行く康寛。胸が徐々に高鳴って来る。久々の再会。12年ぶり。顔はどんなだった?声はどんなだったか。12年も経っていると思い出せない。そして……

彼女「ひさしぶり」

その瞬間、記憶が一気になだれ込んで来る。あの時の感情。あの時の声、あの時の表情。

康寛「ははは。ひさしぶり。」

そんなつまらない再開の言葉しか、紡ぐことのできなかった康寛だった。

つづく

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大賀 康寛

フリーライター兼、イベンター

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大賀 康寛

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