入社して3週間で社長ディスったらクビになりましたvol.4

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□どうなってんの!?

サイバーエージェントへのスキルシートを、蔵人技術へ送付してから1週間。なんの音沙汰もなく焦れる大河であったが、黙々と低単価の仕事をこなしていた。

「ふ〜。連絡来ないなあ。どうなってんの!?」

カタカタ。

「さて、今日はこの辺にしてニューエイトに飲みにでも行くか。」

そう、大河は先日フラッと入ったライブハウス「ニューエイト」の常連になりつつあったのだ。お酒と美味しいご飯と、カラオケと、ドラムセットも目的であったが、一番は美人オーナー、まりさんが目当てだ。

(おっ、そうだそうだ。あいつ誘ってみようかな。)

lineにて

「はやごろちゃん(林五郎)、いいライブハウス見つけたんだけど飲み行かない?ナポリタンめっちゃ美味いよ。」

先日、池袋のジャズセッションバーにて知り合った、少ないけど林くんである。

五郎「お疲れ様です〜。良いっすよ〜。ちょうど空いてるんで〜。」

先日初めて会った時は、兵庫県から上京してきてまだ2週間。彼は、芸能事務所に所属し、レッスン漬けの毎日を送りながら、税理士事務所でバイトをしているとのことだった。

ニューエイトに到着し、お酒をくみかわす二人であった。そこへニューエイトのシェフ、PICOが加わる。

PICO「二人とも音楽やってるんだよね〜。うちのライブハウスでイベントやってみない?」

大河「いいですね!どんな感じがいいかなあ。」

五郎「今度ゆっくり打ち合わせでもしましょか〜。」

大河「そんなことよりまりさんどこ?」

こうして、イベンターとしての道も歩み始めた大河だった。が、のちにイベントで巻き起こる事件に振り回されるとは、この時は想像だにしなかった。(3回目

□ボランティアイベントと親友と

ドラムレッスンを受け始めた大河は、ドラムのコミュニティに参加しようとフェイスブックで検索をしていた。そこでtomodoというコミュニティを見つけ、参加するのであった。

大河「やっぱやるんだったら、ドラム仲間欲しいよな!」

「福祉施設でボランティアイベント!男手が一人足りません。どなたか参加しませんか」

こんな書き込みを見つけた大河。

大河「お。この日ちょうど空いてるじゃん。行ってみるか。その日空いてるので、参加しま〜すっと。」

〜当日早朝〜

大河「さーて、今日12時からイベントだったな。あれ?そういえば住所確認してなかったな。どこだろ。ふーん。小牧市ね。小牧市……?」

カタカタ……

大河「愛知県……愛知県!?」

大河の住まいは東京である。新幹線で1時間半はかかるし、往復3万近くはかかる。

大河「おいおい、マジかよ。参ったなあ。確認してなかった俺が悪いんだけど……」

一瞬断ろうという考えがよぎった大河だったが、1度言ったことを覆したくはなかった。

大河「今からだと……うん。間に合うな。……よし!行くか。」

夜にドラムレッスンと、ライブ鑑賞の予定が控えていたが、日帰りでなんとか間に合うだろうという算段で行くことを決めるのであった。

無事障害者福祉施設でのボランティアイベントを終え、帰路につく大河。主催者の人には「東京!?嘘でしょ。冗談やめてよ〜」と、最後まで信じてもらえなかった。後々、フェイスブックを確認して、信じてくれたようだ。

大河「あ〜!レッスン間に合わねえ〜!」

弾丸日帰りツアーである。観光もままならず、とんぼ返りする大河。結局レッスンに間に合わず、遅刻してしまった。

大河「ふい〜。さすがに日帰りは疲れたなあ!さて、ライブ行くか」

古宿にある、小さなバーでライブは行われていた。メインキャストは池袋のジャズセッションバーで知り合った、ジャズヴォーカリストの女性だ。24歳とは思えない、迫力ある声量の持ち主である。

大河「やっぱ生はしびれるな〜。良いねえ。」

?「お疲れっす〜!」

大河「!?はやゴロちゃんじゃないの!」

林五郎「どもども〜。」

大河「はやゴロちゃんも来る予定だったんだね。君はどこにでも顔出すな。」

しばし良質なジャズライブに耳を傾ける二人。ライブが終わり、挨拶も早々に外に出る。

大河「はやゴロちゃん、回る寿司でも食うか」

林五郎「いいね!」

大河は林五郎という人間を尊敬していた。大河は常日頃から、友情とは相手を心から尊敬できること。そしてお互いに成長できることであるという考えがあった。出会って2週間ほどしか経っていなかったが、何故か林五郎は、他人のような気がしないのであった。音楽の知識が豊富で、頭が良く、ポンポンと面白い話が出て来る。共に過ごしていて飽きないのである。ギターは上手いし、歌も上手い。ドラムもベースも弾ける。大河は林五郎という人物に惚れていた。

酒も入り、いい気分の大河はとつとつと語り始めた。

大河「はやゴロちゃん、俺ははやゴロちゃんのことすげー尊敬してるんだぜ!まだ会ってまもないけど、他人だとは思えないんだ。今まで友達に対してこんな感情を抱いたのは初めてだよ。歌は上手いし、ギターも上手いしさ!」

林五郎「タイガー、俺はそっちの趣味ないんやけど……」

大河「そういうんじゃねえって!」

後ろの貞操に危機を感じた林五郎であったが、大河の真剣な面持ちに真実を感じ取ったようだった。回転すしをつまみながら、音楽について語り合う二人。

大河「これからも仲良くしていこうぜ!」

林五郎「せやな!」

いつしかお互いにタメ口をきける仲になっていた。齢33にして親友が出来た大河であった。歳を重ねると友人づくりが難しいというが、その点大河は運が良かったのかもしれない。あるいは、できるべくしてできたのかもしれない。それは今年大河に出来た、かけがえのない関係の一つであった。

□すげえなこの景色は

蔵人技術から連絡がないことにじれていた大河だったが、ついに電話がかかって来た。時間は18時。

「大河さん、明日の朝9時古宿に来られますか?」

大河「えっ?明日?そりゃまた急な話ですね。」

「申し訳ございません。先方がすぐにでも来て欲しいとのことなので。」

大河「なるほど。わかりました大丈夫ですよ。サイバーエージェントさんですか?」

「?いえ、プアメディア社様です。」

大河「は?サイバーエージェントさんはどうなったんです?」

「ああ、ご連絡行ってませんでしたか?ダメになってしまいました」

大河「エーーー!?友達にサイバーエージェントで働くって言っちゃったよ!オーノーーー!」

「で、では明日9時に!」

大河「わかりました……。はあ。」

ガチャ

大河「プアメディア社ねえ。聞いたことねえけど。どんな会社かなあ。今金髪にしちゃってるから、どうせ面談受けても受かる確率は低いだろう。気楽に行くかあ。」

〜翌朝〜

「おはようございます」

大河「どうも初めまして。おはようございます。本日はよろしくお願い致します。面談はどちらで?」

「ご案内しますね。こちらです。」

西古宿にある、四ツ井不動産ビルの24階との事だった。

大河「うわ、結構上の方だな!いいとこにオフィス構えてんな〜。これ絶対内定無理じゃない?」

大河を含めライター候補5人が集まった。まずは集団面談を行い、それぞれ個別に面談するとのことであった。

大河「みなさん初めまして。今日はよろしくお願い致します。」

大河(俺以外はみんな普通な感じだな。金髪は俺だけだ。当たり前か。)

業務委託雇用で、最低2ヶ月はオフィスに常駐し、その後リモート業務に移行してもOKとの事だ。リモート業務とは、在宅勤務の事である。

エントランスに集合し、24階へ向かう。蔵人技術の女性営業が案内役だが、とても若い。蔵人技術自体も、若い企業のようだった。たわいもない世間話をしつつ24階へ。いざ面談。通路を通る社員たちが、大河たちへ挨拶をする。珍しい会社だ、と大河は感じた。

待機室として通された部屋がものすごい景色であった。周りが全面ガラス張りで、東京タワーが見える。飛沫町も眼下によく見えた。

大河「すげえなこの景色は。」

いわゆる小並感な大河であった。まずは集団面談だ。

別室の会議室に呼び出され、ライター陣は並んで座る。役員の男性と、若い女性の二人組が面接官のようだ。企業理念、やっている仕事、これからライター陣が行う仕事の説明を受ける。自社メディアの既存記事をリライト(書き直して)して欲しいとの事だった。更新を行う事で、グーグルのメディア評価を上げ、検索ランクを上げるのが目的のようだった。

SEOに長けた競合メディア、「CALQ」を打倒するのが目下の目標との事だ。検索ランクの1位2位は大体「CALQ」が奪取している。運営会社はかの有名な、「DaYONE」である。

大体の説明を受けた後、個別面談に移る。役員の男性と、若い女性と、大河に資料が渡される。

大河「ん?」

どうもおかしい。これはサイバーエージェント社用に書いたスキルシートではないか。中身もサイバーエージェント社向けだ。

大河「おいおい、営業さん、これまずいんじゃないの。俺はいいけど先方に失礼だよ。」

「申し訳御座いません!確認不足でした!」

ああ、先が思いやられる。

役員「あ〜、あそこね笑 別に気にしませんから大丈夫ですよ笑」

ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら、大河のスキルシートを眺める役員。

受かる気は無いので、気楽にペラペラと自己紹介をはじめる大河。先日、とてつもない緊張にさらされた経験があったからか、お茶の子さいさいであった。緊張にさらされた経緯は、また別の機会にお話ししよう。

役員「なるほどね〜。ありがとうございました。」

喋るだけ喋りきってしまったからか、先方からは特に質問がないまま、単独面談は終わった。他のライター陣が個別面談を終えるまで、例のガラス張りの部屋で雑談する。

大河「いや〜、最近面白い漫画はブルージャイアントですよ!あといぬやしきね!」

女性ライター「そうなんですか〜。読んでみます。」

そうこうしているうちに全ての面談が終わり、解散となった。

大河「みなさん、本日はお疲れ様でした。採用されたら一緒に頑張りましょうね。」

ライター陣「はい!」

面談も終わり、古宿をウロウロする大河。1時間ほどしただろうか。スマホに着電があった。

「大河様、資料の件申し訳ございませんでした。」

大河「いえいえ。」

「ところで、本日の面談はいかがでしたでしょうか?」

大河「良いんじゃないですか。オフィスも綺麗そうだったし。社員さんも挨拶してくれたし、良い雰囲気ですね。ぜひ働きたいです。」

「そうですか!それは良かった。……実は既に内定を頂いたんです。」

大河「えっ」

つづく

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大賀 康寛

フリーライター兼、イベンター

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大賀 康寛

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