貧乏こそ神 我が母まいくばあの話(第40回)

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『耳島さま物語』

このお話しは先の騒動記とは異なり、詩情豊かな農村の「少年耳を病む」の一席。しかしやはりお馴染み三人組が動けばその道中はお間抜けの顛末となる。題を「耳島さま物語」と銘してお届けします。

はるか昔、僕が小学三年生のころの、十才手前でしょうか。まさしく「シゲマサ騒動」「ブラジル騒動」と時を同じくします。
考えてみればいつもまいくばあはパワフルでした。シゲマサ改名一直線→頓挫、ブラジル移住一直線→頓挫、と突っ走っては頓挫の連続でありましたが何等へこたれる人間ではありません。
この「耳島さま物語」は別段まいくばあの猪突猛進一直線のお話ではありませんが、まいくばあとて人の親。我が子を思えばこその奮闘記、ひとつ耳汚しとしてお聞き下さい。

小学三年生のころ、僕は左耳が聴こえにくくなった。何か圧迫感のようなものがあったのです。昔の田舎のこと、町の病院に行くにはバスで三時間弱かかり、あれやこれやで一日仕事となる。痛むわけではないので急を要しないが、子どものために今できる何らかの手をうたなきゃならん。
母は例の一直線アタマをフル回転させて考えた。その結果は実に単純なこと。「そーだ、なんかいい方法がないか、誰かに聞いてみよう!」というもの。分からないことはあちこちで分かる人に聞いて回るという、実に基本的な問題解決の手法でありました。而して、知人の老婆アドバイスに行き当たったわけです。

曰く、「耳島さま」なる摩訶不思議な場所がある。そこにお参りすれば霊験あらたかなるべしと。詳しく聞けば「O川を奥深く遡れば川の中州のところに小ぶりの岩が鎮座ましましておられる。そこにな、小石をひとつお供えするのじゃ。その小石はな、きれいな丸い石でなければならん。その石の真ん中に穴をうがつのじゃ、開けるのじゃよ。強く穴を開けようとすれば割れてしまう。五寸くぎで丁寧に掘るのじゃ」と聞いてきたのであります。

さっそく母は川原に下りて頃合いの良い石を探して参りました。今でも覚えておりますとも。五センチ×七センチくらいの平べったい楕円形。厚さは一センチとすこし。少し灰色がかった白にほんの微少青みと黄味を帯びて、かすかな斑点が満遍なく散りばめられている。川原ではよくある色の石ですがその形状がなかなかスグレモノ。正しい楕円形はなかなかないものです。そのつるっとした形状は川原にて何万年も磨かれ続けた銘石の風情。よし、これだと見つけてきた母親の愛情ってやつでございます。 

(次号に続く)

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前沢 しんじ

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