⑤行き着いた場所…

次話: 行き着いた場所…④

特養の朝は、夜勤スタッフの申し送りから…昨夜の出来事、注意する事などなど…にしても皆さんかなりお疲れな様子だった

まだバリ元気な、2~3日徹夜したって…な20代のスタッフが、目の下にクマ作ってヘロヘロ~…(>_<)

私が着いた時も、廊下の長イスに、チェックボードを抱えたまま、死んだ様に眠る男性スタッフが…とにかく人が足りなくて、ひとりひとりの負担が相当みたいだった…

気持ちに余裕などないのが、見てとれた…

今はだいぶ改善されたのかなぁ?


朝の歯磨きタイム…

入れ歯の方が殆どで、入れ歯洗いになった私は、初めて見る入れ歯に…?なんと歯の後ろにシールが貼ってあって、それぞれの名前が書いてある…

口に入れるものなのに…でも、どれが誰のかわからなくなったら、それこそ大騒動だが

全て洗い終わった入れ歯を、トレーに乗せると、女性スタッフの後を…ここでも出ましたぁ~鼻つまみ!!

鼻つまむ→口あく→パカッと入れる→鼻つまみ→口あく…バカッ…凄い早業で、入れ歯は消えて行った…

そう、ここでは悲しいかな人の尊厳って…言ってられないの?…


働いてるスタッフだって、働き出した時は、色々な夢、描いていた介護の姿…違ってたと思う…でも現実はあまりに余裕がなさすぎ…


おやつの時間にお話した、品の良い優しげな方はもう一年以上、ご家族の誰一人、面会に来ないそうだ…

でも玄関に一番近いテーブルで、いつもお茶を飲み、絶えず出入口を見て過ごしておられるらしい…

『じゃ、又あとで~』とひと回りして戻ったら、『あら、初めまして~』と言われてしまった…10プンデ、ワスレラレタ、ワタシ…

長生き……

考えてしまう、切ない2日間だった…



私の勤務していたティーサービスは、昼食をスタッフ、利用者さん入り交じって、テーブルを寄せ集めて食べる…そう保育園の様な感じ…

少し遅れて行った私は、他のスタッフがセッティングしてくれた給食がある、唯一空いてる席に座った…

席は皆様、その日の気分でお好きな所…

とは言っても、絶対ココと決められている方もいて…他の方がそこに座ってしまって大騒動~なんて事も…

しかし日によってメンバー、人数も違うので…

その日、私のお隣に座っているのは、Nさん…シャキシャキした方で、よく私達のお手伝いをして下さり、椅子移動の時なども、他の利用者さんのお世話もして下さる(^^)

そして、声をひそめて『さっき、○藤のおじいちゃん、耳垢そこのテーブルに付けたわよ!』…などと報告して下さる…

来る途中の桜が綺麗だったと、話していたと思ったら突然、顔をしかめて私の耳元で囁いた…

『今日は色んな顔があったわね…』

私…?顔?

『ホラ、小さな女の子に、金髪の外国人、おばぁさんも…』ますます声をひそめて…

私…?すると

『ほら!コレ!』

私の皿にのっている肉ダンゴを、意味ありげに指差した…………

ウゲッ!…

顔?私までなんだか顔に見えてきた?…さっき一口食べた肉ダンゴが…喉に上がってきたよ~な…カンベンシテクダサイヨ~┏(; ̄▽ ̄)┛


その日『ぐぅ~!』と空腹を訴える腹をなだめながら、利用者さんのオヤツ準備をするわたし…

ひゃー旨そうな『みたらし団子チャン』♪

もう~!Nさんの分、喰っちゃうぞぅ~!

エッ?…マタ カオ?…

つづく

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行き着いた場所…④

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