フィリピンで警察に捕まって帰れなくなった日本人の話パートⅣ

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「さてと・・・警察に行こうか?」







真正面の席についた部長は詐欺師達に威圧するような低い声で声をかけました。


「どっちが悪者かしっかり警察に行って調べてもらおう。」


それが部長の決まり手でした。


部長は国内にある小さな製作会社の2代目、食品加工に使うバキュームの機械や自動でラップやパッケージをする機械の製作を主としており、小さいとはいえ、海外とも取引をしていたそうです。

アメリカに留学経験のある語学力は本人自らアメリカやヨーロッパなど交渉のテーブルに付く事も多くそれなりに英語の交渉には長けていたようでした。

いくら本物の警察官を連れてきたとはいえ、彼らのやっている行為は完全な詐欺行為。警察署に行くぞと脅せば、簡単に身を引くと思ってたそうです。



こんな簡単な事早めに終わらせよう。今日は唯一の自由行動だ、家族にお土産でも買いに出かけよう。そんな思いで奴らを一蹴したかったそうです。


「OK,わかった。それじゃ警察に行こう。そっちの若い男は悪い日本人だ。一生刑務所に入ってもらおう」


男は「かかった」とばかりに余裕の笑みを浮かべながら一緒に来た警察官にパトカーを呼ぶように指示を出しました。

カビテという町にある小さな警察署に連行されたアロハ君と部長はすこし緊張はしていました。しかし、本人は無実。その無実さえ確認できればすぐにでも釈放してもらえるものだと思っていました。



「じゃ、これ被害届け、確認して欲しい」詐欺師と一緒にホテルに来た警察官はそういいながら一枚の紙を手渡したそうです。


ペラペラの一枚の紙にたった数行の文字とポリスのサイン。どんなにタイプライターの下手な人間でも3分もあれば作れてしまうようなとても簡易的な被害届だったそうです。しかし、その内容は「未成年者にたいするレイプ」と書かれていたそうです。





「レイプ?ひろしはレイプなどしていない、だからこれは認められない」






アロハ君は保身のため、部長には何もしていないといったそうです。それを信用して部長も強気の態度をとったようでした。


「そうですか、それではそれを取り調べなければいけないので、彼を拘束します。いいですね」


「ちょっと待て、警察署長と話がしたい。署長を呼んでくれ」


「残念だが、署長は今日はお休みです。明日にしてください」


本物の警察官であるならこの不正を署長に話せばすぐに解決出来る。部長は取調べを他の警察官に変わるように訴えたかったようです。

しかし、なにせ、ここはフィリピン、何をするにも時間がかかる。書類を受理されるのがとてつもなく遅い。部長は次第に苛立ちを抑えきれずにいたそうです。


簡易の留置場に入れられたアロハ君はその場所で一晩明かしたそうです。部長はホテルに戻り仲間に事情を説明しました。



「明日はみんなと一緒に帰れないかもしれない。昼までに帰ってこなければ一足先にみんなで日本に帰ってくれ。ひろしと私はマニラに残るので後のこと宜しくお願いします。」



翌朝、日本に帰る仲間をホテルで見送り部長一人で警察署に向かったそうです。


「署長は来てるかな?署長と直接話をしたい」


「署長はまだ来ていません」


「いつになったらくるんだ?」


「もうすぐきますよ」



「俺たちは悪徳警察官に詐欺にあってるんだ、だから担当者を変えてくれ。他の警察官と話がしたい。」


「署長の指示を待たないと担当者の変更は出来ません。」



フィリピン人の「もうすぐ」がとにかく当てにならない事は薄々わかっていました。ただ、この視察旅行の為に何とかやりくりして5日も仕事を休み、帰国してからはその分山のような仕事が溜まっている。


そのうちそのうち悠長な事はいってられない焦りを感じていたそうです。



そんなやり取りをしている時に一人の日本人が警察署に入ってきました。


年は部長と同じくらい、白のポロシャツにジャケット、胸には写真入のIDみたいなものが見えたといいます。






「こんにちは、商工会の部長さんってあなたですか?」




「マニラの警察署から来ました。困っている日本人がいるから手助けをするようにといわれました」

今後の対応策に苦慮した矢先の出来事でした。


「いや~、助かりました!なんせこの人たち書類ひとつ通すのにも時間がかかって困ってたんです」


「それは大変でしたね。でも大丈夫、私は国際弁護士の資格も持っています。マニラの市長とも友達です。」


やっと、救世主が現れた。すぐに帰れるかもしれない。


「それはありがとうございます。今からでも釈放して帰して頂けますか?」

事の成り行きを一通り話を聞いて何度も大きくうなずき男は部長に落ち着くように促しました。



「それは大変でしたね。でも大丈夫、私が無実だと証明します。すぐに手続きを始めますので安心して待っていてください。」

そう、男が言い残し男はマニラへと戻っていきました。



昼過ぎに男がマニラから戻ってきました。すでに仲間は出国した時間でした。仲間と一緒には帰れませんでしたが、何とか午後の便で日本へ帰れるかも知れない。



マニラ警察から来たという男はそんな答えを持ち合わせたような晴れ晴れした表情は部長の安堵を誘ったといいます。



「根回しをしてきました。すぐに釈放されて日本に帰れますよ」



「ありがとうございます!助かりました!」

喜ぶ部長とアロハ君をよそに少し意味ありげに目線を落としながら


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