上っ面の改善では何を解決するのか

聞いた話によれば、その会社はもう何十年も前から企業体質が変わっていないそうだ。現場からいくら改善案を出しても、事務方の人間がことごとく提案をつぶし、社は低迷状態を続けているのだという。この残念な状態が長らく続いてしまっていたため、中にいる人間は熱意が次第になくなり腐り果ててしまったと、口を揃える。


私がその会社にいたときに社内各部署の人間からよくこの話を聞いた。


入り始めてすぐの時にはこの問題には気がつかなかった。事務方は日々改善に努力を重ねているし、行動に遅さは感じられたものの改善を実行に移していた。現場の人が言うほどではないと思うのだが、なぜあんな風に言うのだろう?ただたんに嫌味で言っているだけなのだろうか?そう思うほどだった。


しかし、社内を歩き回っていると至るところから同様の話が湧き出てくる。この時から何か問題があるのだろうと思うようになっていた。


だが、決定的な問題点というものを発見することはできなかった。


その頃から違和感のようなものを感じ始めていた。言葉には言い表すことが出来ない何かが社内をはびこっていたのだ。


一体何が?


何が悪いのかはわからないが、何かが悪いのであることは確かだった。


一見問題はなさそうに見える。問題に対して取り組んでいるし、話し合いも行われている。それなのに、なぜこうなっているのだろうか。考えを巡らせても答えは見つからないままであった。


ただ、改善行動を行っているはずなのに社内に何も変化が起きないことは確かだった。


この問題点を探るべく、私は調査を続けた。



ある時、私は現場のベテラン社員とじっくり話ができる機会に恵まれた。そのベテラン社員の話と自分の考えを照らし合わせていくと、問題となっている箇所がだんだんと炙り出始めてきた。


現場からは働き方の環境を変えて欲しい、品質向上のために新たなツールが欲しい、顧客満足度向上を目指したいといった内容の具体案を提示していた。それに対し、事務方が行なっていたのは利益確保に的を絞った内容ばかりだった。


利益に直結する営業部門の人間には熱い待遇だが、それ以外で活動している部署に対しては冷ややかな待遇となっていたのだ。そればかりか利益のために、他部門から提案されたものに関してはコストカットを前提とした妥協案で突き返すことがほとんどであった。


例えば、二人で活用している共有スペースがいっぱいになった時、改善案としてスペースの増加や原因となっているものの削減が考えられる。だが、ここで出した策は一人の共有スペースを広げるためにあまり使用頻度の高くないもう一人のスペースを削減するというやり方だった。


これでは、一人は納得したとしてももう片方の不満は増加するだけである。この策では何の問題も解決していない。本来であれば、投資を惜しまず先ほど例に挙げた策を打ち出さなくてはならないのである。


このようなことばかりが社のあちこちではびこっている。


そのため、本来であれば解決できるであろう問題も取って付けたような見た目を良くするだけの解決策のおかげで何も解決していなかった。これが行動を起こしているのに何も変わらない原因であった。


薬だけを処方し、いつまで経っても持病が治らない患者と同様だ。いくら良い薬を処方したところで根本から改善をしていかなくては病気の本当の完治とは言えない。再発を繰り返してはその場しのぎの薬を処方するのでは、良くなることはほとんどないだろう。


ビジネスでも同様、問題にとって本当に役に立つ解決策をひねり出さなくては、何度付け焼き刃をつけたところで役に立たない。大事なのは本質だ。


改善をやっている風ではいけない。どんなにやっている人にとって都合の良いことでも問題が解決していないのであれば、価値がないのである。


本当の問題箇所を特定し、根本から変えていける本質の改善策を生み出してこそはじめて価値が出てくるというものだ。


妥協案、その場しのぎ、これらはやるだけ浪費になってしまうのでやらないようにしなくてはならない。もう一度言うが大切なことは本質だ。



そして、なんと驚いたことに営業部門の改善に力を入れていたにも関わらず、そちらでもめぼしい成果は見られなかったのである。蓋を開けてみると、そちらも表面的に良く見えるところのみ改善し、本当にやらなければならない問題の解決策を考えていなかったのだ。これでは、本末転倒もいいところであろう。



いくら問題を解決しようと表面的な取り揃えても意味がない。顧客や従業員にとって本当に必要なこと。問題の奥底にあるものを解決させよう。



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