腹痛授業

高校3年の僕は「授業中にトイレに行きたくなる」という悩みに苦しんだ。

ある日の授業中、お腹が痛くなった。

先生に断ってトイレに行こうとしたが、先生は英語の問題を解説をしていて、僕は手を挙げるタイミングに困った。

結局解説が終わり、先生が黒板を消し終わるまで僕は挙手することが出来なかった。

その時はすでに腹痛を感じてから15分後ぐらい経っていた。


地獄はその次の日から始まった、前日の腹痛、そして先生にトイレに行きたい旨をなかなか言い出せなかったことが僕をこの上なく不安にさせた。

ましてや今日もトイレに行ったら先生やクラスメイトから、またトイレに行くのかと思われるに違いない、だから今日は絶対にトイレに行けないのだ。

だが、トイレに行けないと思うと、トイレに行きたくなってくるのだ。

だんだん授業の内容が頭に入ってこなくなってきた。

脇はじんわりと汗をかき、呼吸も乱れてきた。

もはや先生の声など聞こえていなかった。

「うんこしたい!」

僕は心の中で叫んだ。

このままでは漏らしてしまうと思った僕は勇気を出して手を挙げて先生に許可を取った。先生もクラスメイトも、また?と言いたそうな顔をしていた。

教室を出て真っ先にトイレに向かい、便座に腰を下ろした。

僕は安心して排便を試みた。

しかし、便は一向に顔を出さない。

何故だ?

僕は全身に力を込め、身体を震わせた。

出ない。

10分が過ぎた。

出ない。

また10分が過ぎた。

出ない。出ない。

何だ、お腹痛くなかったのか。

僕はそう思って教室に戻った。

教室のドアを開ける音に教室中のクラスメイトが首だけで後ろを向き、僕を確認して、再び前を向きなおした。

僕は席に着いた、その瞬間、僕は僕自身を疑った。

うんこがしたいのだ。

さっきあれだけ出てこなかったのに、何故だ、何故今なのだ。

だが、たった今帰ってきたのに、またトイレに行くなど言えるわけが無い。

僕は必死に耐えた。

時計を睨み続けた。

時間が経つのは、こんなにも遅かっただろうか?

お尻にはビッシリと汗をかいている。

あと5分あと5分。

そのあと5分がとてつもなく長い。

なんとか便意に耐え、チャイムが鳴ると同時に僕はトイレに駆け込んだ。

便座に座る前には気付いていたが、一応座った、便を出そうとした。

やはりそうだ、出ない。

きっと僕は授業中、もし便意を感じても、簡単にトイレに行けないという緊張感により便意を感じていたのだ、そのために、その緊張感から解き放たれたら便意は無くなるのだ。

どうすれば良いのだ、どうすれば授業中に便意を感じるかも知れないという緊張感を感じないで済むことが出来るだろうか。

それを解決しなければ卒業するまで授業中に便意を感じ続けることだろう。

僕はすぐにその解決法を見つけた。

先生やクラスメイトに自分は授業中に便意を感じるかも知れないが許可を取ることを躊躇してしまう緊張感により便意を感じてしまう、だから何回もトイレに行く許可を先生に取るかも知れない。

ということを素直に伝えれば許可を取ることへの緊張感は無くなると思った。

これで安心してトイレに行けると思った。


まず、休み時間にクラスメイトに知らせようと思った。

休み時間の教室を見渡すと、お喋りを楽しんでいる人、勉強している人、机に突っ伏している人がいる。

まず、それらを中断させて僕に注目させねばならない。

だが、「みんな聞いてー!」と言うタイミングも声量もトーンも分からない。

でも言わなきゃ、言わなきゃ次の授業もトイレに行きたくなる。

でも言えない、どうやって言い出せばいいのだ?



あぁ、お腹が痛い。

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