志賀高原物語2 ホテルの初日がとんでもないことに!

なんとかOPENを迎えたホテルの初日の朝のロビーが、、

スキー場で店をやるはずが突然ホテルまで任されてしまって、なんとか漕ぎ着けたOPEN初日の朝フロントの扉を開けると、ロビーはとんでもないことになっていた。


人が溢れていた。


普通に入れば300人くらいは入るロビーが入りきれなくてホテルの外まで人がいる。どう考えても400人以上はいそう。とりあえず予約台帳を確認しながら荷物を預かり始めるが予約台帳に記載されてないお客が多数いる。もしかしてダブルブッキング?台帳に記入のないお客様は電話で予約して予約金は書留で送ったのこと、まだネット予約などがない時代でかつ銀行が山を降りないとならないのもあって個人の申し込みは基本書留で予約金を送るのが当たり前の時代だった。調べてもその情報はなく、予約担当も真っ青な顔をしている。計算すると70ルーム近いオーバーブッキング。ほぼこのホテル一軒分。

とにかくお客の荷物を預かりみなさんゲレンデに出てもらう。その間になんとかするしかない!

そこですぐにゲレンデに出かけないというお客様に詳しく話を聞くことができた。

そのお客様は半年以上前からこの宿泊を決めていて、その時点で予約をし予約金を送ったとのこと。

しかし予約台帳は真っ白だった、だから部屋を埋めるべく方々営業して宣伝をしてきたのだ。

後日わかったことだが真相はこうだった、解雇された前の支配人が予約金を着服していたのだ。

予約台帳に記入するとバレるので当然予約台帳は真っ白。僕らは本当は予約で埋まっていた台帳を一所懸命埋めていたのだった。


さてどうする。

夕方にはお客はスキーから戻ってくる。

そこからが怒涛の作業だった。


総出で近所のホテルを片っ端から当たって空き部屋を探した、一升瓶を抱えて歩き、お土産として渡しながらなんとか一部屋でもいいので部屋をくださいとお願いして回った。だが当然うちが満室なくらいなのでどこもほぼ満室状態。前回書いたが外見ホテルでも中身民宿というだけあって、人の部屋を経由して入る奥の部屋などがあり、そこでもいいので売ってくれと頼み込んだ。志賀のホテルほとんどに話して、さらには山を降りた湯田中温泉の宿にまでお願いして、100件近いホテルを回っただろうか、相部屋含めてなんとか部屋を確保していった。

時間は午後4時まだ5ルーム足りない。。。

予約台帳を広げテトリスのように部屋割りをしていたがどうしても5ルーム足りない。。

どうする、、帰っていただくか、、、

するとYが台帳を見ながら「あ、このお客俺の隣の中学だ。」と呑気なことを言い出す。

「ん?」

二人で顔を見合わして

「それしかない!」

端から住所と年齢をチェックして少しでも自分たちに近いお客を探した。


夕方になり客がゲレンデから帰ってくる。

ロビーはチェックインのお客様で溢れて出す。

みんなスキーを満喫してさあ風呂に入ってメシだ!という楽しげな雰囲気。

そのお客様に僕らは注げなくてならない。


「宿が変わります。」


こちらの手違いで大変申し訳ありませんと謝罪しながら、一組づつ別のホテルに送迎していく。

と、ここで書くほど簡単に納得はしてもらえなかったがそこは思い出したくないので、、、いつか。

近所のホテルはまだまし、何しろ一番遠いお客は山を降りた温泉宿まで40分以上かけて送迎しなくてはならない。その40分の車内の雰囲気が地獄、、、。


そしてここから足りない5ルームのお客。

一組一組を呼んで謝罪する係と横で話しかける係に分かれる。

「お客さん〇〇から来られたんですね。もしかして××中学ですか?□□って知ってます?」

題して「友達作戦」

先輩やら後輩やらちょっとでも共通点を見つけて共通の友人知人を話のなかで見つけ、友達の友達はみんな友達の要領で友達になってしまう作戦。

そして友達になったところで、申し訳ないけど、、、とリネン室や従業員部屋に泊まっていただく、、

今考えてもよくこんなことが通用したなぁと思う作戦だったが、その時代はクレーマーもそんなにいなくて、おおらかないい時代で宿代タダになるならそれでもラッキーみたいに思ってくれる若者が多かったのか、なんとか(あんまりなんとかなってないけど)全部の客を収めることができた。心も体もボロボロ。

スキーはだいたい2泊から3泊するので、それ以降のこちらが把握している客にはすぐ連絡を入れて事情を説明しキャンセルもしくは別のホテルをご紹介する作業を並行進めるのだが、難しいのがこちらの知らない予約がどのくらい入っているのかが全くわからないところで、全部断ると全く客が来ない日もあったりして最初の3週間は気が気でない日々を過ごした、、。

僕らがやってるからと遊びに来てくれた友人知人は全員強制的にリネン室か従業員部屋に泊まらせられたこと、未だに酒の肴にされている。


この仕事を受けたことを後悔しそうになった初日が終わった。


ホテルにはそれ以外の業務もありDISCOとBARと居酒屋、お土産屋を作っていたので、それぞれの店も回していかなくてならないのだが、最初はほぼ仲間とスタッフに任せっきりの状態だった。

何しろその年の12月から3月までのの4ヶ月は、毎日1時間半睡眠で働き続けるという過酷な時間を過ごして、ちょっとやそっとのことではパニックにならないくらいに鍛えられた冬だったのだから。

当然それだけのパニック状態で毎日が過ぎていくので、スタッフのケアもままならず、各自に溜まっていくちょっとしたしこりが大きくなって、男女の問題など様々な事件が発生するのだが、、、、

それはまたいつか。

登場人物は アル中のシェフ 長野のヤンキー見習い料理人 包丁を振り回す板さん 客に手を出す居酒屋店長 監獄のような高校の修学旅行付き添い教師 関西人クレーマー たまたま来た中学の時の先生 エロい会計担当のおじいさん お土産屋の万引き犯 などなど 

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