和をもって尊しと成す⑷

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こんなこともありました。

リコーダーの穴を塞いできれいな音を出すことは至難の技だったT恵に毎日毎日、リコーダーの宿題が出るのです。

はじめの頃は親子で真面目に課題に取り組んでいましたが、如何せんT恵の能力と課題のあいだに開きがあり過ぎました。目標はちょっと頑張ったらできるというところにおかないと上手くいきません。

何度かお話して、簡単な課題に変えてもらったのですが、一つの音を出すだけでも手先の不器用なT恵にとっては難しいのです。

その時点では指なしで音を出すだけならできるという段階でした。

でもどうしても、私たち親子の苦しみである「リコーダーの穴を塞いで音を出す宿題」は出続けるのです。

(学校というところはそれをするところなので仕方ないですが)

わたしはそのうち、この事について学校と話し合うことを諦めてしまいました。

リコーダーを見ただけで苛立ち、床に叩きつけ、二回ほど割って壊してしまったT恵に、わたしはリコーダーの宿題をさせるのをやめようと思いました。

連絡帳の文を読むと、日に日にK子先生の苛立ちが高まっていくのを感じます。

「今日は練習させてください。Tちゃんに聞きましたがやってないと言っています。」などなど。

でも私はやりましたというハンコだけ押してスルー………。

明日、リコーダーのテストだという日に

「今日こそはもういいかげんにちゃんと練習させてください。テストはペアでするので相手もあることですし…」

と書かれていました。

今思えばリコーダーのことがこじれてしまった時点でK子先生と意見の相違を怖れずに話し合い、T恵にとって何がいちばん大切なのか模索するべきであったのです。

争いを避けて流すのではなく、逆に考え方の違いから、敵対して相手を批判的に見るのでもなく、お互いの思いを聞きあい、共通する思いを確認し合い、ベターな方法を探すべきだったのです。

(後に作業療法で穴を塞ぎやすくするための低反発のシールを教えていただいたのですが、そのような情報もなかなか入ってこないのが普通の小学校の現場の状況なのです。)

もともとの性格もあり、夫が教育関係で、小学校のほとんどの先生が知り合いだということもあり、私には先生方にとって「やりにくいお母さん」になることを避け、いいお母さんになってしまうところがありました。

「ちょっと知識のあるお母さんがいろいろ言ってくるとやりにくくなって結局子供にしわ寄せがいくことがある」ということを以前に何かで読んだせいもあり、遠慮してしまい、自分の考えを先生方に上手く伝えることの訓練が出来ていなかったのだと思います。

そのせいで、自分のキャパシティを超えることを、自分ひとりで背負っている気持ちになり、そこにまた、下二人の娘たちのハンディのぶんも重なって、負担が大きくなり、数年後精神的に参ってしまったのですが……。

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