大好きなままへ

 わたしは小さい頃からいつもままの働く仕事をみて育ってきた。
 たぶん、ままはわたしのために一生懸命働いて育ててくれた、はずなのに、わたしは出来の悪い子に育ってしまった。ままに性格が似ることはなかった。ままは、潔癖症に近いと思う程のきれい好き、1分単位で行動し、いつもひとのために動いていた。わたしは、いつも人に甘えて生きてきた。まわりの人の優しさに、ただ甘えて努力することなく、自由に毎日を過ごした。

 ままは、勉強しろとも一度も言ったことはなく、家にいなくていいから遊びに行きなさいと、お金を何度も私に渡してくれた。服やものをいつもかわいいものを選んで、部屋に置いてくれていた。気づけば、家に帰らず、ただ遊びにいくだけの生活。家の手伝いをすることもなく、ままの体調を気遣うどころか、挨拶すらなくなった。そして、話すことをしなくなった、というか話し方が分からなかった。
きっと、それはままも同じ。
いつも、母の日やままの誕生日には置き手紙と花だけは黙っておいていた。
 会話もなく、ごはんを一緒に食べたことがなくても、それでもわたしとままは心だけは近いような気がしていた。
 高校の時は、毎日戦争で喧嘩が唯一の関わりだった。ままを突き飛ばし、ものが家中飛び交う日々。勉強だけは苦労したことがないから、成績だけだし、文句ないでしょの態度で反抗した。約束だって守ったこともなく、ゆうことひとつ聞いたことはない。
 それでもままは、絶対に私を見捨てないと思っていたから。
 わたしにはまましかいないし、ままも私しかいないと思っていたから。でもそんな考え方は、ままを精神的に困らせるだけのものでしかなかった。
 大学進学もする気はなかったけど、ままが行きなさいと言った、だから行った。ままがいけっでゆうから進学したのに、文句ばっかりゆうなって思ってた。だから、大学に入った頃には冷戦になり、顔をあわせることをお互い避けるようになった。
 心の中ではいつもままのことばかり考えているはずなのに、いつしかもうままのことが分からなくなって、いつも人のせいにするだけの生活。娘の自慢のひとつふたつあったら、ままは救われたかもしれない。
 わたしも夢をみられなかった。それは、ただただ、悲しみに浸るだけだったから。家庭はいつも複雑で、全員ばらばらだった。ままは昔から1人でなんでもやってきた。わたしの双子の弟は重度の障害をもち、施設で暮らしていたから、5歳の時には、離れ離れで再会したのは10年の時が経ってから。20になるまでパパの顔も覚えていなかった。だから、わたしはこうゆう性格なんだってひねくれてた。
 けど、実際は違うんだって気づいた時にはもうままとの関係はそんな簡単に修復できない。わたしは家をでることにした。それは、ままを見捨てることにさえ感じたけど、ままはそんなこと思ってもない。自立して、ままみたいにはなるな。といつも言った。ままは私の幸せを一番に願ってくれてる。だから、決めた、もう人に甘えてばっかりじゃだめだって、ちゃんとままが困った時に助けてあげられる人間になりたいって思った。ままはずっと1人で、誰かに頼ることが嫌い、とゆうか、頼れなかったんだと思う。私が協力してあげないといけないのに、わたしがままにしてあげれたことはなにもなかった。それが現実。ごめんね。感謝の気持ちと同時に後悔しかなかった。
 あとわたしがこの家にいるうちに出来ることはなにもない。だから、最後に手紙を書いた。
 「大好きなままへ
 無事、卒業できたのは、ままのおかげです。今までありがとう。今までままの決まった時間に仕事に行く姿、真面目で、誰に対しても優しい姿をみて育ってきたはずなのに、迷惑と心配ばかりかけてごめんなさい。いつもかわいい服をくれて、わたしのためになんでもしてくれた。それなのに、わたしはいっつもかわいくなかったね。でも本当はままがだいすきで、もっと色んな話ししたかった。自慢の娘になりたかった。
 本当にばかでごめんね。私はまだ、ままみたいに強くは生きられないけど、これから頑張るよ。聞き飽きたかもしれないけど、自分を信じて頑張ります。いつも人のために、自分よりも人のことを思えるままみたいになります。ままと一緒にいるうちに、わたしがままのためにしてあげれたことはなにひとつないけど、ままがいたから、今のわたしがあります。産んで育ててくれてありがとう。  
 自分の夢もしたいことも全部犠牲にして私を選んでくれてありがとう。わたしも、ままに幸せになってほしい。弟だって、同じこと思ってるよ。わたしは双子だから分かる。わたしと弟の幸せだって、ままが幸せになることです。ままを幸せにしてくれるひとを選んでね。まま、本当にありがとう。」
 いつか笑ってままと話せる時間を過ごす夢を実現するために。今からやらないといけないことは沢山あると思う。

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