それはそれでしかない

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7

第一志望の大学に受かった。


1年浪人した上の合格だった。





受かったことが信じられなかった。


合格表を何度も見返した。


予備校の寮に帰って夜になってから


やっとじわじわと感じ始めた。


俺、受かったんだ。




急に生活が変わり始めた。


大学に入学の書類を出して


予備校に退出手続きをして


新しい下宿を決めて


引越の手続きをして


教科書を大量に買って


ガイダンスに出て


サークル勧誘をくぐり抜けて


歓迎コンパを緊張しながら受けた。





そうしたら、いつの間にか大学生になってた。


あれ、大学生ってこんなあっさりしたものだったっけ。


日常のみんなは俺と同じ大学生。


大学に通うのが普通の日常になった。




大学に受かるってもっとすごいことだと思ってた。


喜びや幸せがもっと溢れ出るものだと思ってた。


こんなものだっけ。


ふうん、こんなものなのか。


何だ、こんなものなんだ。











最終面接に落ちた。


一度社会から滑り落ちて、再起をかけた面接だった。





それまでの筆記の成績は出来過ぎぐらい良かった。


落ちたのは僕を含めて2人だけ。


しかも、そのうちの1人は本命がすでに受かってるようだった。




建物を出た後、すぐにカバンから電話リストを出した。


まだ、決まってないところがあるかもしれない。


電話をかける、もう終わってる。


もうひとつ電話をかける、ダメ。




秋の風に電話リストが飛びそうになった。


思わず、地面に肘をついて、紙を押さえた。


リクルートスーツ姿がうずくまった。


駅前のバス停のそばだった。






視界の端に、さっき僕に不合格を告げた面接官が見えてきた。


後に合格した人たちが続いてた。


おそらく彼らは昼食にでも出かけているのだろう。


恥ずかしさにとっさに顔を別の方向に傾けた。




紙を必死に抑えて顔を明後日に向けたスーツ姿の男が


晴れやかに歩いて行く集団とすれ違った。


その瞬間、僕の頭は真っ白になった。




僕は気がつくとその光景を見ていた。


まるで映画館のスクリーンの前にいるようだった。


そこには僕と集団がいるシーンが映されていた。





僕は笑っていた。


こんなベタにひどいシーンってあるだろうか。


こんな典型的に恥ずかしい奴っているんだな。


自分のことなんだけど、不思議に冷静になっている自分がいた。




先が見えないってもっと怖いものだと思ってた。


不安や苦しさに自分が壊されるような気がしてた。


こんなものだっけ。


ふうん、こんなものなのか。


何だ、こんなものなんだ。







それはそれでしかない。


あんなものも。


あんなことも。

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