ファイナンス入門 (25) 投信の何が問題になっているのか?

最近の日経新聞での投信の不信に関するニュースが話題を呼ぶと共に業界に暗い影を投げかけている。

投信とは、投資信託のこと。

多くの投資家から集めたお金を元に運用の専門家が債権や株式等に投資、運用する商品で、通常、運用の方針や目標にする株価指数などを示して投資家を募る。

古くはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のエマージング市場をテーマにした物や、ゲノム、バイオをテーマにした投信や日経225に連動した投信がある。

大体、現在日本で幾つの投信が発行されているのか。

一般の投資家が購入できる投信は「公募型」と呼ばれ、2017年3月末で約6,000ある。

金融庁の資料によると一本当たりの純資産額は110億円と、アメリカに比べると一桁小さい。

その上、半分以上の純資産額は20億円未満。

この規模の小ささが、運用方針に基づいた投信を困難にしたり、どんなに小さな投信でも決算、報告などの管理が必要になることによるコスト高に結びついていく。

ちなみに先の金融庁の調査による日米の規模の大きい投信の比較では、日本の大規模投信の平均規模は1.1兆円で平均販売手数料率3.2%、平均信託報酬年間1.53%に対して、アメリカの大規模投信の平均規模は22.6兆円、平均販売手数料は0.59%、平均信託報酬年間0.28%と大きな差となっている。


一時期、銀行がこぞって投信の販売に走ったが、ここには系列の問題がある。

上述の規模や手数料等、お客様の利益に一番叶う商品を販売するというよりも、系列の投資運用業者の投信を販売することが多く、その比率は銀行 、証券会社では半分を超えている状況。競合グループの商品は販売もしていない。

この様な背景がある為か銀行による投信の販売は伸び悩んでいる。

規模が小さくなった投信は解散され償還されるし、解約も存在している一方で、伸び悩んではいるものの一定の残高が保たれているという事は、銀行による回転売買が推し進められている可能性がある。

本来、 長期に保有してこそ意味のある投資が銀行の手数料目的で短期の投資になっているとしたら、本来の期待された収益は望みようがない。


もう一つ、日本の投信の特徴として「毎月分配型」と呼ばれるものの比率が極めて高くなっている事だ。本来、投信の分配金は運用収益から費用を引いたものとなるはずだが、毎月分配型は運用収益の大きさに関わらず毎月一定の分配金を支払うというもの。

そんな魔法の様な事がどうして出来るのか。実は魔法でも何でも無く収益が無い、又は足りない場合、投資家が購入時に払込んだ元本を取り崩しているだけ。タコが自分の脚を食べる様なもの。

そもそも収益がある場合でも本来、その収益を更に投資に向ける事で複利で運用する事が期待されるのが投信。毎月分配型はこのメリットを放棄していることになる。

先の日経新聞の記事でこの毎月分配型の投信を保有している人の話として、「毎月一定の金額が入ることによる安心感」や「精神安定剤」みたいなものとの購入動機の説明があったが、それならば手数料の掛らない預金として取り崩していくことや、年金商品との比較を行なっていく必要があるだろう。

今回の日経新聞の記事の契機になったのは、実は金融庁の森長官が4月に自身も会員である日本証券アナリスト協会の講演会での投資家の利益を顧みない投信運用、販売会社への批判的なコメントだった。

会場にいた出席者の多くは、その金融業界の人間。

彼らに長官の声が届いた事を祈るとともに、我々投資家自身も商品の特性、リスクを理解していく必要があるだろう。


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