獣医学部の新設が何故「特区」なの?

またまた安倍総理周辺でお友達を巡っての利益供与の疑い。今度は加計学園が経営する岡山理科大学への獣医学部新設に安倍総理周辺からの便宜があったのではとの疑惑。

ちょっと紛らわしいが、岡山理科大学と言っても東京理科大学の姉妹校でも系列校でもない。

失礼ながら歴史も入試の偏差値も雲泥の差。

そもそも何で獣医学科の新設がそんなに問題になるかから話を始めると、実は最後に獣医学科設置されたのは1966年の北里大学。半世紀以前のことだ。

これには獣医学科の設立の経緯が関わっており獣医は主として明治維新後の富国強兵の流れの中での軍馬の維持確保の為に育成された。

終戦後、その役割は家畜の管理、それも行政サイドでの需要を満たすことに主眼を移したのだが、それでも「お上」の視点が中心であったことに変わりは無く、ペットの様な小動物の相手は長く傍流として扱われてきた。

この様な経緯により獣医学部・学科の数及び定員は厳しく制限されており、日本にある獣医学部のある大学は国立大学10校(北大、帯広畜産大、岩手大、東大、東京農工大、岐阜大、鳥取大、山口大、宮崎大、鹿児島大)、公立が大阪市大1校、私立5校(酪農学園大、北里大、日獣医大、日大、麻布大)で16しかなく、入学定員は930人となっている。よって競争率は凄まじく平均で24倍という超難関。

入学定員は昭和50年から据え置かれている。理由としては、教育水準の向上が優先という事と需要と供給が概ね一致しているという事。

実労している獣医師は現在3万5千人程で、内訳は公務員が四分の一、産業動物獣医が一割、大学教員その他が15%で残りの四割が小動物獣医、所謂街の獣医さんと言うことになる。

この様に文科省は頑なに設置大学数、定員数を据え置いてきており、今回の加計学園も過去に15回も申請を行なっているが悉く文科省に撃墜されてきている。

そこに今回、安倍政権の肝入りの国家戦略特区というお道具を使って内閣府主導で四国で私立大学一校に限り新設を認めることを決定。その公募に応えたのが愛媛県、今治市と組んだ加計学園。

官僚が拒んできた獣医学部新設を官邸、内閣府が主導して押し切った形だ。

今回の選定でもう一つ不思議なのが当初は四国と言う設置制限が無かったものが、地域的偏在の解消に四国と決め打ちされた事。また、何故か私立大学。

この制限が出るまで京都産業大学も獣医学部の新設に向けて働くがけをしており、その構想は人間向き創薬、iPS細胞を使った再生医療も視野に入れた家畜を扱うという先端的なもの。ノーベル賞受賞者山中教授率いる京大iPS細胞研究所との連携、そして京都産業大学自身にもノーベル賞受賞者である益川教授がいる。ところが先の四国への決め打ちで脱落。

地域的偏在と言うが北陸には獣医学部が一つもない(中部地方では岐阜大にあるが)。

首都圏には4校もあるのに対して大阪圏には大阪府立大にあるだけ。京都という立地は悪くはない。

四国には無いと言っても瀬戸内科を渡った山口大や島根大、隣の九州にも鹿児島大、宮崎大に獣医学部がある。そもそも絶対数が少ないので獣医志望者は国公立と複数の私立を受ける。受験生の観点では何処にあろうとあまり関係ない。

もう一つ気になるのが加計学園による獣医学部の定員数。165名だと言う。

国立大学の獣医学部の定員は30〜40名。

私立で80〜120名。

私立では教員の数などにより全ての学生が実習で動物に手を触れる事が難しく、十分な実習が出来ないままに卒業することもある様だ。

果たして十分な数の教員が確保できるのであろうか。

この面でも第二の森友学園にならない事を祈りたい。




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