ベルリンの学校システムと”どこでも通用する”ことの難しさについて

7歳の娘はベルリンの現地小学校で日々学んでいるわけだが、自分も同じようにベルリンの小学校中学校(に相当する学校)で学んだ経験があるので、娘がこれから経験するであろう受難やメリデメについて色々と考えている。

前提:学校システムそのものが国や地域によって非常に多様性があるもの。例えばアメリカ式6.3.3.4.制(例えば日本)、イギリス式6.3(4?).4.3制(例えば香港・シンガポール)、フランス式(例えばグランゼコール等の特殊な高等教育システム等、おそらく踏襲した国あるはず)……ドイツ式(例えば小学4年でおおよその将来を決めてしまうあれと、Diplom, Magister等の学士、修士に該当しない学位のあれこれ)…フィリピン式..(その他各地域に色々なシステムがあることでしょう)日本にいると結構アメリカ式の6.3.3.4.制が世界のスタンダードという前提で話されることが多いのだけど特に英語圏以外の海外に住んでいるとそうでない事と、そうでないことのギャップをかんじることが多々ある。

これは自分がたまたま日本の教育とドイツの教育を経ているので困っただけでなく、例えばドイツ人がアメリカの大学院に進学する際に困った話をたまに聞く。代表的な例としてDiplomという学位を持っているけど、これをUSの大学アドミッションに説明したときに、MasterなのがBachelorなのかどっちだって責められて、無理やりMaster以上Doctor未満だといって結果Masterにされて不満とか、GPA計算で4.0満点のアメリカで1.0が満点で数字が増えるほど悪く表示されるドイツの成績でそのまま、自慢げにGPA1.3!!と書いて玉砕したとか、いろいろ聞く(実際はどうなったかわからない)逆にGPA3.8!と自慢げにドイツで言うと、US式知らないドメスティックドイツ人だったら、最低の成績だねってなってしまう。例えば日本の教育を受けてこちらで就職活動するひとで慣れてない人はやってしまうかもしれない。(成績はドイツもアメリカも重視されるので、日本はその点楽)

ドイツの大学をいくつか受験したこともある自分の経験だと2001年当時はドイツの大学はドイツ式を貫いていたので、いろいろと調整が必要だった。Abiturという大学入学許可資格が日本の大学の合格証明書に相当するから日本の大学受かってから受けろとか、(ちなみに東大でも無名大学でも合格なら良しという興味のなさ)本当にアドミッションに振り回されて苦労した。流石にいまは改善されていることを祈る。(ちなみにドイツの大学は2006年あたりにボローニャプロセスによってBachelorを導入しアメリカ式に近づいた、これは一説には学生の待遇がよすぎて35歳でも余裕で学部生してしまう文化だとまずいという反省から?も含まれるようだ)だから自分は学校制度に乖離があるドイツの大学に日本で教育受けた学生が行くのが得策だとは思わない。日本で就職を狙う場合苦労するのが目に見えるからだ。(学者なりたい人は別)一方で学費の安さねらいで、学費が上がりすぎてしまった英米の学生のごく一部がドイツの大学に流れているという説も聞く、が。

同じくフランスのグランゼコールにも言えることでこれも大学とは違う形態のエリート学校制度なのだけど、日本ではよく”専門学校”的に訳されていてとても違和感がある。こうしたことは一見どうでも良いようで結構大事だったりする。例えばいろんな国の人とビジネスをするときに、大学話をしてくる人がいるとき、その学校がその国でどのくらいの位置づけなのかを知っているかでどのくらいその国に詳しいかを判断されてたりする。これを意識し始めたのは30過ぎた頃某企業に転職した後だったのだけど、ウィキペディアやLinkedInで調べてUS、ドイツ、フランス、イギリス、中国、オーストラリアなどの有名校については一通り全部覚えた。LinkedInの学校別サマリーは卒業生がどんな場所や業界で働いているかわかって特にリアルで面白い。

ドイツのシステム例(実際は州によってちょっとづつ違います)

悩める学校教育制度 - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト

新・ニュースを追跡 - 悩める学校教育制度

www.newsdigest.de

ベルリンで知らないと親同士のコミュニケーションで置いてかれる単語の例:モンテソーリ教育(比較的有名らしいイタリア式、Googleの創業者も確かこの教育方式で幼少期育ってる)、ワルドルフ学校(日本ではシュタイナー教育っていわれているものと近い)この辺りは別に教育熱心でもなんでもない親もあたりまえに発する単語なので、知らないでぽかーんとしていると、お前はだいじょうぶか?な無言なプレッシャーを受けたことがある。だから、色々と調べるようになった。

ベルリン独自制度:ドイツの例を上に載せたがこれは一般論で、ベルリン州には他のドイツと違い小学校を2年多く、6年までやる制度が一般的(ふつうドイツは4年で終了)こういうのがさらにややこしくする。あと、一般的に4年で将来の進路が決まるという表向きとはうらはらに途中でコースを変えるルートがいくつか存在し、実態は異なっている。実際娘の友人の友達のお姉さんで大学にいかないコースで進学したが、途中で美術大学に進むコース(通常より大学進学まで1年長くかかる)に変更したと聞いたし、過去にも頻繁にそういったケースを聞いた。こういうのはどこもあるんだろうな。

ベルリンの海外志向:ローカルな学校にいっているからか、意外と国内の学校、大学に行くのが良いと考えている親がおおい。これは属するコミュニティーによると思う。あと、親の国籍も影響するはず。もう一つ付け加えておくとベルリンの小学校の学力調査はドイツの主要都市の中で相当低いレベルになっている。市の財政が悪いのと、地区によっては移民が偏っててドイツ語レベルが低いのが原因だとおもうが、これはあくまでドイツベンチマークにした話なので自分も含めた外国人はあまり気にしていない。(昔報道されたノイケルン地区の学級崩壊レベルになると困るが。ノイケルン学校で検索すると出ます。)

インターナショナルスクール等は月300€程度と日本に比べれば安いので、そういった学校にいれば自然とUSやUKの大学や進路を目指す人達がおおいのかもしれない。インターについては、日本も近いところがあるが、両親のどちらかが英語ネイティブの国出身である必要があり、自分たちの場合は検討はしたがそこが断念した。海外志向(US志向)とエリート志向がわりかし近いところにある東京とくらべ、ベルリンの海外志向は”個人のこのみと親のバックグラウンド”要素が多いかもしれない。親がスペイン人ならスペイン語、フランスならフランスの学校もあるし、日本語で卒業できる学校もあるので。また裏ルート、特殊ルートもいろいろあるのだろう。さらに日本ではUS方式が色々と幅を効かせているがこっちの”一般人”には受けが悪い。ただし、ベルリンのファウンダー、あるいはエリート企業にいるドイツ人の多くはアメリカの学位大抵持ってたりするので結局は大きく変わらないか。

なのでこうしたほんの氷山の一角だけとっても”どこでも通用する”が幻想レベルでむずかしい事をあらためて実感する。逆に言えばどこでも通用する教育なんかはありえないので、その時どきの好きなことに没頭できる環境があるのが一番だと考えている。好きなことを自ら発掘する環境があるのが良い学校システム、なのかもしれない。

ちなみに自分はもう一度高校卒業時に戻るならばドイツ大学目指すのではなく、奨学金つきのUSのリベラルアーツ・カレッジを目指すとおもう。同じ海外大学目指すとしてもそのほうが日本パスポートを持つ人間なら得だと思うからだ。それを当時やらなかった理由は”奨学金-Grant”の存在を知らなかったから。自分はMBA応募時にスペインの大学院から8,000€程度だが、フェローシップという(奨学金+大学院の業務を一部手伝う条件つき)ものを獲得したことがある。それまでは自分の勉強不足で奨学金というのは”利子つけて返すもの”つまりローンだと思っていたので初めてのGrantでとても新鮮だった覚えがある。いまでも日本の奨学金にはローン的なものが多いらしいが奨学金は本来返さなくていいものが一般的だ。海外の大学だと特に卒業生が強いところはいろいろな学費補助のオプションがあるので、ツールや制度を知ってるかどうかでも色々と選択肢は変わってくると思う。日本パスポート持ちでドイツの大学や、ドイツの現地校に興味があるひとは、学費が安い、以外の要素をいろいろ見て検討したほうが良いと思います。

著者の矢野 圭一郎さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。