ベルリンで働きながら見る”ドイツの労働時間の短さ”について

日本のニュースを見ていてよく出る”日本のホワイトカラーの生産性の低さ”と”長時間労働”について、カウンターとしてよく見る”ドイツの労働時間の短さについて”の件で自身の様々な経験を通して書いてみる。

結論から言うと、”ものすごい違和感” だ。

というか大部分は数字マジックである。もう一つは”一般化”の弊害とでもいっておくか。(そもそも300万社あるドイツ企業をまるっと一般化するなんて狂ってないか?w)

たぶん、”ドイツの労働時間が短い”といっている人の多くは実際にドイツの企業で勤務した経験が無い、あるいはドイツ企業や団体とビジネスコンテクストでやり取りした経験が無い人だと思う。そういう人が一般的に公開されている統計を元に”でしょ?”っていっている可能性が高い。

この手の記事は検索すれば沢山でてくるが、試しにここらへんの記事をピックアップ


http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20161006-OYT8T50042.html


http://upgrade.all-in.xyz/germany/


CNN Moneyによると、ドイツ人の週平均労働時間は35時間(日本は42.8時間)

日本で企業で働いている人なら違和感あると思うのが、この日本の週の平均労働時間が42.8時間ということ。つまりフルタイム従業員がほとんど誰も残業していないという計算になる。まず僕はここに強烈に違和感を感じる。

同じようにドイツの週平均が35時間というのはすごく違和感だ。ただ下記のようなケースを入れるならまだ納得感がある。

雇用形態がフレキシブルで個人でカスタマイズされているケースがおおいので、フルタイムの20%勤務、50%や70%など時間区切りで労使契約を結んでいるケースがある。

個人的には労働時間で仕事を区切るのは余り好きではない。結果でコミットの方が自分ならすっきりする。けれども時間区切りを使うことで自由度が増やせる人もいるのなら形としては良い仕組みだと思う。小刻みに雇用できるので失業率の低下にもつながるだろう。

しかし、私の友人で某企業でこれに失敗しているケースがいた。彼は博士号の論文を書くために20%労働の契約を会社としているのにも関わらず、実質150%くらい働かされていた。深夜も、週末も。さらに2泊3日の中国出張も結構していて(格安航空券で片道20時間)あまりに仕事がおわらないので、その分埋め合わせの給料を出してくれと交渉したが叶わず、丸め込まれて気がついたら辞めていた。

あまりリアルなケースは書けないのだけど上記のようなケースは正直結構ある。日本も同じだけれど社員の労働時間を隠すトリックは沢山あるのだろう。

その他MBA時代にドイツ人のクラスメートに”ドイツは本当に皆さくっと短時間で働いているのか?”と聞いたことがある。そうしたら”おまえ、それ本気でそう思ってるのか?少なくともコンサルや銀行行ったら世界中どこいっても同じだよ。自分もだいたい22時くらいまでは働いているよ(某大手事業会社S社)”

考えてみれば当然だが、世界中と繋がって仕事をするのが当たり前の世の中、労働環境が国の状況にのみリンクするのは”超ローカルビジネス”意外ありえない。

もう一点短時間労働の統計を成り立たせているのがおそらくドイツの中小製造業。製造業の場合生産ラインを動かすのもコストが掛かるので短時間で生産性を上げる仕組みにおのずともっていくのが理。この業界に行くとおそらく短くなる傾向があるのではないか。ドイツは製造業が強いし大手だけでなく同業界の中小企業がつよい。

逆にいうと、これは日本も同じで製造業は比較的労働時間が短い。(業種にもよる)

自分の考えはこうだ。

今の時代、労働環境が国に依存するという考え方自体に違和感がある。というのも、どう働く、働かせる、何ていうのは企業や経営者の運営の仕方次第だとおもう。後は国を越えた業界の独特なしがらみや縛りかもしれない。とにかく国じゃない。

これまで大中小、日系米系独系の様々なタイプの企業で働いて、今は自身の会社を立ち上げて働いているが、”働きやすい会社”か”働きにくい会社”かどっちかがあるだけだと感じる。大企業の場合なら所属する部署やチームによってぜんぜん変わる。

事業主や起業家やフリーランスなら自分で働きやすい環境を作っていけるだろうし、ヨーロッパにいるからって休みを増やすか、ってのはその人の判断だけ。

日本でも裁量があって働く時間も場所も選べて休みも2週間位なら続けて取れるサラリーマンライフはある。(特に有力外資や大企業にだろうけど、最近はフレキシブルな新興企業も増えている)

逆に短時間で休みが多いと有名なドイツでもブラック企業みたいなところは沢山ある。(特に資金のないスタートアップとかで上がドイツ人下が外国人みたいなところは結構イエローゾーン、大手やグローバル企業のほうが安心)

もしこれからベルリンに移住してみたい(こちらに住んでいるとたまにそうした相談を受けるのでニーズがあるのかも)人はドイツのクウォリティーライフは発信側のうまいPRである事を理解して、現実的な目線をもって考えたほうがあらゆる意味で苦労が少ないと思う。

一方で海外で働き生活することはやりがいやメリット、成長できる事も沢山あるのでやってみるのはすばらしい。だけど、ヨーロッパならきっと皆夏は1ヶ月南仏でバカンスして4時からビールのんで公園でりんごかじってストレスフリー、みたいのは自分でそうした環境を”創り出す”事ができない限りありえ無い。

結局受け身でやる分には東京もベルリンも変わらない。受け身だとどこにいても誰かの餌食になるだけだ。自分への戒めとしても。

ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。

著者の矢野 圭一郎さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。