これから肺がんを生き抜いていく人たちのために(5)

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肺がんになった僕は献血ができなくなった。

日本赤十字社のホームページによれば、

「悪性腫瘍の診断を受けて治療中の方はもちろん、悪性腫瘍の手術を受けた後の方も、たとえその術後経過が良好でも、原則として献血をご遠慮いただいています。」

このようなことは、肺がんになったからこそ学んだことのひとつだ。

痰に1センチ、すうっと糸を引いたような血の筋が混じっていたことがあった。咳が出たりする症状がなかったから、喉の粘膜に傷がついたんだろうと安直に考えてそのまま放置した。その頃に強度の胸やけがあって、胸やけを治したいと思い開業医を訪ねた。そこで検査をしている内に肺がんが見つかった。

「父は肺がんでした。」

僕が言うと、開業医は、

「レントゲンを撮って、それでもし何かあれば念のためにCTも撮りましょう。」

肺がんを見つけることができたのは偶然だった。がん治療は早期発見に尽きる。これも肺がんになって学んだことだった。そのほかに学んだことは、手術をし目に見える病巣を切除したとしても肺がんは再発率が高いこと、肺や肺以外の臓器に5年以内に再発することも少なくないこと。

主治医が言っていた。

「一番のリハビリは、普通に生活することです。」

術後5日経過後に退院し、10日後に職場に復帰した。

標準治療そのものだった。それでも、僕は明らかにそれまでの自分とは違っていた。驚くほど疲れやすくなったし、それまでのように体を動かせなくなった。薬を常時携帯するようになり、病気であることを自覚するようになった。そして、死を意識するようになったし、敏感にもなった。それに、臆病にもなった。

本を読んでいて、

「仮にあと1年しか生きられないとしたら、あなたは何​をして過ごしますか?」

こんな問いかけがあると、ぞくっとする。

切迫した命を生きている人たちはたくさんいる。間一髪で難を逃れた幸運に感謝して、これからは自分自身への対処方法を学び、今できることをやるべきであることは間違いない。仮にあと1年しか生きられないとしても、これから肺がんを生き抜いていく人の一人であるべきだ。

肺がんになったことは、不運かもしれないが、不幸ではない。

心からそう思う。


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