近藤君、倉庫整理してきて

台湾に来て最初に与えられた仕事は

倉庫整理。


しかも結構大きい倉庫。


社長からは「どのように整理するかはお前に任せるから、最終的にExcelでまとめて、宜しく。」とだけ言われた。


意気込んでどんどん整理した。どんどん整理して、どんどんExcel更新して、とにかくどんどんどんどん「早く、綺麗に」を心がけて整理した。


先輩からは「お前、仕事早いな!」と言われた。正直嬉しかった。


3日後、Excelの最後の更新をして社長に持っていった。


「おー!お前早かったなー!やる気あるなー!よし!倉庫に行こう!」


社長に連れられて倉庫に行くと、社長がリストを見ながら「18番のグラス、13個取ってくれ。」という。


僕の手元にリストは無い。

「社長、リスト見せてもらえますか。」


社長
ダメだ。見ないで探せ。

やっとの思いで探し出すと、続けて来客用の箸を5セット。絨毯。過去の資料。等々


うろうろ探していると、


社長
ダメだ、やり直し。これ、一回全部出してもう一度整理して。


何が駄目だったのか全然わからなかった。


結局、一度全部出して、整理して社長に連れられて物取り出して、またダメ出しくらって何ヶ月も同じことを繰り返した。


正直、自分は倉庫整理もまともにできない人間なのかと落胆したし、最初の意気込みなんて何ヶ月か前にどっか行った。


ある日、社長がこう言った。


社長
お前、今この倉庫の中の物、ほとんど頭に入ってるだろ?そして、どこに何があるかほぼ頭に入ってる。違うか?

確かに。


リスト無くてもほぼ把握してる。


社長
お前には先輩と同じようにいずれ3000人規模の組織をまとめる仕事をしてもらう。どの地区に誰がいて、どんな人がいて、特徴、生活水準、環境等々、組織の規模が大きければ大きい程、広く物事を見渡す力が必要になってくる。
お前は最初、倉庫を「早く」「綺麗に」することだけしか頭になかった。それだけならやる気さえあれば誰だってできる。今はどうだ?倉庫の「広さ」「形」「奥行き」「棚の数」「物の数」「品物」「新しい物」「古いもの」頭に入ってるだろ?それが大事なんだ。広く物事を見渡す眼を養いなさい。

その晩、先輩に呑みに誘われた。聞くと、先輩も最初は同じような事をさせられたらしい。


倉庫整理も奥が深いなぁと思った。と、同時に特別な社長だと思った。


社長からはよく頼まれ事をする。


いつも頼まれ事には自分が思っている以上の意味があって面白い。


先輩はよく言う。


先輩
社長から頼まれたら集中しろ、そして最終的に社長の眼を盗め。


面白い会社。笑


それから3年、今は組織を持たせてもらって当時の倉庫整理等、日々の頼まれ事が自分にとって大きな経験値となっている。


著者のKondo Takeshiさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。