宅急便の料金が上がるのに内航船の運賃は何故下がるのか

宅急便業者に続いて日本郵政もゆうパックの料金を約1割値上げすると言う。ヤマト運輸も最大で2割の値上げを行う。輸送量の増加に伴う仕事の増加で現場の運転手への負担が増加、更には時間外勤務に対する割増賃金が支払われていなかったことも発覚、人員増や未払い割増賃金の支払いを余儀なくされている。一方で道路渋滞や省エネ、環境負荷に寄与することが期待されている内航船の運賃は低迷したままで、このままでは高齢化した船員のなりてにも事欠く事態。

内航船という言葉は聞き慣れないかと思うが、これは外国航路を航海する外航船に対するもので、国内航路を走る船のこと。

フェリーや島へ貨物を運ぶ船は割に目にすると思うが、実は貨物船は日本の物流の基幹を担っている。

輸送量のシェアでは10%に満たないものの、輸送重量キロでは4割以上を占めている。

つまり重いものを長距離運んでいるということだ。

日本列島は北から南へと弧を描いて細長く位置して、その周りを海に囲まれているので海上輸送にうってつけなのだ。

運んでいるものは石油類が一番多く、次いで石灰石、鋼材。セメントや車も上位を占めている。

大きさは総トン数499GT以下が3分の2を占めているが、石灰石やセメント専用船には数千Tの大型船も多い。

この小型船の最少定員は甲板部3名、機関部2名の5名(199GT以下では甲板部3名、機関部1名の4名)であるが甲板部、船の操縦や荷物の積み降ろしを行う人は8時間毎に当直、仕事なので、実際の当直は甲板部1名で行うことになる。

近場を輸送する船は1日に2港で積み降ろしを行うことも稀ではなく、着岸や離岸、積み降ろしのチェックなどで当直以外の甲板部の人も働かなければならないことが多い。また、錆びた船体のサビ落としやペンキ塗も空いた時間にこなさなければならない。

食事も昔は司厨長というコックが乗っていたが、今では各人が乗船前に購入してきたもので自炊。

勤務も大手では2週間勤務してる1週間の休みと言うところもあるが、3ヶ月乗船して一ヶ月の休みという形態も多い。後者の場合、若い人は恋人と会えないという理由で船を去ることも多いと聞く。

給料も外航船の船員に比べると随分落ちるが、それでも有資格者であれば20代でも月額40万円を越す。

外航船員になる為には高校卒業後、商船大学か商船高専を卒業して国家試験に受かる必要がある。

内航船員の場合、中学卒業後に海上技術学校に3年通うか、高校卒業後に海上短期大学校に2年通って、就職後6ヶ月の乗船履歴を持って国家試験の受験資格を得る。

それでも船員、殊に内航船員のなり手は少ない。


それでも内航船員が不足して船が止まると言う話はあまり聞かない。

それは内航船員界が究極の高齢者の活用を行なっている為。

実に半数以上が50歳以上というのが現実です。

上に述べたようなきつくてプライバシーも無い職場ですが、慣れた人達には人に気を使う必要も少ないし(そもそも一緒に仕事をする人さえ少ないのですから)、お金もそこそこ、時間もまとめて自由になる世界です。

と言って自分の子供や知り合いにはちょっと勧められないのも事実。

日本人がやらないなら外国人を乗せればというご意見も有りますが、内航船については自国船籍で自国人船員だけというのが世界の潮流の規制。災害時や戦争の際をおもんばかっての措置だと言うことです。

と言うことで日本の内航海運は破綻への路をひた走っているのに緊迫感が余り感じられないのは何故でしょうか。

それは宅急便やタクシーと違って、消費者の日々の生活に直接関係していないから。

また船主が零細企業が多くユーザである製造業者に比して力を持っておらず値下げ要請に応じなければ自社の商売を失い競合社に取られてしまうからです。

船員の再生産が可能な適正な運賃が支払われなければ、気づいたら国内輸送の担い手がいなくなっているという事態が起こりうる。

そのような事態を避ける為に今手を打たないと手遅れになる。

この様な分野こそ政府の強いリーダシップを発揮して、日本の輸送の根幹の安定を確保してもらいたい。


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