家庭教師派遣センターと関わって学んだこと

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 以下は私の大学時代の話である。

 大学生にとって短時間で効率的に稼ぐことができるアルバイトといえば「家庭教師」がその筆頭にあげられよう。

 私もその例に漏れること無く、また、自分で言うのも何であるが、そこそこ名の知れた大学に通っていたので、そのブランド力を生かし、入学早々、家庭教師のアルバイトを始めた。

 家庭教師というのは、数あるアルバイトの中では、時間の面で大変に融通がきくものである。一般的には、週のこの日とこの日、何時からと決めて、依頼先の家庭を訪問するのであるが、お互いにどうしても都合が悪いときはあらかじめ日程調整ができるなど、大変に融通がきく。また、依頼先の家庭のご好意により、茶菓子をいただいたり、場合によっては夕食もごちそうになるなど、そういう面の優位さもある。

 家庭教師のクチは、個人的な人脈(近所や親同士が知り合いなど)や、大学内の紹介所で紹介を受けるという場合があるが、もう一つ、いわゆる「家庭教師派遣センター」(以下単にセンターという)に登録し、派遣先の照会を受けるという手もある。

 

 私が大学時代、一般紙に「家庭教師やります」という欄があった。そこに申し込むと、名前、在籍大学、住所及び電話番号が記載され、依頼したい家庭はそれを見て、掲載者に直接連絡を入れるのである(今現在は個人情報保護の観点から、この欄はない)。

 私は大学2年生のあるとき、一時的に失業状態になったときがあったので、この欄に申込み、しばらくたつと掲載された。するとある日、自宅近くのセンターから電話がかかってきた。聞くと、私の自宅からバイクで20分程度のところで家庭教師を探しているところがあり、そこを紹介できるという。で、私はセンターの担当者に言われるまま、後日、センターを訪れ、説明を受けた。

 私は単に紹介してくれるだけかなと思っていたが、説明を聞くと、依頼元は急いでおり、すぐにでも行ってほしい、とのこと。そして、注意事項として、茶菓子の提供は受けないこと、て毎回、終了後に報告書を出すこと、と言われた。

 今思えば、センターからの派遣であるから、報告書の提出等は当たり前であるが、それまで、そのような形でやったことのない私はやや辟易したのである。

 数日後、依頼元の家庭を訪問した。面倒を見るのは当時、中学二年生の女の子だった。ところが、いざ教えようとしても、相性が合わず、話が噛み合わない。私の教え方が悪かったとは思うが、全く手応えがない。

 その後、2ヶ月ぐらいその家庭に通い、都度、報告書は提出していた。ところが、ある日センターから電話があり「行かなくていい」と指示があった。ああそうですか、と気楽に思っていたが、なぜか依頼元の家庭から私に直接電話があり、「センターと喧嘩し、センターとは契約を解除した。しかし、家庭教師は必要。あなたに個人的にお願いするから引き続き、来てほしい」と依頼され、そのまま引き続き、個人的依頼として、その家庭に通うこととにした。

 しかし、それから一ヶ月ぐらいした後、その家庭から「都合により、ちょっと来なくていい。必要になれば、またあらためて連絡する」と連絡があり、私は連絡を待った。が、結局、それを最後に連絡はなく、その家庭での家庭教師の仕事は自然消滅したのである。


 この顛末を考察すると、まず、私自身であるが、「家庭教師派遣センター」というシステムを理解せぬまま、言われるままに仕事を引き受けてしまったことに問題があった。そのときの私は「センターから派遣されている」という意識がほとんど無く、単にセンターから紹介してもらった、という程度の認識しか無かった。そのため、依頼元の家庭に出向いた後も、個人的に受けたのと同じような感覚でやっていたのである。

 派遣先の家庭にしてみれば、「センターから派遣された家庭教師」であるからそれなりのものがあるだろう、という期待もあっただろうけれど、実際に派遣されたのはそういう認識の無い者であったから、これではだめである。派遣先の家庭と、センターとが喧嘩した理由もそこにあったのかもしれない。

 次に、センター側であるが、おそらく、そのセンターは依頼元の家庭から早く派遣してほしいと要求されていたが、適任者がおらず、新聞の欄でその家庭からほど近いところにいる私を見つけ、渡りに船と思って私を呼び出したのであろう。

 今思うと、このセンターも拙攻というか、本来ならば、雇い入れた人にセンターの方針を理解させるとともに、また、その人の力量もきちんと把握しなければならない。いくら有名大学に通っているからといって、教え方がうまいとは限らないからである。

 教え方があまりうまくないならば、センターの方針に沿うようにそれなりの訓練を施し、家庭教師としての最低限の技術は身につけさせなければならない。今思うと、このセンターはこのような手順を一切せず、ともかく、早く派遣することだけであったように思う。また、正式に派遣する前に、一度、派遣候補者と家庭とで面談を行い、よいかどうかを確かめるぐらいもしたほうが良い。

 派遣先の家庭であるが、ここは何の責任もない。そこの子供が成績が今ひとつであれば、家庭教師でもつけて少なくとも人並みの成績ぐらいにはしよう、と思うのは親としては当然である。そのため、近くのセンターと契約して派遣を受けるということとなる。ところが、実際に派遣された家庭教師(私)は、どうも今ひとつで期待に沿うものではないとなれば、文句を言うのも当然である。

 結果的に、大学在籍中にセンターを使ったのはこれが最初で最後だったが、今思うと、後味の悪いものであった。今現在は私が登録したセンターは存在しない。廃業したのであろう。今現在は、「家庭教師派遣センター」よりも学習塾の方が充実しているので、そちらの利用が多いと思われる。

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