ドブネズミが90日で社長になった物語【第5章】

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歯車という”洗脳”


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居酒屋のバイトを経験して、「このままだと労働だけで人生が終わる。」


僕は徐々にそう確信するようになっていた。

会社には色んな上司がいたが、僕が憧れる上司は1人もいなかった。


ほとんどの上司は、自分の仕事に誇りなんて持っていなかった。


そりゃそうかもしれない。

もし僕が野菜部門の部長になったとしても、

「野菜を売ることに誇りを持っていますか?」と聞かれたら、

迷わずに「持ってるわけがない」と即答する。


僕の上司も仕事中にずっと「帰りたい」「給料をあげてほしい」とつぶやいていた。


上司は休日もすることがなく、住宅ローンと車のローンで毎月支払いに追われていたらしい。


上司はお金に追い込まれると面白い発言を度々していた。


「良い給料をもらうためにいい大学に行き、いい大学に行くためにいい高校に行く、いい高校に行くためにいい成績を取る、いい成績を取るために必死に勉強する。

たとえ、いい大学に行っても労働まみれの人生は変わらない。

死ぬ間際でやっと定年退職。

人間の人生は生まれてから死ぬまでお金のためなんだよね。」


こんな言葉をつぶやくおっさんを見て、僕はヒドく納得してしまった。


聞いたところによると、20歳の平社員の僕と38歳の上司の給料の差は8万円くらいしか変わらないらしい。


僕はこのまま38歳になった自分を想像しただけで恐ろしかった。


むしろ、その給料で住宅ローンの支払いまでできていることを信じれなかった。


ふと思い返すと、上司の昼食はコーヒーとタバコだけだった。


何が楽しくて行きているんだろう...。

失礼だが、僕は真剣に考えるようになった。


特に何か趣味があって楽しむわけでもなく、毎日同じような仕事をし、帰ってご飯を食べて寝るだけの家畜のような日々。


刑務所の囚人でも1日8時間労働なのに、なんの罪もないサラリーマンが毎日8時間以上働いている現状が納得できなかった。


これじゃどっちが囚人かわからない。

むしろ囚人の方が自分の時間があるんじゃないないだろうか。


ある日、店の売り上げがノルマに達してなかったため、

上司が部長から玉ねぎを投げつけられていた。


玉ねぎを投げつけられた上司は、ハゲかけた頭皮を部長に見せつけるように頭を下げて謝っていた。


そして、足りなかった売上げ分の金額を自分の財布から出して店の売り上げにしていた。


これを見て、正直ドン引きした。


ドン引きしすぎて、その姿を見ていられなかった。

少ない給料から、さらに会社にお金を入れるなんて...。


次の日、水筒にコーヒーを入れて持って来ていた。

おそらく、さらに生活が苦しくなったのだろう。


僕は、こんな生活は人間らしい生き方じゃないと思った。


上司はその日も当然のように閉店まで残っていた。


売り上げが取れなくて申し訳なかったのか、次の週にあった子供の運動会すら行かずに仕事をしていた。

「売り上げを取らないと怒られるし、仕事優先だから運動会には行けないよ。」


上司はこれが”常識”と言っていた。

そして、僕は新しい常識をまた一つ覚えた。


上司の唯一の楽しみは、土曜の夜にのどごし生を飲むことらしい。


僕は、将来のそんな自分の姿を想像して恐怖に震えていた。


世界はこんなにも広いのに、上司の人生はほとんどがこのスーパーの野菜売り場で終わってしまうのだと思った。


その時初めて大学に行かずに就職したことを深く後悔した。


学費を無駄にしても、大学で4年間遊んだ方がマシだと思った。


就職したら人生の終わりだと知った。


一度、会社の歯車を経験して、その場にいることが当たり前になってしまうと人間は洗脳されていることにさえ気がつかなくなってしまう。


自分が歯車だとも気づかず、洗脳されていることにも気づかず、

自分の大切な”時間”というものを会社に奪われているのである。


第6章に続く

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