ファン同士の交流に疲れたって話。

次話: ちょうどいい感覚でファンを続ける方法

 私は20歳から23歳まで、某歌手の熱狂的ファンをやっていました。今でもファンですが、程よい距離感で楽しんでます。

一昔前まではネットで情報発信するにはある程度のネット知識が必要でしたが2010年ごろからツイッターやインスタグラムなどのSNSが流行りだしてきました。

 ミクシイやフェイスブックやモバゲーなどのように、リアルでの知人と繋がるためのSNSに疲れ始めた人が増えていたあたりで、匿名制を求めつつも自分を同じような趣味嗜好の人と繋がりたいというニーズが増えてきた時期です。

 2000年代はアニメや音楽などの趣味系雑誌を見ると文通相手やメル友の募集というのが載っていましたが、2010年ごろから個人情報の規制が厳しくなったからなのか、それとも出版不況なのか、理由はわかりませんが、雑誌経由でメル友や文通友達を探すということは無くなりました。


もともと、その歌手の音楽が好きで、いつかライブに行きたいと思いながらも東北のド田舎在住なのでCDやDVDのみで楽しんでいました。

一応、県内での公演はありましたが家から会場が遠いのと、終演後の交通機関がないということと、夜遅くに中高生が外出するなんて言語両断だということで、泣く泣く断念せざるを得ませんでした。

その歌手はあまりTVや雑誌に出演することもないので、公式HPのみが情報源でした。公式ファンクラブもありましたが学生の私には年会費の5千円はとても高くて払えませんでした。

 っていうか、CDやDVDも新品購入するだけのお金はなかったのでレンタルや中古で楽しんでいました。この時点では歌手への利益は1円も出てませんが、電車通学時にウォークマンでその歌手の曲を聴いたことは今でもとても懐かしくてその曲を聴くたびに学生時代を思い出します。



専門学校卒業後、私はとある会社に就職しました。

けれども専門学校で学んだ分野とは無関係な会社です。

業務内容の割に給与は良く、仕事自体も好きでしたが、

「どうして専門学校で学んだことを生かせなかったのだろうか?」という悩みや、職場での人間関係の悩みもありました。

 仕事を始めて1年ほどたった春のことです。
 ちょうど、某歌手の新アルバムが出るとのことで、アイチューンズで視聴だけしてみたら、悩んでいた心に入り込んできました。歌詞と感情のこもった声がとても素敵で、気づいたら購入していました。

 学生時代と違って仕事をしていてお金はあるので数千円ならば気軽に出すことができるようになっていました。っていうか、仕事で疲れていて休日に外出することもなかったので貯金だけはたくさんありました。

  アイチューンズで新曲を購入して吹っ切れたからなのか、数ヶ月前に発売したけれども購入を悩んでいたライブDVDもすぐに新品を購入しました。

 専門学校在学中は課題が忙しくて、某歌手のことは忘れていました。

 要領が悪い私は課題をこなしつつバイトなんて高度なことはできないので課題をこなして予習や復習をするだけで精一杯でした。

 専門学校在学中は正直な話、もう勉強なんてやりたくないと自暴自棄になって退学寸前でしたが、実際に卒業してみると、嫌だった課題がなくなったことは少しさみしくて、ルーチンワークをこなすだけの毎日には嫌気が差してきました。

 専門学校在学中は夢に向かって必死で全員が努力していた環境だったのに、会社は互いの足の引っ張り合いや悪口大会ばかりというレベルの低さにウンザリしていました。

 希望の会社からはお祈りメールをたくさんいただきましたが、この会社だけは入社できました。

 だけど、どうして私はこんな会社にしか入れなかったのだろうか?
 私はこれっぽっちの価値しかないのだろうか?
 そんな気持ちを埋めてくれるのは某歌手の音楽だけでした。

 学生時代に高いと感じたファンクラブの年会費5千円も会社員になったらあっさり払える額でしたのですぐ入会手続きをし、会報と会員証が届き、夏のライブの案内が届きました。

 春のライブは仕事で断念しましたが夏のライブは参加できる日程なのですぐにチケットを購入しました。

 人生初の、本当に行きたかった某歌手のライブに参加できるなんて本当に夢のようで、ライブまで1か月以上あるのに「あとX日」と数えていると嫌な仕事も頑張ることができました。


 そして、待ちに待ったライブ当日。
 地方公演だからというのもありましたが、前から5列目くらいの神席で、某歌手をじっくり見ることができました。
 言葉で書ききれないほど嬉しくてワクワクした2時間でした。
 「よし、このツアーの別の公演も行こう」

 と、帰宅してファンクラブのサイトを見ると、東京と大阪のチケットがまだ余ってるようなので、早速購入しました。

 とはいえ私は東北在住。チケット代よりもホテル代と交通費の方が高いですがそんなの御構い無しです。某歌手の歌がなければ仕事なんてできない状態でしたから。
 貯金はあったので、東京と大阪のホテルと新幹線を予約しました。


 東京や大阪のライブに参加してみると、お手製応援グッズを持って参加している人たちもいて、どうやら、ツイッターやインスタグラムで非公式のファングループとして活動しているとのことでした。

 周りに某歌手のファンはいないのでライブは一人参加でしたし終演後や開演前に話し相手がいないのは寂しいなぁというのはあったので、すぐにツイッターやインスタグラムのアカウントを取得してファン仲間の交流を始めました。


 同じ歌手のファンだけあり、普段話せないライブの話も遠慮なくできて、実際に会って話してみたいと思うようになりました。

 ちょうど、秋に甲信越地方でライブが開催されるので、もちろんそのライブにも参加する事にしました。

 仲間の中には私と同じ東北地方の人もいれば、九州や北海道、近畿、首都圏など、様々な地域の人がいましたが、甲信越在住の人は一人もいませんから、全員がいわゆる遠征ってやつでした。


 甲信越の会場はかなりアクセスが不便なので、事務所側が用意したチケット付き公式バスツアーで新宿駅から出発する事となりました。

 バスの待ち時間でフォロワーさんと話すこともできて、ライブ前のテンションが上がりました。

 バスの座席や号車はフォロワーさん達とは離れてしまいましたが乗車中もひたすらスマホでやり取りです。

 約半年間で東北2回、大阪1回、甲信越2回、東京1回、合計6回のライブに参加しています。単純計算で月一参加ということになりますね。
 けれども、全通する仲間もいたので、私は少ない方です。

 平日公演のために有休を使う度胸はなかったので、土日公演のみの参加ですが、

交通費やグッズ代、CDやDVD代やファン同士の交際費などで半年で50万円は無くなりました。

実際もっとなくなったかもしれませんが計算なんてしていないので、実際の金額はよくわかっていません。



 ライブに参加するたびにファン同士の交流はさらに広がり、会場で私やその仲間たちを知った人達が新たに仲間に加入してくれることもありました。

 けれども、ファン同士の交流もいいことばかりではありませんでした。

 同じ歌手のファンでも、応援の仕方は人それぞれあり、ユーチューブで動画を見るだけの人もいれば、CDやグッスなどはすべて買ってライブも全通するという人もいます。

 私としては、迷惑がかからない応援方法ならば、どんな応援方法でも、某歌手が好きならば「ファン」として仲良くしたいのですが、実際にはそうではない人ばかりというのが現実でした。


 甲信越のライブに行った後、怪我と病気で会社を辞めてニートになりました。

 貯金なんて使い果たしたので、実家(とはいえ近所)に戻りましたが、治療費が予想外に高くついたということと、ライブに行くだけのお金や体力がないので、お金は失業手当のみでした。

 治療に専念すればパート程度ならば復職可能との指示を頂いたので、とりあえず治療のために医師から勧められた運動や食事なども一通り試してみたのですが、ニートなので暇です。

 行く場所といえばハローワークか病院かパートの面接か地元の体育館か図書館くらいしかありません。

 ニートになってライブにも行けなくなったらフォロワーさんとも疎遠になりました。
 某歌手のことしか話題がないので当然といえば当然です。
 そして、何かあるたびに「ニートのくせに」「病気だからってライブこないなんてひどい」「ファン失格」などと中傷してくるフォロワーさんもいました。

 ちなみにそのフォロワーさんは仕事でライブに不参加の時も「ファン失格」などと言ってくるような過激派です。


 半年ほどニートを経験したあとは体に負担のかからない程度で仕事をしています。
 給与は正社員時代の半分程度とかなり安いですが、某歌手に投資するお金も減ったので実際には生活レベルはそこまで変わっていないというのが現実です。


 住んでいる地域や職業が違う人どうし仲良くするなんてとても難しいことだと実感しました。
 仲間同士で集まるとどうしても過激な方向に行ってしまって現実の世界を疎かにしてしまったり、同じ歌手のファン同士なのに応援方法が違うというだけで一方的にネットで中傷されたりで応援が辛くなった時期もありました。

 そもそも、そこまでよく知らない人を一方的に中傷する人の気持ちが理解できません。

 愛や平和をテーマにした曲をたくさん歌っている某歌手はそんな応援方法を望んでいるのでしょうか?

 それこそファン失格だと思います。


 だけども、無理のない範囲で生活をして、現実社会での生活が充実してからは自分のペースでゆっくりと応援できるようになりました。

 応援費用を稼ぐためだけに仕事するなんて馬鹿らしいということに今更気付きました。


 公式のファンクラブは継続していますが、某歌手のファンBBSは公式も非公式も見ることはせずに、公式のファンミも不参加で、ファン同士の交流は全て断ち切りました。

 チケットを取るだけならばファンクラブに入会しなくても大丈夫ですが、会報が欲しいのと、ライブで良い席を取るためにファンクラブを継続しています。

会報と公式サイトのみから情報収集をして、CDはレンタルで済ませるか好きな曲だけアイチューンズで購入、DVDは中古で購入、グッズは気に入って普段使いできそうなものだけ購入するようになりました。



タンスの肥やしになっているライブグッズはほぼ全て売りました。



買取金額は購入時の10分の1程度と大した額にはなりませんでしたが、段ボール数箱分のダサいグッズを置くためだけに家賃がかかっていることを考えたら、グッズがなくなって空いたスペースを有効活用できるようになったので、グッズの大半を手放して正解だったと思っています。




 毎回のように購入していたタオルやTシャツやバッグも、毎回ではなくて、本当に気に入ったものがあった時だけ購入するようにしています。



 それにしてもどうしてどのアーティストもタオルかTシャツかバッグくらいしかグッズがないのだろう?



 女性雑誌の付録のようなアイテムにロゴつけただけで数千円では、熱狂的ファンしか購入しないのは当然といえば当然なのに、買わなきゃファン失格という風潮があるのはどうしても辛かったです。



 アーティストの名前とツアー名のロゴだけならばしまむらで500円の無地Tシャツでも買ってきてアイロンプリントやらワッペンやらで制作すれば済む話なのに、自分で制作した非公式のグッズを持っているというだけで仲間から「公式にお金落とせ」と批判されるなんて恐ろしい世界です。



公式に買いたいアイテムがないから自作しているだけなのだから、これは事務所の努力不足ですし、そんなものにお金をかけるのはカルト宗教にのめり込む部分に近いかもと思いました。




 とはいえメディア出演がほとんど無い歌手なので、ブロマイドやパンフレットは毎回買ってます。



 


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