最愛のビッチな妻が死んだ 第5章

前話: 最愛のビッチな妻が死んだ 第4章

交際6日目 2月23日


この日僕は、あげはに会いたい一心で早く仕事を終わらせた。


「脱兎の如く会社を脱出!」

「あは、お疲れ様! 今日これから仕事は?」

「打ち合わせ一本して、8時ぐらいには終わり」

「おウチ帰りたいな」

「実家(日暮里)に帰る?」

「んーん、共輔との愛の巣に」


あげはは夜から知り合いのシェアハウスに「喝を入れにきて」と頼まれたので出かけるらしいい。


「喝ってなんだ。でも欲されたら行って100求められたら460で対応してしまう。そんな彼女です」


あげはに毎日素敵な喝を入れられている僕はSNSに「僕はハッピーパウダーにまみれている」と投稿していた。完全に浮かれている。


「ハッピーターンまみれでおウチに帰りたい。ハッピーパウダーはあげが撒き散らす」

「待ってるかも」

「ハマったら大変。終電が早過ぎる」

「終電に間に合うよう祈ったり、圧力かけたりするわ」

「あわよくば車で迎えにと思っていた。ねー明日は?」

「仕事は昼過ぎからだよ」

「じゃあ、ゆっくり寝てて」

「帰宅。終電逃しそう?」


あげはは毎日のように会っている僕に手紙を書いていた。


「なんでいつも一緒にいるのに手紙?」

「あは、手紙書くの好きなんだ。終電は、まだわかんない」

「状況わかったら教えて」

「状況? 共輔が好きで好きで仕方ない」


2人の状況はいつだって変わらない。


「ねえ、求婚以外で史上最大の愛の表現方法を教えて」

「じゃあ、一緒に住んでいれる時間は一緒にいたい」

「あとは?」

「いっばい愛したい」

「お互いが相手を好きで、一緒に笑ったり感動したり怒ったり、愛し合ったりバカできたら、いいなと思う。あげもそう思って一緒にいてくれたら、うれしいな」

「それは、あげも本当にそう。嗚呼どうしよう」

「なにが?」

「あの……好きなんです」

「ありがと。僕も好きだよ」

「誰といて楽しくても、何をしてて楽しくても、貴方とならばこれはどれだけ楽しいだろうと。気持ち悪いくらいに、猟奇的なほどに」「貴方と出逢う前に狙ってた男も、昔の男も、貴方には叶わないんです。気持ち悪いですか?」

「……運命は信じてなかったけど、あげは信じれる」


この時点で、僕はあげはと添い遂げる覚悟をしていた。


「適度に仕事をしつつ、毎日貴方の帰りを待ってもいいですか? 結婚にはさして興味がないですが」

「うん」

「眠さも楽しさも辛さも全ての感情を、共にしてください。酔っているからではなく」

「僕はシラフで、あげが好き」

「酔っていない時の拒絶が怖いのは少しありますが、アタシは愛しています」「もう駄目です」「好きが過ぎて」


あげはと僕はもう、どシラフでお互いイカれてた。どんなドラッグよりも一服でキマり、完全にヤラてしまっていた。一緒にいることが自然で、いないことが苦痛なくらい。


「靴箱」

「靴箱?」

「買い足していいですか」

「ああ、そういうこと。買おうか」

「キッチンにはガスコンロを」「お金貯めて、猫も一緒に住める家へ」「ごめんなさい、こんなに愛して」


僕の前の嫁は美容師だった。今後、あげははずっと前嫁の存在を忌み嫌うこととなる。


「アタシ髪切れませんが、乾かすことならなんとか」

「ありがとう」

「お礼は、アタシが」

「出会ってくれて、ありがと」

「泣いちゃうから、やめて」「抱きしめられたいんですが、どうか寝てください。仕事の邪魔はしたくない」

「仕事は大丈夫。あげが邪魔な時なんかないよ」

「ありがと大好き」


終電を逃したあげはは、そのままシェアハウスに泊まることに。


「明日とか明後日、行っていいですか? 本当は日々、共輔と全てを共にしたいのだけど」

「了解。ゆっくり休んで、また明日」

「えーん寂しい。でもおやすみ」

「おやすみ。いい夢を」

「やだ! 本当は来てほしい」「さらってアタシを」「でも、好きだ」「ベロベロなあげをもっと心配して!」「愛して」「愛し過ぎて殺すくらい」


僕らは少しでも近くに感じるために電話で話をした。


「はぁ、ワガママ言ってごめんね。迎えに来てほしい時は共輔が無理でも一応素直に言ってみることにする。本日学んだ事」

「駐車場借りたら行ける」

「眠剤飲んで、寝る」

「おやすみ」

「大人の余裕だ。おやすみ」


この後、僕たちは365日24時間、一緒に過ごすこととなる。

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