愛情たっぷりな母の性格は根暗で超ネガティブだっていう話

概要

少し弱気で、人と関わるのが苦手な母。そんな母は、実は高校生の頃電車の中のある経験をきっかけにこのような面が出てしまったと言います。しかし、実はそのネガティブな経験と思い出から生まれたのが、私たち子供に注いでくれた愛情だったんです。

私の母はとてもネガティブ

ありがたくも沢山の方に読んで頂いた生まれてきただけで親孝行していた話
そこに登場する母は実は驚くほどネガティブなんです。例を挙げると…
・毎晩愚痴をこぼします。
・自分に自信がありません。
・人前に出る事はおろか、ちょっとした集まりやお茶に行くのも力を使ってへとへとになってしまいます。
・悲観的で心配性です。

そんな訳で、思春期〜就職前ぐらいまではよく衝突をしました。恥ずかしながら私は「前に進もうとしない愚痴」を言う人の気持ちがわからず、母に「前向きにならなろうとしないからそんななんだ!」等とよく言っていました。(今では本当に申し訳ないと思っているのですが…。)
そんな母がある日ふと語ってくれた話を聞いて、私は母がずっと抱えていた悲しさと、母の強さを知ったのでした。

母の思い出話

内気な読書少女が、電車で男子学生と出会う

母は昔から内向的で、本を読むのが好きな人だったそうです。木の上に登って本を開き、物語を読んでは本の世界に没入し、「ああなんて悲しいの!」「私もこうなってしまうのかしら!」とやっていたそうです(笑)

そんな母も高校に進学すると、電車通学となりました。
その電車の中で、一人の男子学生と出会ったそうです。
同い年で、爽やかでしゅっとした格好いい青年だったとか。何かのきっかけで話すようになり、母は小さな恋心も抱いていたそうです。素敵な昭和の青春絵物語ですね。

物語以上の残酷な事件

「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、時として現実というのは彼女の読んでいた小説よりも衝撃的な運命を引き寄せるものです。ある日突然、それは起こりました。
つり革を握って、隣り合わせで立っていた彼が。
母の目の前で。
突然倒れたそうです。
嘘のような本当の話。こういう事態ほど、作り物じみて現実感のないものですが、何と青年はそのまま帰らぬ人となってしまったそうです。心臓の病気か何かだったそうです。

失う事の恐怖と闘う

「私、何もできなかったのよ。大事にしてる人とか、仲良くしてる人が、自分が何も出来ないうちに死んでしまうなんて、と思うと、人と関わるのが怖くなってね…。」
私はこの言葉を聞いたとき、何も言えませんでした。
どれだけ辛かったでしょう。どれだけ怖かったでしょう。どんな言葉で書いても安っぽくて、表しきれない気持ち。母がこんな思いを一人で抱えていたなんて知りませんでした。
「だからね」
母は続けました。

「こんな私に、子供が育てられるのかしらって本当に不安だったの。それでも、頑張って育てなきゃって思って、頑張ってきたからちょっと強くなれたと思うのよね。そして、ひろちゃんたちには同じような思いをさせたくないし、また同じような思いをしたくないから、自分ができることは全部しようと思ってやってきたのよ。

母は本当に強い人だ

母は、愚痴の多い人です。でも、それはきっと母が抱える大きな不安や怖れと、母の愛情がぶつかりあう中でこぼれたものだったのでしょう。

この話を聞いてから、私は母の愚痴を静かに聞けるようになれました。この愚痴は、確かに生産的ではないかもしれないけれど、母親としての愛情とひとりの人間としての母が持っている弱さが、私たち子供のために闘って生まれたものだから、と。

私の母は自慢の母です。愛情たっぷりな、自慢の母です。ずっと専業主婦で、社会的にとりたてて素晴らしい功績を残した人ではありません。でも、私はこれからもずっと母のことを尊敬し続けるだろうと思います。

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