もう40年も昔の、学生運動の話 第四回

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知らんうちに、ステージみたいなのもできてるぞ

控室の中にも、だんだん知らないやつが入ってくる。メットかぶってるやつは、控室の大きなテーブルの上にメットを脱いで、ウチの4回生と親しげに話している。
な~んか居づらくなって、広場の方に出てみると・・・
おい! いつのまにか大きな白い壁ができていて、赤と黒で「学生控室闘争勝利!」とかカクカクした文字で書いてあるぞぃ。
その前には長机が並び、パイプイスもセットされている。
うむむ。ステージみたい。
と、それはまさに、今回の騒動=「闘争」のメインステージだった。
そのうち、赤いのとか黒いのとか白いのとか、デカイスピーカーが長机の前に並んでいく。竹竿にやたら赤い旗が立てられていく。
お~! テレビで見たことあるぞ。これって、学園紛争? 学生運動?
と。相変わらず思想ではなく、ただ騒動としての時間を楽しむだけの1回生ではあるが、いわゆる闘争の舞台装置が仕上がっていくにつれ、高揚感に包まれていった。
今でいうところの「めっちゃ、テンションあがる~!」である。

マズイ! 当事者であるウチの学科に、旗もスピーカーもないのか?

そう。このままでは、誰が当事者なのかわからん。これは、マズイのではないか? と、変なとこに気付くのが、なぜか1回生なのだ。
おぉ。そうやのう。なんとかしよか。
実は僕たち1回生の中には、現地調達力に優れたヤツが何人かいた。そいつらは、学内のどこに何があるかを不思議な力で把握していたので、こういう時には断然頼りになるのだ。
ほい。これでええか?
きた~! 単一電池が10本も必要なデカイスピーカー。横には「法学部自治会」と書いてあるような気もするが、こんなもん消してしまえば「気のせい」である。
と、これもどこからか出て来るスプレー塗料。おあつらえ向きに「黒」なので、上から吹いてしまえばマジックで書いてある法学部自治会なんて完全に「気のせい」と化す。
ここからは、浪人してたとき京都のディスコのポスターとか作って小遣いを稼いでいた僕の出番。
スピーカーのフチのゴムをはずし、マイクとコードをはずし、ペンキがついてはダメな所をマスキングし・・・。アッというまに、黒いスピーカーのできあがり。
学科の名前は、まず白い紙に文字を書き、それを几帳面な女の子が切り抜き。切り抜いたやつをスピーカーに貼って、上から白いスプレーをシュ-。紙をはがせば、ほれ。出来上がりぢゃい!
とかしている横で、同じ1回生の女の子たちが真っ赤な布で裁縫作業。あっというまに下に白い部分のある大きな旗ができあがる。
その白い所に、レタリングできる子が学科の名前を入れて行く。ほれ。旗もできちゃった。
こうして、全国的に有名なセクトの旗よりデカイ旗と、セクトのスピーカーと同等の出力を持つスピーカーを携えて、僕たちは闘争の渦に飛び込んで行った。

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