東京に行って失ったものと得たもの・その2

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 本テーマのその1において、東京への引越しでの日程調整のトラブルについて書いた。結局、ホテルに余分にもう一泊しなくてはいけなくなったが、その翌日には部屋のクリーニングも終了し、私はようやく部屋に入ることができた。ちなみに、このクリーニングは突貫工事だったようで、その1年後には室内壁の塗材が剥がれてきた。生活に支障は無かったので、結果的にその剥がれは放おっておいたが。
 さて、引越しの数日後、私は赴任先の会社に初めて出勤した。前任地に在籍していたときもその会社には行ったことがあったが、会社の一員として働くとなると、緊張感は全く異なる。
 私がその会社で与えられた職責は、工場の生産管理部門の係長であった。係長というとさほど大したことがないように見えるが、その工場は規模が小さく、係長といえども、事実上、生産管理部門の最高責任者であった。すなわち、私は右も左もわからぬうちに、いきなり重責を背負ったこととなった。
 ここで、私の前任の長はどうなるのかというと、この方は私と同様、親会社から出向で赴任しており、私が赴任した後、2週間後に親会社に戻ることとなっていた。つまり、2週間で仕事の引き継ぎを済まさなければならないということである。
 しかし、前任者は、2週間のうちの後半は引越しやら何やらでほとんど出勤できないので、実質、1週間で引き継ぎをしなければならなくなった。
 この会社の工場では、私の前任地の会社と同じ物を生産しており、私は生産物に対する知識はあったものの、私は前任地では技術部門しか経験しておらず、「生産管理」という職種については全くの素人であった。
 引き継ぎ期間が1週間しか無いという僅かな時間ではあったが、私は前任者について、一つ一つ仕事を教わった。しかし、この程度の引き継ぎでなんとかなるというものではない。
 私が前任者から仕事を教わって感じたことは、ともかくやることが多すぎて、常に時間不足がついて回るということであった。その工場の体質であったのであろう。生産に伴う雑務的なことは、ほとんどすべて生産管理部門が請け負っていたのである。
 例えば、その工場での生産物は、部分的に外注に加工を依頼するところがあった。外注の人ががこちらに物を取りに来てくれると楽だし、実際、外注からの定期引き取り便もあった。このような場合は、その便に任せればよい。
 ところが、急いで作らなければならない物は、定期便に乗せていては間に合わないので、こちらから外注に持っていき、その場で加工してもらうこととなる。で、誰が外注に持っていくかというと、生産管理部門のメンバーである。外注先は、車で30分かからないところにあったが、ここへの運搬が1日に3回ぐらいあり、こうなると移動時間もばかにならない。外注への運搬時間は必要であったが、その間、社内での仕事が滞ることとなる。こういったことも生産管理部門で請け負わざるを得なかった。
 そして、その工場において状況として最も悪かったのは、私が赴任したとき、生産管理部門は、本来の生産計画業務には力が入れられず、納期遅延の対処ばかりしていたことである。
 そのころ、その工場は納期遅延が慢性化しており、親会社の営業からの問い合わせや催促の連絡があまりに多く、生産管理部門員らは、納期遅延の対応に追われてばかりいた。生産管理とは、文字通り、生産を管理する仕事である。管理とは、いわゆるPDCAを回すことである。具体的には、生産計画(Plan)をたて、計画を実行(Do)し、計画通り進んでいるかを確認(Check)し、問題があれば対処(Action)するというもので、このサイクルを回すことにより、物事が円滑に進んでいく。
 しかし、その工場の生産管理体制は、そういうのとはまったくかけ離れたものであった。工場としての生産を管理する体制がほとんどできておらず、どちらかというと成り行き任せで、計画的に物事を進めていくのではなく、何か発生した事象に対しての対処ばかりしていた。それゆえ、打つ手が常に後手後手に回っていたのである。卑近な言い方をすれば、その工場の生産管理部門とは、納期追いかけ屋であったと言ってよいであろう。
 私は、生産物の納期遅延が頻発し、親会社の営業から叱られ、しわ寄せが生産管理部門に来ているのを見て、責任者として怒りがこみ上げてきたのと同時に、こういう事態になっているのは生産部門が怠けているからではないか、と思った。生産部門がきちんと作ってくれれば納期遅延は発生しないはずである。生産部門がきちんと作らないから、納期遅延が発生し、こちら側がそのとばっちりを食らっている、そういう怨念みたいなものが生じてきた。しかし、その時はそう思っていたが、今思うと納期遅延が頻発していたのには合理的な理由があった。
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