夢を追いかける人々

アメリカに住んでいるのだから、自分の英語は大丈夫と思っていたが、仕事を始めたら、英語で書く能力のないことに気が付き、慌てて大学の夜の英語の読み書きのクラスをとった。そこには、仕事を終えた後英語力をつけようと毎晩勉強しに来る私を同じ様な外国人がたくさんいた。みんな、自分の英語能力を少しでもあげて、良い仕事に就きたいというエネルギーにあふれている。

そんな中でも、メキシコ人は特に真面目に勉強している。家族を養うために今は建築現場で働いているが、ライセンスを取ってもっと良い仕事に就きたいという若い男性、今はウェイトレスをしながらいずれはナースになりたいと頑張っているシングルマザーの女性。ビルの掃除の仕事をしながら、いずれ大学に行きたいという若い女の子。どの人も真剣なのである。彼らにとっては、まず英語をモノにすることが生きていくための、必須科目なのである。

私も自分のビジネスを立ち上げるために、ゼロから英語の読み書きを勉強したいと思い、仕事を終えて、家族の夕食を準備した後、大学にほとんど毎日のように通っていた。思いは彼らと一緒だと思っていた。

ある日、ちょうど授業が始まる時間に大雨が降りだした。南部特有の大雨で、大学に向かって運転している途中に前が全然見えなくなった。車があまりの大雨で浮きそうになってきたので、近くのパーキングに止めて、雨がやむことを待ってみることにした。車の中で待っていたが、大雨はやむどころかだんだんひどくなってきた。私は不安になってきて、夫に電話をした。夫はコンピューターでレーダーを見てくれて、しばらくすれば、雨雲も行き過ぎるだろうといった。でも、次の雨雲が下校の時に来る可能性もしめした。雨はだんだん小降りになってきたが、私は帰り道の真っ暗な中で、あの大雨に会うことを考えるとちょっと憂鬱になった。

”こんなに雨のひどい日に行かなくてもいいかも。” 戸思い始めた。どうしようとおもいはじめときに雨が止んだ。やっぱり行かなければとアクセルをふんだ。

教室についたら、先生もほとんどの生徒も何食わぬ顔で授業を始めていた。この人たちは私のように迷わずに大雨でもなんでも授業に来るのだ。彼らには選択しがないのだ。それに比べて私は、と思ったとき、二人の若いメキシコ人の女の子がずぶぬれで、クラスに入ってきた。彼女たちには車さえないのだ。バスで大学に来ているのだ。どしゃ降りであろうと何であろうと。

彼らにはやるしかないのである。これをやらなければ、彼らの夢はない。ただやるだけなのである。迷う余裕などありえないのである。

私はそんな彼らとジョークを言い合いながら勉強できる毎日を誇りに思っている。

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