KAIZEN Platformの始まり

エリック・リースの「リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす」という本が米国で出版されたのは2011年9月でした。


この本は、インターネット業界にいる人であれば少なからず聞いたことがあると思います。
ただ、エリックがインスパイアされたリーン生産方式の原典となる本を読まれた方はあまり多くないのではないでしょうか?

大野耐一さんという方の「トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして」という本です。

僕は、この本を読んで大きな感銘を受けました。
戦後の日本経済を成長させるために、
来るべき低成長時代のために、
トヨタが磨きに磨き込んで作り上げたメソッドです。

この本は、初版が1978年に刷られています。
35年前の内容が決して色あせることなく、今読んでも衝撃的に面白いのです。
僕は、リクルートでゼネラルマネジャーになった2009年にこの本を読みました。

とにかく、新規事業の中間管理職は大変でして、
ヒントをもらおうと沢山読んだ本の中の1冊でしたが、
あまりにも面白かったので鮮明に覚えています。
サブタイトルにもあるように、このトヨタ生産方式が目指したのは、
規模の経営を超える少量多品種を扱える生産方式をつくりあげる
というところにあります。
僕もエリックと同様に、この本の書いている脱規模の経営ということに
大きなインスピレーションを受けました。
インターネットそのものは、既存の規模の経営を打ち壊すものとして注目されていますし、そもそものインターネットという技術の生い立ちは、分散型のコンピュータネットワークです。
共通点が多くあるなと感じました。

そこからスタートアップのマネジメントメソッドまで組み立てあげられているリーンスタートアップに、若干の悔しさを感じながらも興味をかきたてられたことも事実でした。

ただ、僕自身がトヨタ生産方式を読んで、
感銘を受けたのはメソッドだけではなく、その根底に流れる思想でした。
ムリ、ムダ、ムラを徹底的に排しながら、
現場の知恵を常に活かし、
徹底的磨き込んでいくプロセスに
チームワークや働きがいという個人のインセンティブを
組み込んでいるところに大きな感動を覚えました。

「経済性」を追求していくことと
そこで働く人の「人間性」の両立をとことんまで目指している
それは相反するものではないという強いメッセージを感じました。

トヨタの生産ラインは、いつでも現場がラインを止めることができる。
問題があれば、その問題を解決するためにライン全体を止めて、
改善を加えることができる。
毎日のように、生産ラインを停止しながら、
不良品製造の真因を探り、
ムリ、ムダ、ムラを排し、
よりより生産を追求していく。

生産ラインそのものが、
ひとつの生き物においての自律神経のように、免疫のように作用し、
全体としての大きなダイナミズムを生み出す。
このコラボレーティブな改善活動こそ、
スタートアップに必要な要素ではないかと僕は感じました。

振り返ってみるとインターネット産業はまだ20年程度の産業。
主要なインターネット企業の時価総額を追って見ると、大きく伸びています。
これは、まだこのセクターが大きな成長期待をかけられている証拠だとも言えるとおもいます。
米ネット企業21社の時価総額

一方、この産業を支える担い手は足りているでしょうか?
全体と比較してもまだまだ足りていないというのが実態でしょう。

グローバルの求人倍率のデータは手元にありませんでしたが、
シリコンバレーをはじめとするエンジニアの人材獲得難をみるに、
近い状況であることは推察できます。
近年、Growth Hackerという言葉が注目されています。
WEBサービスを大きく成長させる請負人という意味のワードですが、
サービスの作り手も足りなければ、
サービスの磨き手に関してはもっと足りないということだと思います。
だからこそ注目されているのでしょう。

僕は、スタートアップやインターネットカンパニーが直面する
リソース不足という問題に対して、クラウドソーシングという方法で
課題解決に向かいたいと思いました。

振り返ってみれば、WEBサービスにおいて、
ユーザーにとってよりよいものにしていくことにゴールなどないのだと思います。
なぜ内部の人だけで、そのゴールに向かわなければいけないのでしょうか?
常に継続的改善していく努力がWEBサービスには求められています。
誰もがこのことは気づいていますし、知っています。
ただ、この改善のコストがあまりにも高いために
見て見ない振りをしてしまっていることがあまりにも沢山あると思います。
キャンペーンのページつくりっぱなしで見直してない。
会員登録の誘導導線に問題があると思うが今は放置している。
やった方がいいのは、わかっているけど手が付けられない。
それが、我々の直面する現実ではないでしょうか?
僕も、リクルートでいくつかのWEBサービスを担当しているときに
多くの棚上げ案件がありました。

もちろんWEBサービスの改善活動自体は、かなり幅が広く、
やらなければいけないことが沢山あります。
影響度の大きいところから手を付けても、
  • 課題を発見し、
  • 仮説をたてて、
  • デザイナーに問題のある箇所の修正指示をだし、
  • デザインディレクションを行い、
  • Htmlのチェックを行い、
  • エンジニアに組み込んでもらって、
  • A/Bテストのツールを設定して、
  • 改善のためのテストを開始する
大きな手間とコストがかかってしまいます。

もちろんコストはお金だけではなく、
既存の改善と新機能の追加であれば新機能を優先してしまう、
ずっと同じ導線の改善をしていては退屈である、
という心理的なコストというのも当然見えないコストとして大きくのしかかってきます。

このWEBサービスの改善活動そのものを、
内部のリソースだけではなく外部の知恵を借りながら、
よりクリエイティブで、
よりコラボレーティブなものに
変えていけるサービスをつくり、
改善活動そのもののコストを下げることが出来れば、
きっとインターネットビジネスそのものの
成長を加速させることができる。
産業に必ず貢献できるはずだと思いました。

そういう想いから、KAIZEN platformを立ち上げました。

今は、まだ思い込みかもしれません。
今後、ビジネスを通じてこのことを実証していきたいと思います。

僕は、この改善という行為の根底に流れる思想のようなものは、
普遍的なものだと考えています。
僕らはプラットフォームを通じて、
日本が誇るべきKAIZENを
世界中のWEBサービスへ拡げていけたらと切に願っています。

最後に、大野さんが研究に研究を重ねたヘンリー・フォードが
産業の未来について言及しているので、ご紹介します。

『産業の終着点は、人々が頭脳を必要としない、標準化され、自動化された世界ではない。その終着点は、人によって頭脳を動かす機械が豊富に存在する世界である。
なぜならそこでは、人間は、もはや朝早くから夜遅くまで、生計を得るために仕事にかかりきりになるというようなことはなくなるだろう。
産業の真の目的は、一つの型に人間をはめ込むことではない。
また働く人々を見かけ上の最高の地位にまで昇進させることでもない。
産業は、働く人々をも含めて公衆に、サービスを行うために存在する。
産業の真の目的は、この世の中をよくできた、しかも安価な生産物で満たして、人間の精神と肉体を、生存のための苦役から解放することにある。』

この文章をKAIZEN platform流にアレンジして締めくくりたい。

『我々の終着点は、スタートアップが頭脳を必要としない、標準化され、自動化された世界ではない。
その終着点は、スタートアップによって頭脳を動かすWEBサービスが豊富に存在する世界である。
なぜならそこでは、スタートアップは、もはや朝早くから夜遅くまで、改善のために仕事にかかりきりになるというようなことはなくなるだろう。
我々の真の目的は、一つの型にスタートアップをはめ込むことではない。
またスタートアップを見かけ上の最高の地位にまで昇進させることでもない。
我々は、働くスタートアップをも含めて公衆に、サービスを行うために存在する。
我々の真の目的は、この世の中をよくできた、しかも安価なWEBサービスで満たして、スタートアップのリソースと精神を、改善のための苦役から解放することにある。』
※スタートアップと書いていますが、インターネットカンパニー全般を指しているとご理解ください

皆様、何卒応援の程、よろしくお願いいたします。

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