【6】痛みと温度が同居した日 ~処女の強さ~

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探検ごっこしたり
秘密基地つくったり 

大好きなぬいぐるみを抱きしめて寝た日


誰の中にも 懐かしい匂いと ぬくもりと 景色がある。

その ときめくような輝きの追憶。
童心まるだしの それらは永遠の処女性を秘めている。

わたしにとって 新しい映画の世界は それと変わらなかった。

怖いコト なかったし 何よりも希望にあふれていました。

主演が決まり、そして夏の間中はずっと お稽古がありました。
はじめて 手にした映画の台本。

そこに描かれた15歳の少女は 強く生きていました。
父を失い。養父からは性的虐待を受ける。
実の母はそんな状況の中で助けることもなく むしろ女として娘に嫉妬する。
また 彼氏の子供を妊娠し中絶。

原作には無かったけれど、映画の中の主人公・静子は
そんな現実を受けとりきれなかったのか
画を描き始めます。そこに描かれた世界は徐々に現実と交差し
静子は夢の中で生きることを望むようになります。
そこには 若き父の姿があり、愛がいつもすぐそばにありました。


わたしが現実を直視できなかった過去。
やはり 同じようにファンタジーの世界へ逃げ込みました。

主人公・静子の ストーリーはわたしの過去のストーリーとシンクロしていきました。

闇と孤独が合わさる つめたい壁と まるみのない四角い部屋。

でも 誰かが やさしいノックをしてくれるのを待つ日々。

ただ わたしはこの映画を通して その世界との決別を誓ったのです。

わたしにとっては 長編探検ごっこの世界の幕開けにしたかった。


1995年夏が終わり、9月からは長崎の佐世保に移動しました。

撮影現場で わたしはこう言われました。
それは名プロデューサーでもあり、また養父役の秋山道男さん。

「中村は強い。それは処女の強さ」だ、と。


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