本当にあった話「無縁仏」

夏ですね。夏といえば怖い話・・・というわけでもないのですが、実は私は結構怖い話を持っています。今まで気味悪がられたり、変人扱いされたり、○ちがい扱いされたりするのが嫌なので、あまり話したりしていなかったのですが、友人が亡くなったり倒れたりする事が年齢的に増えてきましたので、ここでひとつテキストとして残しておこうと思ったわけです。
 
「無縁仏」

私の実家はお寺なので庭にもちろん墓地があります。小学生の頃はこの墓地で缶けりや馬とび、キャッチボール、花火、鬼ごっこなど実に様々な遊びをしました。当時の大人たちは「お墓で遊ぶな」などと野暮な事は言わなかったので、毎日毎日学校帰りの友達がたむろしていたものです。
  
小学校3年か4年くらいのとき、いつものように仲良しグループで缶けりをやって遊んでいました。参加者はM、O、I、G、Tと私だったと思います。Iが鬼をやっていて我々が隠れていたのです。位置的には、私とTが鬼のいる位置から西側のお墓の影でした。缶をけるタイミングを盗むため、お墓の影から虎視眈々と機会をうかがっていました。Iは規定の数を数え終わるとすぐ、我々の隠れている方向を向いてキョロキョロと探しています。息を潜めて偲んでいると、あきらめたのか東側に視線を移しました。
 
その瞬間、鬼の東側8mほどの位置にある「無縁塔(無縁仏)」の上に、黄色い野球帽を被り、紺地に赤い袖のついたスタジャンを着て、青いジャージを履いた子供が3段目のあたりから下に飛び降りたのが見えました。「Mちゃん、見っけ!」と鬼のIは叫ぶと空き缶をガシッと自信を持って踏みました。「あんなところからあのタイミングで出て行ったら見つかるにきまってるよ、なにやってんだっぺMちゃん」とTとほくそ笑みました。だってMのその帽子とスタジャンは、もはや仲間うちではトレードマークで、その日も着ていたんです。すると「えー!なんで?全然こっち見てなかったし、俺ら見えない位置にいるのに!?」と大声を上げてMが、山門の影からOと一緒に出てきました。Oも「いまMちゃんは完全に山門の壁の裏側にいて見えなかったはずだよ」と言います。
 
それを見て、鬼のIとTと私は凍りつきました。だってMがわめきながら出てきた場所は、我々が人影を見た無縁仏からさらに東に20m程遠くの場所で、誰にも気づかれずその1秒ほどの間にあちらまで走る事は到底不可能だったからです。別な位置に隠れていたGは全く気がつかなかったそうですが。「タイム」というとIは「だって今そこにMちゃんいたっぺよ。俺しっかり見たよ。」と言いました。タイムがかかったので私も出て行き「俺も見た。けど、一瞬だった。」と言いました。
 
そのとき、本物のMが近づいてきて気がついたのですが、無縁仏くらいの距離だと当時視力2.0の私には、顔も名札もはっきり見えるではないですか!実はさっきみた人影は色の組み合わせで一瞬パッとMに見えたのです。その組み合わせが黄色、赤、紺、青だったのでMだと思い込んでしまったのですが、考えてみると顔も手足もはっきり見えたわけでなかったんです。Iだけでなく私とTも見ていたことで、みんな顔色が変わりました。その場所には痕跡もないし、他に子供もいなかったんです。結局その日は気味が悪いということで、缶けりは中止になり解散となりました。
 
その後「あれはなんだったんだろう?」と思ってその話をぶり返そうとするとTは「思い出せない」とかたくなに口を閉ざしました。Iとは中学校卒業後付き合いが無いうえ現在は他県に住んでいるらしく会う機会がありません。ずっと親友だったTは昨年病で倒れ、かえらぬ人になってしまったので、今となってはこの話を裏付けることはできないかも知れません。

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