あけてくれ

とあるオフィスビルで、システム開発の仕事をしていた時の話です。
私はいつものように、フロア外の自販機へと向かいました。
まだ午前中だったからか、自販機のあるあたりはひっそりとしていて誰もいません。
その時に、私が何を買おうとしたかは、さだかではありません。
憶えているのは、そのドリンクが80円だった事です。
セキュリティの関係で社員、またはそれに類する人しか入れないような場所ではドリンクも安かったのでしょう。
生憎500円硬貨しかなかったので、私はそれをコイン投入口に滑りこませました。
いつものようにつり銭の落ちる音。
が。
何気なく自販機を見つめた私は、何故か嫌な予感がしました。
「100円硬貨つり銭切れ」のランプが嬉しそうに点灯している。
ん?でも、つり銭は落ちてるよな...
身をかがめ、つり銭硬貨返却口を覗いた私は愕然としました。
そこには滝のように流れ落ちる10円硬貨が...
わずか5センチ四方のつり銭返却口は、あっと言う間に42枚の10円玉で埋まってしまいました。
...と、取れねえ。
そう、返却口の透明な扉は内側に押すようになっているので、当然ながらびくともしません。
いつものように軽い気持ちでドリンクを買いに来た私は、しばしその場で立ちつくしてしまいました。

著者の小金井 正美さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。