【18】痛みと温度が同居した日 ~眠れない日々が永遠に思えた~

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みるくの香りがする。
はじめて娘をこの胸に引き寄せたトキ そう思った。

真っ白で 頬はほんのりピンクに色づき
ふわふわしてて やわらかくて 心地よい温度。

まるで 生きたホワイトアウト。




あまりに小さいから はじめは不慣れな手つきで
触れていいのかも分からないくらいに丁寧に、を心がけていました。

母乳で育てよう、そう思って
一日 一日 また一日が過ぎて行った。

助産院を数日して出て家に戻ってからは
娘と2人だけの時間が続きました。

昔からわたしの中には誰にも迷惑をかけてはいけない
そんな思い込みが深く根付いて

忙しく働く夫にも また実家の家族にも
手をかけさせてはいけない、って思っていて・・・。
本当は不安でも それを悟られるのがイヤでした。

少しずつ慣れてくると同時に 母乳は腹持ちが良くないと知り
真夜中だろうと いつ何時だろうと お腹を空かすと泣く娘。
また 同時におむつを替える回数も増しました。

すこし神経質になっていたわたしは
気づいたら一睡もしていない日々が循環するようになっていました。

娘が寝ている時に一緒に寝れればいいのだけれど
その微かな時間は 意識在る中で何かを残したかったのです。

そのかすかな欲望が わたしの生きる実感をもてた
唯一に感じていました。

一睡もせずに好きなコトをしている時とは違い
どこか 現実から逃れられないような圧迫感さえ感じ始めていて
そうすると、TVをつけたり映画を観るのだけど
その瞬間 胸に確かな痛みが走るのがわかりました。

知っている顔がそこに映るだけで

まるで自分は止まったままのようで
存在していないかのようで、置いて行かれている、そう思った。

家の囲いが 温もりではなく
わたしには 囚われている囲いである、そんな感覚さえ芽生えたのです。

迷惑をかけてはいけない、そんな思い込みが 
結果、さまざまな心配を呼びよせることになったと気づいたトキには 
わたしは 心身共に限界を迎えていました。

そんなトキに限って 誰かがわたしの家に遊びに来てくれました。

罪悪感や押しつぶされそうなキモチいっぱいで
泣きそうな自分を必死で押し殺しても 来てくれた人の前では
やっぱり笑ったのです。

みんなが帰ると やっぱり眠れぬ同じ日常だったけど
感謝にあふれて 思いっきり一人泣いていました。

でも 自分を許すことはできなかった。
どうしたら このループから抜け出せるのか

探し始めていました。



思い出したかった・・・・・。心から思い出したかったのです。
このままだと、自分の中の何かが死んでしまう。。。

傘など忘れるくらいに 歓びにあふれる 遊び場
自己を表現できる場。舞台やカメラの前に立たなくとも
わたしにはソレができる場所が必要だったのです。





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