進路を考え始めた若い方へ ~行き当たりばったりで独立した男の回顧録~

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10代、20代、30代、40代、そして今、私は50代前半を生きています。
簡潔に纏めるのはなかなか難しいのですが、まずは、私の過去を纏めてみます。

10代前半(小学~中学)

自らの意志というよりは、父の影響を受け、自宅で化学実験をしたり、顕微鏡を覗いたり、アマチュア無線をしたり・・という、典型的な理系人間として育っていた。
この頃は、子供(自分)の目に映る、「不思議な自然科学」への興味が非常に強かった。
数学と理科だけは、他人に負けたくないなぁ、と思っていた。

10代半ば(中学~高校)

アンプ自作などしつつ、理科系大学への受験勉強に多くの時間を割いていた。
並行して、インカ帝国という謎多き文明と、アンデス音楽にも傾倒し、小難しいアンデス考古学の本を読み漁ったり、アンデス音楽を演奏したりして、ストレス解消していた。

10代後半(高校~大学)

考古学への道も考えたりはしたが、「将来、食えるんだろうか?」なんて不安もあったし、身についてしました理系魂を捨てる勇気もなく、そのまま理系への道を歩んでいた。
田舎から飛び出して、下宿して私立大へ、というのは、金銭的に親に苦労をかけると思っていたので、とにかく国立の物理系を目指していた。
結果、国立の応用物理学科へ進学したが、入学して2年間は専門分野の講義が少なく、アンデス音楽と車にうつつをぬかしていた。
最終専攻は物性物理という分野で、透過型電子顕微鏡で50Å前後の薄膜の物性を研究。
その流れのまま、光半導体技術に携わる仕事へと就職した。
就職先の会社を決めたのは、予想される配属先の場所が、①実家にそこそこ近い、②車を飛ばせる箱根にも近い、③アンデス音楽の師匠の家にも近い、この3点セットにより、全く悩まずに決めたが、安易かつ不謹慎な決め方であった。

20代前半

社会人になってすぐだったが、予期せぬ母の急死により、目の前で「人生50年」を突き付けられる格好になった。
ダラダラと過ごしている自分に対して、日々、どのように生き生きと過ごすべきかについて悩み始め、このまま技術者の道で良いのかどうかも含め、真剣に考え始めた。

20代後半

身近な周囲に存在する、とても優秀な技術者達と、土地神話がスタートした昭和60年代において、気の遠くなるようなお金を稼いでいた不動産業界の親戚とのギャップに落胆し、「自分達は搾取されているのではないか?」という邪心が生まれる。
結果、自分で自分の報酬を決められないサラリーマンという位置づけに、終止符を打とうと決意する。
儲かる、儲からないはさておき、こんな理系一本槍で育ってきた自分でも受かりそうな国家試験であり、そう遠くない将来、一人で開業できそうな仕事として不動産鑑定士を目指し、一旦、サラリーマンの世界に別れを告げた。
この機会を逃したら二度と行けないと思い、40日間のアンデス旅行へ行き、帰国してからは、ほぼ毎日10時間以上の勉強をして、1年後に不動産鑑定士二次試験に受かる。
合格する直前に手持ち資金が底を尽き、某鑑定会社に勤めたが、どうしても結婚したい女性と出会い、求婚するに恥ずかしくない年収を求めて、鑑定士への道ではなく、総合不動産会社へと転職。またサラリーマンを続ける事になるが、家庭を持てるならそれでも良いと思い、そして、ほどなく結婚した。

30代

結婚後、早々に長男が生まれ、続いて次男、長女が生まれた。
技術者から、全く180°方向転換した不動産の仲介業務に携わったが、何故か仲介営業が肌に合っていたようで、営業成績も悪くなく、仕事は意外と楽しかった。
将来的な年収の見込みもできたと思い、土地を購入して家を建てた。
鑑定士として独立を目指していた方向から、またサラリーマンに戻ったが、全体的には充実していた。

40代

少しばかり仕事ができて、自分の意見で上層部を動かせるようになったと思い込んだため、会社全体の改革を目指すようになった。
最終的には、会社を上場させる答申であったり、自分が長く所属していた部署を分社して独立させる答申などを提出し、ほぼその内容通りの結果へと導いたが、ふと気が付くと、自分の仕事に対する熱い思いと、周囲との温度差に気が付いてしまう。
ここでまた、約15年振りに、「あ、俺ってサラリーマンだったよな」と改めて気付く。
どんなに頑張っても、自分の給料は自分では決められない。
約15年振りに、同じ問題に突き当たり、そして、再びサラリーマンを辞めた。
ほどなく、自分で会社を設立し、そして現在に至る。
さて、少しばかり冗長になってしまいましたが、私の半生の回顧は終わりです。
まずは、ここまでお読み戴いた方、有難うございます。
ここからは、私の過去の反省ですが、それがそのまま、ひょっとしたらこれをお読みになる若い方々に対して、反面教師の様にご参考になれば・・という思いで書きます。

反省ポイント①

幼少の頃の環境で身についた嗜好(好き嫌い)と思考(判断基準)は疑ってみる
まだ思考(判断基準)が自立していない幼少時代は、どうしたって環境が人間を育てます。
野球のイチロー選手にしたって、卓球の愛ちゃんにしたって、体操の内村選手・白井選手にしたって、親の影響を大きく受けています。
そこまで大きな影響ではないにしても、医者の子供、銀行員の子供、商社マンの子供、自営業者の子供、芸能人の子供、先生の子供、社長の子供、農家の子供、漁師の子供・・、何となくこんな風に育つんだろうなぁ、なんて想像できます。
将来の仕事へ直接繋がるような、仕事そのものに影響を受けることもありますが、性格の育成にもかなり影響を受けると思います。
前に出るタイプでリーダー的に育つこともありますし、なるべく目立たないよう、周囲に溶け込むように振る舞う性格になることもありますし、破天荒であることが特におかしくないと思うような子供に育つ事もあります。
そんな環境の中、進路を考えた場合は、大きく分けて、文系 と 理系
既に小さい頃から、我々は、何となく周囲の環境で、嗜好思考を方向づけられます。
「俺は電気や物理や、とにかく自然科学系が好きなんだ!」
なんの疑いもなく、私はそう信じていました。
事実、本当に好きでしたし、露ほどの疑問もありませんでした。
でも、それは、今思い返せば、本当にそう思えたのは中学生まででした。
人によって、その時期は少しずつ違うのでしょうが・・
それを思春期と言うのなら、思春期なのでしょうが・・
魂を揺さぶられるような何か に出会う時があります。
その対象は、身近な人間であったり、TVに出てくるような人であったり、本であったり、音楽であったり、何か大きな出来事であったりします。
私の場合は、アンデス音楽で最も有名な楽器、「ケーナ」という笛でした。
「コンドルは飛んでゆく」という曲に使われている、哀愁を帯びた音色の笛です。
この笛の音色は、正しく、私の魂を揺さぶっちゃってくれました。
どうして・・、何がどうなって・・、という理論ではありません
その音色の背景には、
「人間の、自然に逆らわない、本来の生き方」
そんなものが、ぼんやりと見えていました。
それ故、そのケーナという笛が伝承されてきた、「インカ帝国」という、アンデスを舞台にした歴史に、「本当の生き方」があるんじゃないか? そう考え始めていました。

後に、「グレートジャーニー」で有名になった関野吉晴さんですが、
私が高校生の時、関野さんが執筆した、「文明なき幸福」という本を読みました。
アマゾン奥地の現地人と一緒に生活して感じた、関野さんの思いが綴られていました。
この、「文明なき幸福」という響きと、「物理化学による文明の発展」とが、
高校時代の私の心の中では、共存していたことになります。
どちらが好きか嫌いか・・、一刀両断は難しいのですが、
当時の私にとっては
「物理」は、将来、食って行くための必需品。
「文明亡き幸福」は、心の中に大切にしまっておくもの。
そんな判断をしていたように思います。
少し横道にそれた気もしますが、
当時の私には、「覚悟」が足りなかったと思っています。
それは、「食えるのか、食えないのか」ということを考えた時に、
真剣に、「食えなくてもコレをやろう!」
という「覚悟」がなかったと思っています。
私は「物理」を選んだことを後悔している訳ではありません。
その時、真剣に、本当に真剣に、考えなかったことを後悔しています。
恐らく、真剣に考えた結果であっても、「物理」を選んだと思っています。
ここまで育ててくれた親への申し訳なさもあったでしょうし、身についた理系的思考回路を捨てる勇気もなかったと思うからです。
では何故、後悔するのか?
「後悔」という気持ちは、「その時の選択の間違い」で起こるものではなく、
「何故、もっとしっかり、トコトン、真剣に考えて選択しなかったのか!」
ということから生まれる感情だと思うからです。
幼少の頃に環境によって育まれたもの・・・、嗜好と思考ですが、
それを、90°、180°、方向を切り替えることをチラッとでも思った場合は、
真剣に、トコトン考えた上で、判断すると良いと思います。
多分、多くの場合、幼少から育まれた方向へと結論づけられると思いますが、
それが真剣に考えた結果、選択された道であったならば、
将来、過去を振り返ったときに、後悔を緩和してくれるはずです。

それから、もう一つ
例えば・・・
「どうしても医者になりたいんだけど、ウチにはお金がないしな・・」
という様な自問自答により、その道をさっさと諦める年頃でもあります。
私もそんな高校生でしたから、わかります。

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