セブシティのダウンタウンで会ったある兄弟の話

いつもの通り路上の屋台でフライドチキンとフライドポテトを食べた。この店、ちょっとうまいと評判の店。理由はケンタッキーフライドチキンからもらってきた油で(つまり廃油)でチキンを揚げているから。どうも、ケンタのチキンのダシがこの油にたっぷり含まれていると信じられているみたい。でもさ、この油見るからに体に悪そう。こげ茶色でしっかり酸化して発がん性物質たっぷりって感じがするんだが。。。
それはそうと、ここで立ち食いしていると、男の子の兄弟が僕のズボンを引っぱる。大きい子のほうは7,8歳くらいで、小さい子のほうは3,4歳くらいかな。お兄ちゃんは黄ばんだランニングシャツに大人用のたぶたぶのサッカーパンツで裸足。弟のほうは着古した緑色のTシャツに下はフルチン、もちろん裸足。
この兄弟の用件は、つまり、僕が食べ残している7、8本のフライドポテトをくれと言うことみたい。「いいよ」というと、お兄ちゃんは弟に大きめのポテトを食べさせて、自分は小さいのを2本だけ食べた。もういい加減慣れろよと自分でも思うのだけど、やっぱりやりきれないなあ。
弟ほうが、必死に口をもぐもぐ動かしている最中に、お兄ちゃんのほうは左手に持っていたビニール袋の口を開き、口にあてがった。そして、遠い昔、地元のコンビニ裏で目撃した懐かしいあのアクション。。。左手で袋の口をぴったり口にあてがい、右手で袋の底を上下させて一服。こ、これは、あああ、あの、”アンパン”、ちびっ子のヒーロー、アンパンマンじゃなくて、いわゆる「シンナー遊び」の”アンパン”。
絶句しつつも、お兄ちゃんに「おい、お前、何やってるんだよ。やめろよぉ」とたどたどしいビサヤ語でたしなめる。お兄ちゃんは「ギ、ゴトム、コ(お腹がすくんだもん)」と答える。弟に少しでも多く食べさせようと、”アンパン”で空腹を満たそうとする心優しき兄。おーい、アンパンマン、ここに困っている子どもたちがいるぞ!早く飛んで来い!
でも、よく考えるとおかしい。”アンパン”買う金あるなら食べ物を買いなさい、お兄ちゃんよ。そこで聞いてみる。「その”アンパン”、いくらなの?」。お兄ちゃんは10ペソ(約25円)だと教えてくれた。お兄ちゃんさぁ、その10ペソで2ペソのパン・デ・サル(塩パン)5つ買ったらどうなのさ。
しょうがないから、10ペソ分のフライドポテトを買ってお兄ちゃんにあげて、その代わりに”アンパン”を没収。彼は「ありがとう」と言うわけもでなく、無料のケチャップをたっぷりかけてもしゃもしゃポテトを食べると、屋台の脇で弟に立ちションさせて、それから手を引いてどっかに歩いて行っちゃった。屋台のアニキも「しょうがないね」といった表情で苦笑い。もちろん、”アンパン”は廃棄しました。こっそり校舎裏とかで吸ってませんので。
百歩譲ってタバコは仕方ないとしても、”アンパン”食わずにパン・デ・サルを食いなさい、少年よ。。。

著者のMatsui Takahiroさんに人生相談を申込む

著者のMatsui Takahiroさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。