丸の内の金融マンが、丸の内の試食販売員になった理由 1

おれを追う前に 言っておくッ! 
おれはあの時 人生のスタンドを ほんのちょっぴりだが 体験した
い…いや… 体験したというよりは まったく理解を 超えていたのだが……
あ…ありのまま あの時 起こった事を話すぜ!
「おれは オフィスへの階段を登っていたと思ったら いつのまにか地下の食品売場に降りていた」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが 
頭がどうにかなりそうだった… 異動だとか子会社出向だとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…
1回1000億円を超える取引をしていたおれが
1個数百円の商品を大量に捌くマシーンとして…

丸の内のとある会社で普通に社長・役員候補として
社会人生活をスタートさせた私。
紆余曲折を経て5年後ぐらいに丸の内に戻ってきたとき
私はスーパーの試食販売員だった。
しかもなぜか各店舗で記録更新等のトップクラスの実績を引っ提げて。

元同業界の金融系のサラリーマンの方とたわいもない会話をして
憐みで商品を買っていただいた後にぼくを襲った
言い知れぬ感情。
絶望とも後悔とも違う憂鬱の先の陰鬱な感情。

それは人生で2度目の経験。
一度目は霞ヶ関、財務省の眩しいばかりの赤絨毯の上
そこから地下の缶ビールの空き缶が転がる待合室へと
軋む感情を抑えつけながら潜って行ったときの感情と同じだった。

あの時のぼくは無言でその場を立ち去ることを選んだ。
でも今度は違った。

生きるという事、生きるために仕事をするという事
働く意味を知った今、逃げ出すことは許されない。

著者の大槻 一彦さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。